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私の嫌いなマーダーミステリー

マーダーミステリーの定義云々の話をすると、「多様性ガー」と言われ、意見を封殺され、返って多様性の無いディストピアとなる気がするので、単純に「私の嫌いなマーダーミステリー」を書きます。

「私が嫌いな」と書きましたが、理由なく嫌悪しているのではなく、「ゲームとして面白くないから嫌い」とだけ言わせていただければ嬉しいです。あと、作品を挙げるわけではありません。「こういう作りのもの」という形で挙げて行きます。

1.気づき(推理)のない作品

これは何度も書いていますが、「帰納法」で犯人を特定する「情報整理」しかない作品です。

帰納法とは
「AとBは犯行時刻アリバイが無い」
「BとCは凶器になる物品を持っている」
「故に犯人はBだ!」

ってやつです。解いたところで「まあ、そうだよね」としかなりません。推理とは、ちょっとした違和感や、食い違いなどから「気づき」を得て推測していくものだと思っていて、推理ゲームはこの「気づき」の瞬間が一番楽しいと考えています。

たとえそれが、ゲーム中に分からなくても、解説で「なるほど!だからこうなっていたのか!」「こんな仕掛けがあったのか!」「こういう理由でこのセリフなのか!」などがあればいいです。むしろ最高です。

2.犯人を庇うプレイヤーがいる作品

ハッキリ言ってクソ(汚い言葉失礼)です。
ゲームとして、こんなアンフェアなことはありません。

情報整理でも、気づきでも犯人に辿りついたところで、協力者に全部ひっくり返されます。じゃあ、最初から「協力者が居る」という情報や、矛盾を覆す決定的な証拠品を用意すれば良いのでは?と思うかもしれませんが、そうすると簡単すぎます。今度は、犯人にとってアンフェアです。

終わったあとに「こんなの無理」という感想が、犯人もしくは、犯人以外のプレイヤーどちらかに発生します。

他の情報で、「あと2人に犯人が絞れたんだけどな」みたいな状況だと最悪です。「アリバイアルヨ」と庇うプレイヤーが証言したらもうひっくり返しようがないですから。

また、「犯人を庇う目的もあり、自分に投票されても問題ない」というキャラは最悪です。そのキャラ何も話すことがなくなりますし、もっと言えば「私がやりました」と言っても良いことになります。その結果、疑われても構いません。それで犯人に投票が行かないなら目的達成です。

もちろん、犯人以外のプレイヤーを庇う(犯人投票されない)といったキャラクターは居ても良いと思います。犯人を庇うのは論外です。

3.犯人捜しをしないプレイヤーがいる作品

前項にも付随しますが、そもそも犯人捜しをしない(犯人捜しが目的に据えられていない)プレイヤーの存在は邪魔以外のなにものでもなく、自分でプレイしても楽しいとは微塵も感じません。

全員が同じ方向を向いているからこそ、「犯人捜し以外の目標」が阻害項目となりジレンマが発生するわけで、犯人役も「どこまで協力するそぶりを見せるか」のジレンマがあるわけです。

犯人捜ししないキャラがいたらメチャクチャですよ。犯人だって積極的に協力する(フリ)をしなくても良いですし、真面目に犯人捜ししている人間は戦力が削がれるわけですから。

それが楽しいという方もいるのかもしれませんが、私は推理がしたいので、ちゃんとフェアネスを保ったうえで犯人捜しをしたいです。

4.犯人捜しにインセンティブの無い作品

「犯人捜しをさせて、指差し投票までさせたのに、それが当たっているかどうか(誰が犯人か)の発表もなければ、投票結果が作品に何の影響も与えない(得点や勝ち負けもなければ、分岐的なものもない)」という作品を、少なくとも2作品遊んだことがあります。

「だったら犯人捜しさせないでください」

と本気で思いました。意味のないことをなぜさせるのか?
正直、マーダーミステリーと名乗って欲しくもないですが、名乗るとしても「この作品は犯人捜しをしてもらいますが、犯人捜しに意味はありません」と書いて欲しいです。本当にそういう内容なので。

こうやって文章にしたら「おかしな内容だ」と気付けると思います。これを狙ってやっているなら注意書きを書いても差支え無いと思いますし、それでも書かないのであれば不誠実だと思います。

犯人を捜させるなら、プレイヤーに何かしらの(ゲーム上の)インセンティブが必要です。それは点数かもしれませんし、勝敗かもしれませんし、その後の分岐や有利不利に繋がるなにかかもしれません。ゲームである以上は当たり前のことです。もし、ゲームではないと主張するのであれば、そもそも「犯人捜し」というゲーム的要素を失くしてしまえばいい。ただ、それは少なくとも私は「マーダーミステリーではない」と思いますので、別のカテゴリとして作るなり、注意書きをするなりは必要だと思います。

5.解決(失敗が無いこと)前提の作品

「解決」にはパターンが2つあって、ひとつは「犯人捜し」。
犯人捜しについて「犯人が判明して当たり前」な作品も結構見受けられます。典型的なのは、エピローグなり、ラストアクション的なものであったりが、犯人が捕まること前提(犯人が判明したのちの展開)となっているものです。

犯人判明のパターンしか想定していないのか、殺した相手を復活させるアクションに犯人役なのに参加させられたことがあります。(犯人として拘束されなかったため)

当然、殺した手前、協力してよいものか?よくわからず、何も発言しないまま微妙な気持ちでみんな頑張っている様を見つめていました。楽しいという感情は無かったです。

そもそも犯人に捕まって欲しい作者の思いから「犯人は逃げ切るの無理」というシナリオもありました。何が楽しいのでしょうか?推理する側もつまらないですし、犯人のプレイヤーも終始「俺じゃない」と言うだけです。

もうひとつはラストの「謎解き要素」や「アクション」です。
何回でもトライ出来るうえ、失敗した際の展開が用意されていないため、解けるまで「やらされる」作品があります。

正直、先日遊んだシナリオで、この最後の掛け合いが思いのほか面白いものがありました。ただ、それはプレイヤーが面白がって「大喜利」になってしまったために、ちょっと盛り上がっただけでした。ゲーム性とはあまり関係が無く、シリアスな作品ではふざけることも憚れるので「ただ面倒くさい」という気持ちです。

失敗なら失敗でいい。失敗があるからこそ、少なくとも私は、真剣に考え、成功した時に楽しいと感じるのです。

6.未知の凶器(殺害方法)を用いる作品

専門的な話ではなく「一般的な感覚」で「それじゃ死なないよね」という殺害方法の作品は終わったあとモヤモヤするので、好きではありません。

たとえば「毒」
専門的な意味で殺せる殺せないという話とは別に、「拾った毒」或いは「他人が購入した毒を盗んで殺した」という作品を少なくとも3作品遊びました。

拾った(盗んだ)毒と思しきものにどれほどの殺傷能力を期待するのか?
そもそも、拾った(盗んだ)ものが毒であるとなぜわかるのか?

メチャクチャ殺意あるのに、凶器が「他人から盗んだ毒」とか言われるとすごくモヤモヤします。その毒試してみたのか?と。仮に失敗したら(毒性が弱い or そもそも毒ではなかったら)このキャラどうするつもりだったのか?と。

実際は鈍器で人を殺すだけでも色々矛盾はあるかもしれませんが、所詮、プレイヤーは専門家ではないので、「感覚的に殺せそう」さえ整っていればよいかとおもいます。しかし、それすら整っていないとき「いやいや殺害方法として無理がある」といったノイズが発生し、楽しめなくなります。

7.「作者の考えた最強のストーリー」を追体験するだけのナニカ

1.~5.の要素を詰め込み、一本道で淀みなく、議論も推理も、ゲームとしての意味もなく、ただただ作者の引いたレールの上を歩くだけのナニカ

そういうのが好きな人も勿論いらっしゃるとは思いますが、「マーダーミステリー」の看板を掲げるなら、要素が足りないと感じます。

物語を表現したいだけなら、マーダーミステリーという箱は不自由極まりないし、それを求めていない人も開けてしまう箱である以上、箱の中に留まる必要も無いのではないでしょうか?

そんなナニカに当たってしまったとき、私は心の中で悲鳴を挙げます。
「時間を返して欲しい、家族と一緒に過ごす時間にしたかった」と。

今なら、娘の笑顔にその時間を費やしたいと思うでしょう。


最後に、私はマーダーミステリーが好きです。
日本にちゃんと定着させた自負はありますし、こだわりもあります。

「多様性」の御旗のもと、本来のマーダーミステリーの魅力が削がれた作品が多々出てきて、体験するたびにモチベーションが下がり、創作を続けるか悩んだ時期もありましたが、最近は少し持ち直し、プレイの機会にも恵まれています。

そんななか、以前のようにまた色々遊ぶようになりましたが、個人的に「面白い/面白くない」以前の作品ばかりに当たってしまっています。

私が遊んだ数など、全体で見れば少数かもしれませんが、それでもアウト率が高く、名を聞く有名作家でも前述した内容のものばかりで落胆しています。

創作は好きにすれば良いと思いますが、マーダーミステリーの看板を掲げるなら、マーダーミステリーを期待して暖簾を潜ったプレイヤーと認識の齟齬が生まれないような作品を提供して欲しい。旨いか不味いか(面白いか面白くないか)はその後の話だと思います。

マーダーミステリーの枠に捕らわれない創作は「発明」なので、違うジャンルとしてどんどん発表すれば良いのではないでしょうか。それって凄いことですよ。マーダーミステリーにしがみついて創作している私なんかよりよっぽど偉大で素晴らしいですし、その新規創作コンテンツを求めているプレイヤーも、従来のマーダーミステリーを求めているプレイヤーも双方が喜ぶと思います。

私はもっとマーダーミステリーが遊びたいです。

ストーリー追従するだけのコンテンツではなく、推理して、議論して、目的のために奔走して、犯人捜しに勝ち負け、分岐などのインセンティブがあり、犯人を庇うプレイヤーもおらず、全プレイヤーが出来るだけフェアになるように作ろうとしているゲーム。

そんなゲームを。

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マーダーミステリーについて私(かわぐち)の考えや、ちょっとした情報などを書いて行こうかと思います。

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