国と民間による包摂的社会の実現に向けて

近代国家以降、功利主義的な志向で、資本主義、帝国主義が拡大し、現代社会を構築されてきた。その中で、ナショナリズムは国家を軍事的な側面では非常に強くしたが、軍事的有事の際が減少し、全体としては非軍事的平和的解決を希求してきたように思う。そして、平和的社会においては、国家の役割が不明確となり、個による自由な生き方が求められ、価値観が多様化してきた。

また、1万年ぐらい前から定住、農作が始まり、貯蓄が生まれたことにより権力や争いが生まれ、共同体として物質的豊かさを求めてきた人類は、現在一時的に衣食住に関しては、大きく困窮しないほどまでに生産ができるようになってきた(生産量だけで言えば)。
勿論エネルギー問題や食料問題、プラスチック問題、難民等の問題は山積みだが、
そのような社会の中で、物質的豊かさの次に人間が求めるものは、何かといえば、質的豊かさだろう。質的豊かさとは、現代的に言えば、言い換えればwell-beingとなるだろうが、これはhappyとは違う。
happyは、快や喜びだが、人間は、プラスだけではプラスを感じることができない。
つまり、本質的なhappyとは、その反対の不快や悲しみ等も必要要素であることを意味する。その本質的な(両義性のある)happyをここでは、well-beingという。

では、そのwell-beingとは、どのように作られるのか。
WHOの定義としては、身体的、精神的、社会的に良い状態という定義になるが、
つまり、全方位的に健康である状態ということである。

非常に密接に繋がっていることが昨今の脳神経科学の研究からも分かる通り、
身体性と精神性は二項対立的性質ではなく、同時に存在するものである。

また、その個々の健康状態は、社会との繋がりにおいても非常に規定してくる。
山口揚平さんは、「意識の可動域=健康」と定義しているが、まさしくであり、
社会を視るのは、主観的な活動であり、主観的な活動を規定するのは、身体性と精神性であるといえるからである。

また、意識の可動域の広い個々が集まる社会、理想的な状態で言えば、ルソーの一般意志に近いものを持つ個人が集まるものが社会とした場合、民主主義社会は健全に機能する。
つまり、個々が健康であることが、社会の健康に繋がり、社会の健康は同時に個々の健康にも繋がるという相互関係にある。

これらを前提として包摂性のある社会の実現に関して考える。
これは、「誰1人取り残さない社会」と言い換えることができる。
前提にも記載した通り、現代社会は、価値観が多様化し、その上で生活も多様化している為、単一の主義によって国民のwell-beingを満たすことは不可能になってきている。

最大多数の最大幸福としての機能を全うするのが、国の役割の一つであることは間違いなく、それは疑う余地はない。では国として国民を誰1人取り残さない為には何ができるか。

それは、民間(企業・NPO等)との共創による包摂的社会システムの構築である。
国が即断即決に向かないのは自明であり、規模感的にも地域性の違いを考慮して国が統一的制度を構築するのは不可能である。(だからこそ地方分権だという話は別途)

しかし、現代の価値観は猛烈なスピードで形を変え、常に一定の形をしていない為、それらに柔軟な対応が必要になってくるが、これらを国に頼ろうとする事自体が非合理的である。
ここで出てくるのが民間であり、NPOや本質的SDGsを推進する企業による、多様化した社会に対しての多様な受け皿の構築が必要であり、同時に、多様な受け皿を自ら作る事ができる人材の教育が必要である。
企業の余剰利益が分配されることにより、多様なNPOなどが活動でき、多様な課題にアプローチができるという包摂性は、資本主義のメリットであることは間違いないが、その恩恵に預かっていないと思う人(本当は少なからず恩恵はあるだろうが)からすると、企業の内部留保が増えていることや資本家の節税ばかりが目についてしまうんだろう(これも一定事実だろうし非常に残念だが)。

これから、包摂性の高い社会を実現させていく為には、要約すると、
1.国と民間によって、多様な受け皿になることができるような包摂的社会システムを構築する必要がある.
2.国と民間は共に、多様な受け皿を自ら作ることができる人材を育成していく

国がどうとか、政治家がどうとか、官僚がどうとか、企業・資本家がどうとか、きっとみんな悪いところもあるだろうが、きっと良いところも多々ある。
そんなのはどんな人間も同じだろう。

何が良い、悪いで“正義“を確定していくのではなく、
どのような違いなのか、多数派だろうが、少数派だろうが、
どちらも理解できるポイントを模索していく過程に本当の義があるのだと思う。
そこに包摂性があり、well-beingがあるのだろう。

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