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『ボーはおそれている』

『ボーはおそれている』を観ました。
監督:アリ・アスター
俳優:ホアキン・フェニックス、パティ・ルポーン他

多くの人がこの映画について感想を述べている。僕もそれに混じって書いてみたい。
この映画は全部主人公ボーの妄想なので、解釈は様々にできるのだと書く人が多い。わけがわからないとか、戸惑っている人もいることと思う。
それも仕方のないことで、男性器の怪物が出てきたり、実際この映画はわけがわからなく作っている。観客を混乱させようとして作られている。
監督がインタビューでも言っているように、「不安になるといい」「どん底気分になればいい」として作られているようだ。

僕もこの映画を観た後で、何を受け取ったらいいのかよくわからないなとぼんやり思っていた。
母親の経営する世界に住まう老いた子供。成長してゆく痛みを母親は受け入れられない。社会は荒廃していて誰かを頼ることもできない。
屋上屋に住むと言われる父親は妖怪。よくしてくれると思われた人もどこかおかしい。
全ては母親の経営する会社に囲われていて、母親は主人公の思考を疑っている。
主人公の理性を疑う人もいるけれど、僕には疑うべき理由も見つからなかった。強いて言えばあまりにも人生経験が乏しくて、無力にすぎるのが主人公の欠点なのだが、それ以外に彼の物語上の汚点を挙げることは難しい。母親を殺そうとしたではないかと言われるかもしれないが、あれだけの異様な世界の中で少々狂った行動を取ってしまうのも無理はないのではないかと思う。正当防衛だったと解釈することはそこまで難しくはないのではないか。

で、考えた末に主人公のある言葉を思い出した。どうもこの言葉がこの映画の肝なのではないか。

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