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三浦龍輝が歩んだゴールキーパーの軌跡|土屋雅史著『蹴球ヒストリア』

サッカーのゴールキーパーほど、熾烈なポジションは無いと思っています。

Jリーグでは1チーム3~4人のゴールキーパーが所属し、たった一つのポジションを争います。

ベンチに控えるサブゴールキーパーは、正ゴールキーパーの負傷やカードによる退場を除けば、試合に出場する機会はほぼありません。

そのため、モチベーションを維持するのは並大抵のことでは無いと思います。

私は、そのポジションの特殊性から、野球の「キャッチャー」に似ていると感じていました。

キャッチャーは、ピッチャーが打者へ投げる投球を受ける唯一のポジション。逐一、野手に対して守備位置の指示を出す所などは、後方から指示を出すゴールキーパーに近いものがあります。
また、チームに絶対的なキャッチャーがいる場合、控えキャッチャーに試合出場の機会が巡って来ることはそうそうありません。

しかし、プロのゴールキーパーがキャッチャーと決定的に違う点があります。それは、他のポジションに転向するケースがまず無いこと。

日本のプロ野球の場合、キャッチャーとして入団するも、出場機会や適性などから野手に転向し、成功した例があります(元日ハム・巨人・中日の小笠原道大、元西武・中日の和田一浩、元広島・巨人・西武の江藤智、など)。

一方のゴールキーパーは、ひたすらにその一つのポジションを巡って日々のトレーニングに励みます。第3、第4のゴールキーパーはベンチに入れない日々が続きます。

よって、ゴールキーパーは、サッカー特有の厳しく熾烈なポジションと感じていました。




ジュビロ磐田のゴールキーパー三浦龍輝

2023年現在、ジュビロの正ゴールキーパーとして活躍しています。以前から、その座を掴むまでの過程を知りたいと思っていました。

2015年に柏レイソルでプロキャリアをスタートしますが試合出場なく1年で契約満了。

2016年はAC長野パルセイロでプレー。J3で出場を果たしますが、シーズン後半からはサブに回ります。

2017年ジュビロ磐田に入団。正ゴールキーパーの座を掴みシーズン終了まで戦い抜いたのは入団5年目の2021年でした。この時、既にプロキャリア7年目になっていました。

ゴールキーパーという熾烈で独特の特殊性を持つポジションで戦い続けてきた三浦龍輝の歩んだ道。

その軌跡を知るのに、うってつけの本に出合うことができました。

土屋雅史著 「蹴球ヒストリア」です。

この本と出会うきっかけとなったのが、私と同じくジュビロサポーターであり、noteクリエイターの鈴木意斗さんでした。

鈴木意斗さんの「サッカーは勝敗だけでなく歴史込みで観るともっと面白く成る」という点に共感します。

選手の一つのプレー、振る舞い、発言がこれまでの積み上げて来たものと繋がっていたと知った時、心が震える瞬間です。

しかも、サッカーへの造詣が深く、「週刊J2」や「ひらはたフットボールクラブ」でサッカーのマニアックな知識や情報を分かり易く話してくれる土屋雅史さんの著作。

面白くないわけがありません。
すぐに書店に走りました。




私が最も知りたかった

「第3キーパー、第4キーパーの振る舞い」

について、
土屋雅史さんは三浦龍輝にズバリ質問しています。

三浦龍輝は、

「メチャメチャ難しいです。」

と前置きした後、
三浦龍輝なりの答えを語ってくれました。

単なる補欠選手では無く、チームが強くなるための必要性について知ることができました。

表には出ないベンチ外のゴールキーパーの果たす役割。チームが強くなるためには不可欠なのです。

まさにチームへの献身性が求められるポジション。そして言わば「ゴールキーパーズ」という集団としての結束と、ポジション奪取の競争心を併せ持った仲間であり続けなければならないと感じました。


もう一つ、改めてジュビロにとってその存在意義の高さを認識したのが同じくゴールキーパー八田直樹の存在。

八田直樹はジュビロ一筋19年目のベテランゴールキーパー。しかし、川口能活カミンスキーという絶対的守護神の存在から必ずしも出場機会に恵まれた選手ではありませんでした。

さらに、2021年途中に三浦龍輝に正ゴールキーパーの座を奪われています。八田直樹だって悔しい思いがあったはずです。しかし、三浦龍輝からは八田直樹に対し感謝の言葉が綴られているのです。

それはまさに八田直樹が長いキャリアで培った「第3キーパー、第4キーパーとしての振る舞い」の見本を後輩に見せ続けている証拠だと思うのです。


今年で31歳になった三浦龍輝。

中堅からベテランの世代になりつつあります。

三浦龍輝はこれからの夢についても語ってくれています。

それは、ジュビロ磐田だけでなく今後のサッカー界のためにも是非成し遂げて欲しい。

きっと、ゴールキーパーという厳しいポジションで戦い続ける選手達に大きな力になってくれることと確信します。




今回のnoteで「蹴球ヒストリア」の感想を書くにあたって、できるだけネタバレしないように詳細な部分には触れていません。

是非ジュビロサポーターには読んで頂きたい一冊だと思います。

更には三浦龍輝を含め総勢12人の蹴球人のインタビューが詰まっています。サッカーを観戦する皆さんへの夏の一冊としてオススメします。


最後までお読みいただきありがとうございました。
ジュビロ磐田と三浦龍輝のファン・サポーターに歓喜が訪れる事を願って。



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