愛好家は偏頭痛がキライ

 幼い頃から偏頭痛に苛まれている。
 視野欠損と閃輝暗点が主な前兆で、それが目の前に現れるたび幼かったわたしはパニック起こし泣き喚いた。その後訪れる地獄のような痛みを恐れていたのである。
 前兆と頭痛の関係性は小学生の時には理解できた。「目の前がビカビカしたら絶対に頭痛くなってゲロ出る」この認識は未だに正しい。そのため小学生だったわたしは前兆が見えている時点で学校を休む提案をする。しかし大人はまた仮病だと言う。この後絶対に頭痛くなってゲロ出るのに。案の定登校した瞬間に腹のものをぶちまける。激しい頭痛。迎えにきてくれる大人はいない。保健室で何度も吐いて泣く。だから言ったじゃねーかガキだからって舐めやがってよ。畜生。

 そんな偏頭痛は20代前半まで3ヶ月に1度のペースで訪れていた。日々の生活を送る中で毎日のようにふと頭をよぎる不安。今日また頭痛くなったらどうしよ。仕事、休むって言ったらどやされるしなあ。あーあ。マジでコレさえなければもう少しどうにか、わたしも、ああ、上手くいくんじゃ…あー。もう考えるのをやめて、適当な錠剤でもイッパイ飲みましょうかね。健康と不健康、相対的に考えたって、どうにも、もう、いいなあ健康なひと。

 そうこうしているうちに日々の怠惰のおかげだろうか、躁と鬱を繰り返すビョーキを患う。躁の時は何だってできる気がするし、鬱の時は本当に何もできない。安定した思考もできないし、全ての事象を己と関連づけて誰かに見張られているような気持ち。とにかくマジメにいないと殺されるんじゃないか。あの日あの頃のカルマの精算が今か。という妄想。少し統合失調気味でもあったと思う。今はもうだいぶマシ。
 そのビョーキの治療のために出されたのがSSRIだった。多くても少なくてもイケナイらしいセロトニンをなんだかEチョーシにしてくれるそうな。愛好家としては新たなトビをゲットできるんじゃないかと一瞬口元が緩んだが、ビョーキの人間にはただキチンと薬効を発揮してくれるだけだった。

 投薬によりビョーキがマシになると同時に、頭痛の頻度が激減したことに気づく。
 どうやらセロトニンと偏頭痛は大いに関係があるようだ。インターネットにもそう書いてあったしたぶん絶対そう。なんか、あんだって、関係。そんでなんか、頭痛が起こるメカニズムとしては、収縮した血管がなんか急に膨張してあたま痛い痛いにする神経に当たっちゃうんだと。ほんでまだ明確な原因は明らかになってないんだって。この辺は説明めっちゃ無理だからインターネットしてください。
 とにかくわたしの偏頭痛はSSIRの投薬により普段からセロトニンの濃度を安定させたことで解決したのでしょう。

 「じゃあさあ、他の"薬"ではなく"ドラッグ"と表現されるセロトニンに作用する物質ならどうなるんだろうね?頭痛。例えばあの、染み込んでる、大好きなあれとか」
 と、愛好家のわたしが問いかけてくる。

 もう少し続く人生の上で、この問いに信憑性の高い答えが出せる日を今しばらく待ってみようと思う。
 今のところは「調子いいよ!」との答えしか持っていない。


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