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『君を 花を』(詩)

草かげに隠れて 草の束に潜って
風に煽られるのなんて嫌いだし
そもそも風の強い日なんて好きじゃないし

そよ風が緑の葉先を揺らしても
道はできないけれど
腰ほどの草むらの中には君がいて
僕は踏みつけながら かき分けながら
君にゆく

君が草むらからひょっこり顔を出したら
君を 花をあげるね

君に君はあげられないから
僕が 君を 花をあげるね
僕は花に詳しくないけれど
君の名前を知っているし
花の咲く時期くらい知ってる

だから 君を 花をあげるね

君はいつか草むらに消えて
また別の場所からひょっこり顔を出して
僕は君を見つけられないかもしれないけれど
君はまた別の花を貰えるから
僕じゃない人から
君を 花を貰えるから

いろんな色の花を
集めて 眺めて 束ねて 抱きしめて

届くわけないのに
頭に落ちてくるのに
空に投げればいい

草むらに落ちてもなお
君の頭に不規則に降り掛かってもなお
その花は君が思うよりも 美しいから
 
 
 
 
 
(おしまい)

僕の書いた文章を少しでも追っていただけたのなら、僕は嬉しいです。