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『冬を巡る』(詩)

降り積もった白い雪は僕の声を抱え
頬を擦る冷たい陽光に感覚が麻痺する
生命は土の中で息を潜め
蓄えておいた栄養を消費するのみ

僕は冬が好きだ
世界中の誰よりも

雪は跡形もなく消え去り
柔らかな陽射しが肩を撫でる
コートとマフラーはもういらない
人々は花びらが揺れる様を歓迎する

僕は冬が好きだ
たとえ去っていくとしても

熱された地面は水を蒸発させ
刺すような太陽が腕を焼く
実をつけ始めた植物は背を伸ばし
恵みの水を吸い上げまた肥える

僕は冬が好きだ
どんなに遠くあろうとも

足元には色を変えた葉が積もり
傾いた陽は風と共に僕らを追い越す
熟れた果実は甘みを増し
人々の頬を緩ませる

僕は冬が好きだ
もう少ししたら会えるかな

僕は冬が好きだから
君は春を好きでいて
春を待って 春を呼んでおくれ

僕の代わりに春を愛しておくれ
君が求める春を愛しておくれ
僕の知らない春を愛しておくれ
君に訪れる春を愛しておくれ

やっぱり 僕は何度巡ったって冬が好きだ
いつでも 僕は冬を愛しているから
もちろん 僕はこれからも冬を愛する
それと… 君に 春よ 来い


 
 
(おしまい)

僕の書いた文章を少しでも追っていただけたのなら、僕は嬉しいです。