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読書感想:ヒューマンエラー

読んだ理由

会社で共有された本であるのと産業用アプリケーションのUIをデザインする際の参考にしようと思った。

著者

小松原 明哲

概要

安全マネジメントの観点からヒューマンエラー防止のための入門実務書。ヒューマンエラーとは何ぞや?それはなぜ起きるのか、どうすれば防ぐことができるのかなど、現場での対策に活かせるようヒューマンエラーを体系的に解説している。

感想

まずUIやUXデザインに直結する話がかなり多い印象を受けた。例えば視力や錯視・錯覚、記憶力や動作能力など人間工学的な話や何より「メンタルモデル」まで登場してくる。他にも一貫性や寛容性、明瞭性を高めるなど普段デザイナーがデザインする際に意識していることがそのまま対策に繋がっていることも記載されている。

使う人に合わせてデザインしていなければ当然ミスを誘発してしまうが、一般家庭にあるテレビのリモコンなら押し間違えても番組の見間違い程度で済む、しかしこれが産業用機器(化学プラントとか製鉄所とか)のコントローラーだった場合大事故に繋がったり最悪の場合、死傷者が出てしまう可能性もある。

いかに人間工学的な観点でのデザインやユーザーのメンタルモデルとUIを合致させておくことがヒューマンエラー防止に必要不可欠なものだということを痛感した。

また本書ではヒューマンエラーの背後要因やエラーの種別などを中心に詳しく解説されているが個人的に興味深かったものはざっとだけど下記の通り。

ハインリッヒの法則
1:29:300の法則とも言われており、大事故は何の前触れもなく突然起きるというものではなく1件の大事故が起きるまでに、29件の中程度の事故と300件の微小事故が起きているという法則。

SHELモデル
元々は航空機パイロットのヒューマンエラーを説明する際に使われていたものらしい。作業者本人を取り囲むようにSHELの要素が取り囲んでいる。これらの要素がしっかりマッチングしていないとエラーが起きてしまう。

S:ソフトウェア(作業手順や作業指示の内容や指示の出し方に教育訓練などソフトに関わる要素)
H:ハードウェア(作業に使う道具や機器・設備などハード的な要素)
E:環境(照明や騒音、温度や湿度、空間の広さなど作業環境に関わる要素)
L:周りの人たち(その人に指示する上司や一緒に作業する同僚など、人的な要素)

これに全体を眺めてバランスを取っていく役割としてM(マネジメント)が追加されたm-SHELモデルもある。
※UIはここだとS(ソフトウェア)ではなく、道具という点でH(ハードウェア)に入るかな。

人間特性からみたヒューマンエラーの種類

1.人間能力的にできない相談
2.取り違い、思い込み、ミステイクなどの判断の錯誤
3.し忘れ、記憶の失念
4.作業者の知識不足や技量不足
5.手抜きや怠慢などの違反
6.チームの意思疎通
7.組織の不適切行為

UIでカバーできそうなのは1,2,3くらいだろうか。1は人間工学的なデザイン、2はメンタルモデルの合致や一貫性や寛容性、明瞭性を高めたUIをデザインし、3は確認画面やリマインダー、通知などの機能である程度は解決できそうな気がする。

本書では上記やそれ以外のエラーの詳細や対策まで書かれているので色々と参考になったのとデザインと関わりが深いところも確認できたので大変良かった。いつもデザインを勉強する際はデザイン関連の書籍を当然のように読むのだが、この本みたいな別分野の書籍でもデザインが勉強できることが分かった。

結局のところ自分が相対している業界に関連する知識をインプットすることがデザインに直接役立つと思う。産業用アプリケーションなどのBtoB向けのプロダクトをデザインしている人には一度読んでおいた方がいいオススメの本ですね。


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