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アブストラクトゲームの世界

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アブストラクトゲーム(運要素のないボードゲーム)全般に関する自分の記事をまとめています。
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アブストラクトゲームはなぜそう呼ばれているのか

もしあなたが「アブストラクトゲーム」という言葉を聞いたことがなくても、「チェスや将棋、囲碁やオセロのようなゲームのことだよ」と聞けば、「ああ、そういう「そっけない」感じのゲームね」と、おおまかなイメージがつかめるかもしれません。この言葉はボードゲームの世界で流通している用語なのですが、以下のような二通りの意味があり、慣れない人をいささか当惑させる言葉になっています。 1.運の要素がない(ダイスを振ったりカードを引いたりしない)ゲーム 2.テーマ(SF、ファンタジー、戦争、歴

マス目 VS 交点 ゲームボードの2つのタイプ

ここのところKanare_Abstractからの新しい製品を出版できていなかったのですが、メリディアン以来半年ぶりくらいに「汎用ボード アルケルク」「汎用ボード カラーパック」をウェブサイトに追加しました。ちなみに間が開いたのはネタ切れのためとかではなく、5月中にクラウドファンディング開始を予定している次の製品の準備に時間がかかってしまったためです(これについての情報は少しお待ちください)。 「アルケルク」はアジア起源と考えられる中世(10世紀頃)のゲームで、同じボードを使

オセロは日本発祥のゲームじゃないです

昨年末、オセロ解決のニュースに絡めて以下のエントリを投稿しました。 内容的には軽いエッセイなのですが、この執筆のためにオンライン上のオセロに関する資料を検索したとき、「オセロは日本発祥のゲーム」とか「オセロは茨城県水戸市発祥のゲーム」といったことを書いている投稿やページに頻繁に行き当たることに気づき、だいぶモヤモヤした気分になりました。端的に間違いだからです。 オセロの成り立ちに関しては、誰もがとりあえず確認するであろうWikipediaで、多数の典拠とともに非常に詳細に

アブストラクトゲームの有限さ

先日、代表的なアブストラクトゲームのひとつオセロ (※1) の解決を証明したという論文が話題になりました。 論文は査読前で、アルファ・ベータ探索法を改良したプログラムを使用しています。膨大なゲームツリー探索の計算量を減らすために複数のアルゴリズムを組み合わせており、証明の妥当性にはついてはまだ疑問の声もあるようです (※2)。 もっとも、オセロは一定の手数のうちに終了することが保証されている有限ゲームであり、その性質上「最善手では先手勝ちか、後手勝ちか、引き分けか」が必ず

パー タム (Pah Tum) は捏造されたゲームだったようです

2022年からクラシックシリーズの1作として、クラウドファンディングののちクィーンズガード、モリスとともにウェブサイトで販売していたパー タム (Pah Tum) というゲームについて、再調査の結果、実際には各サイトで説明されているような古代アジアのゲームではなく、おそらく捏造された現代のゲームである可能性が高いことがわかりました。 ↑ ページは残していますが販売は停止しています。Kanare_Abstract版では私が考案したオリジナルヴァリアントも付属しており、現代のゲ

Gigamicの木製アブストラクトゲーム全リスト(現行+絶版 計22作)

上質なコンポーネントで知られるフランスのボードゲームメーカー、Gigamic(ギガミック)社の木製アブストラクトゲーム。現行のラインナップは6種類ですが、過去30年間にわたり他にもさまざまな木製ゲームを出版しています。意外とこれらを網羅した日本語の記事が見当たらなかったので、簡単にまとめてみました。 原則的にアブストラクト(運要素やアクション要素のないゲーム)を取り上げています。絶版のタイトルは入手困難なものが多いのですが、ボードゲームカフェで遊べたりする場合もあるようなの

BEST COMBINATORIAL 2-PLAYER GAME OF 2022 内容紹介

BoardGameGeekのアブストラクトゲーム・フォーラムで有志により例年開催されている、2人用アブストラクトを対象としたBEST COMBINATORIAL 2-PLAYER GAME(ベスト・コンビナトリアル・2プレイヤーゲーム)の選考が今年も行われ、Nick Bentley(ニック・ベントリー)氏のStrands(ストランズ)の受賞が決定しました。おめでとうございます!(選考結果のページ) ニック・ベントリーさんは2015年にCircle of Life(サークル・

ゲームマーケット2023秋の新作アブストラクトたち(+2023春新作)

昨年に引き続き、明日より行われるゲームマーケット2023年秋で出品される新作アブストラクトをまとめました。 前回同様、運要素を排除しているゲームを五十音順に取り上げさせていただいています。(セットアップ時のランダム要素はあり) 値段はゲムマ価格です。内容に間違い等ありましたらお手数ですが筆者までご連絡ください。 2023年秋新作アナウメモグラ (ゲームNOWA) ・2人用 5~10分 10歳~ ・ゲームデザイン:木村陽介 ・100円 紙ペンゲーム。各自の色の線で点を結

謎のボードゲーム「PICKIT」のルールを調べた

経緯2020年にアブストラクゲームのデザインを始めた頃から、勉強のためネット上にあるアブストラクトゲームの情報を収集し自分用にデータベース化するという作業を行っています。 意外と面倒で最近少しさぼり気味なのですが、ざっと数えて1500程度のタイトルが画像、ルール、主要メカニクスなどの摘要と参照用リンクともにまとめられていて、ルールを思い出したり、類似するゲームを探したり、特定のメカニクスの発生時期を推定したりするのに便利です。 そうした収集作業を行っていると、当然ながら「

先手有利をどう軽減するか —アブストラクトゲームにおけるバランスルール

Noteでもたびたびご紹介している私の考案したアブストラクトゲーム「メリディアン」につきまして、先日オプションルールとして新たに「パイルール」を追加することが決まりました。これはヘックスやツイクストのような接続目標のアブストラクトでよく使われる、先手と後手の有利さのバランスを取るためのルールです。通常、先手が最初に駒を置いた後、後手が先手と交代するかどうか選べるというかたちを取ります(後ほどもう少し詳しく紹介します)。 メリディアンは捕獲ルールが独特で、当初このルールが先手

非商業アブストラクトの世界

アブストラクトゲームは「運や隠蔽要素がない」という特徴を持つ、定義上ボードゲームの(ややニッチな)一ジャンルです(この用語には独特の紛らわしさがあり、人やシーンによってはやや異なる意味合いや意味範囲でも用いられることは過去の記事で触れました)。とはいえ、実はボードゲームの一ジャンルとしては少々変わった特徴があります。それは「物理的かつ商業的な形で出版されていないゲームが多分に含まれる」という点です。 今回の記事は、一般的なボードゲーム愛好者の目からは隠れがちな「出版されない

アブストラクトの最小ボードは何マスか

ゲームマーケット開催前の先日、後掲のダイキチさんのつぶやきをきっかけに、複数のゲームデザイナーさんが極小ボード(8マス以下)の自作アブストラクトゲームを(それとなく)プレゼンしあう、という出来事がありました。私自身にはいまのところ極小ボードのゲームはないのですが、この話題をきっかけに極小ボードをつかう過去のアブストラクトをTwitterで紹介したりしています。 アブストラクトゲームを好む人にとって興味深い話題だと思い、流れてしまうのがもったいなかったので、時系列順ではありま

ゲームマーケット2022秋の新作アブストラクトたち

今年も10月29日~30日にかけて、東京ビッグサイトでゲームマーケットが開催されます。Kanare_Abstract はいまのところリアルイベントへの参加予定はないのですが、意欲的なアブストラクトの情報がツイッターでどんどん流れてくるので、備忘録を兼ねてまとめさせていただきました。 掲載はタイトル五十音順で、ここでは運要素をある程度厳密に排除しているもののみを取り上げさせていただいています。詳細が出ていなくて紹介できなかったものもあるので、わかり次第後で追加させていただくか

アブストラクトゲームで使用される捕獲の種類

はじめにアブストラクトゲーム(運要素のないボードゲーム。将棋、チェス、囲碁、オセロなど)では、盤上にある対戦相手の駒をルールにもとづいて除去することをしばしば「捕獲」と表現します。この記事はアブストラクトゲームで使用される捕獲メカニクスの種類を7つのカテゴリ+αに分類して解説を試みたものです。 「捕獲」ルールのあるゲームはアブストラクトのなかでも広い範囲に及んでおり、どのようなタイプの捕獲ルールが採用されているかはそのゲームの性質を大なり小なり方向づけています。「捕獲」のタ