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【令和4年度】一級建築士 設計製図の採点会を終えて。

こんにちは、かねっつです。
本日もnoteをご覧いただきありがとうございます!

今回は、【令和4年度 一級建築士設計製図】の復元採点会を終えた中で、受講生さんに多かったミスを紹介したいと思います。
(まとめるのに時間がかかりすぎて試験から1ヶ月経ってしまいました。。。)

また、そのミスは減点なのか?不問なのか?。どういう表現をしていれば減点にならないのか…といった採点のポイントを私なりにまとめてみました。
受験者さんの中で、不安な要素のものがあれば、ぜひ参考にしてください。

※この記事を読み終えるのに、約12分かかります。

■全体的な試験の概要について

今年の設計製図課題は【事務所ビル】でした。過去では平成21年度に、貸事務所ビルとして課題発表されました。今年は、自社ビル・貸事務所ビルを明確に公表しておらず、どちらにも対応できるように学習しなければなりませんでした。

当日の試験では、『階数の指定なし』『深い支持層』『基準階が中間階』など、初要素となる課題条件も多かったと思います。ですがその反面でエスキス自体の難易度は低く、プランニングが上手くハマれば合格できる可能性も十分にあった試験だったと思います。
いかにクセのある課題条件を理解していきながら、漏れのない作図が出来たかが勝敗を大きく分ける試験だったかと思います。

■採点で多かったミスや不安要素

私が実際に担当した受講生が復元採点会において減点だったところや、減点か否か判断に難しいもの(不安要素)をまとめてみました。
評価については、あくまでも参考ですので、実際の試験元が判断した合否の判定基準ではありません。参考資料として読んで頂ければと思います。

1.南側ではなく北側を主出入口としてしまったケース

今回の敷地条件には、南東方面に駅が存在することが記載されていました。また、北側に集合住宅が並んだ周辺環境であり、住環境の中に位置する貸事務所ビルでした。貸事務所を利用する人のことを考慮すると、南東方面にある駅からの動線や北側の集合住宅からの出入りを避ける点から、南側を主出入口とするのが好ましいと考えます。

しかしながら、最初の課題条件を読むと『駅からの動線に配慮して~…』といった文言が記載されていないことから、北側を主出入口としても不合格になる可能性は低いのではないか!?・・・と思ったのですが、改めて公式のHPには『敷地の周辺環境に配慮して計画する。』という文言がありました。

(これは正直見落としていました、、、)
不合格にはならないものの、何かしらの減点対象になってもおかしくはないと思います。

2.東側に延焼ラインを記載してしまったケース

建築法規に関連する項目になります。
今回の課題文では冒頭の『1.敷地及び周辺条件』に『敷地東側にある公園は防火上有効な公園である。』わざわざ明記されています。これが意味するのは、「それぐらい気をつけて作図してね!!わかった!?間違えたら許さないからネ!!」と言っているに他なりません。
厳しいかもしれませんが、建築法規の知識欠如の点から、ランクⅣ(もしくはランクⅢ)扱いになるかと思います。(減点ならどれだけ嬉しいか)

3. 基礎を2.5mのベタ基礎としてその下部を地盤改良と表記してしまったケース

私の受講生が1番多かったケースです。実務を経験していない大学生を落とすような課題条件だなぁと感じました。
結論からいうと…合否の判断が難しいです。あまりにも受験者の大半ができていないと厳しく採点することができないため、採点の判断は難しかったです。とはいえ、明らかに構造上不適切だよな。という作図表現であればランクⅢになると思います。
今回初要素の課題条件なので、試験官も相当気合いれてチェックする項目だと思います。

下記にそれぞれの作図表現と私の見解を記載します。

  • 2.5mのベタ基礎を描いて下部に斜線で地盤改良と描いた
    →支持層まで地盤改良と書いている場合、表層なのか柱状なのか不明であり、試験元は判断に苦戦します。表層改良と書いているのであれば、明らかに構造上不適切であるのでランクⅢだと思います。柱状改良であれば、構造上間違ってはいないですが、20m近い柱状改良をするならば、杭を打ったほうが施工性も良いですし、場合によっては不経済と指摘されることもあり得ます。よって、減点対象と考えます。

▲通常講義で2.5m程度の基礎を作図し、20m以上を地盤改良している表現
この場合、表層か柱状か不明であるため、何かしらの減点あるいはランクⅢ扱いが考えられる
  • ベタ基礎を表現せずに杭基礎を支持層まで描いた
    →フーチングがない場合、構造上不適切な表現と判断されるためランクⅡ(もしくはランクⅢ)の対象と考えます。

▲基礎の表現がなく、立ち上がりの基礎(または1FL)から直下に杭の表現
もちろん、基礎底部(フーチング)がないため構造上NGランクⅢ扱いとなる。
  • 支持層までベタ基礎を描いた
    →かなり不経済ですよね…。いわゆる深基礎ってやつです。ランクⅡ(もしくはランクⅢ)の対象と考えます。

この他にも
・杭は描いたが支持層に到達していない
・杭基礎も地盤改良も表記せず基礎の根入れ2.5mのみ描いた

同様に、ランクⅡ(もしくはランクⅢ)扱いになるかと思います。

3.貸事務室の合計面積が3,000㎡以上になっていないケース

今回の設計課題「貸事務所」の貸事務室についてです。コア部分を入れて3,000㎡ではなく、基準階の貸事務室AとBのみで3,000㎡以上になっていることが条件です。

前述でも書いたように今年の課題は階数の指定がなく、この貸事務所面積を頼りに何階建になるかを設定する作業が大事でした。結果として7階建もしくは6階建になったと思います。
大事なのは、貸事務室だけで合計3,000㎡以上になっているかということ。惜しくも3,000㎡以上を満たしていない場合は、ランクⅢの可能性があるかと思います。

4.シェアオフィスの貸室が無窓になっているケース

シェアオフィスの条件である貸室a,b,cは、具体的な面積が表記されておらず、定員人数と条件の室で面積を求める条件でした。受講生によっては算定結果によって、いずれかの貸室を無窓の貸室で計画してしまったケースがあったと思います。

この場合問題となるのが、重複距離が40mから20mに厳しくなり法規ミスによってランクⅣになるということです。結果から申し上げると、無窓の貸室を計画していても、重複距離が20mを超えていないことが明確であれば減点はないと考えます。
実際には、無窓の貸室はあります。利便上も特に問題はないため、あまり重要視している内容でもないと思います。

5.エントランスホールの通用口をレストラン部門を経由しないと出入りできないケース

今回の課題条件では、事務所部門とレストランでそれぞれの利用時間帯が決まっていました。
事務所部門からレストランに出入りする条件もないため、壁で区画しても問題ありません。つまり通用口は事務所部門用とレストラン用の2ヶ所必要になるということです。要するに、貸事務所で働いていた人がレストランが閉店しているのに問答無用で突っ切って通用口を利用するのはNGということです。
動線計画の不適合や条件違反ということで、ランクⅢ(もしくは減点)扱いになると思います。

6.屋上庭園のスラブを200mm下げていない断面図の表現としたケース

ちょっとしたことですが、バリアフリーが重要視されているこのご時世にとっては大事な条件です。屋上庭園を断面線で切っている場合、断面図に屋上庭園の表現が出てきます。
その場合、課題条件にもある『屋内からの出入口については、段差のない仕様』とあることから、ウッドデッキの高さを考慮すると、スラブ天端を最上階FLから200mm下げる必要があります。

▲最上階のシェアオフィスと屋上庭園の床レベルを合わせるためスラブ天端を下げる必要がある。

採点官からすれば、屋上庭園のスラブの表現を下げていない=バリアフリーに配慮していないと受け捉えられるため、減点の対象になってもおかしくないと思います。1番得策だったのは、屋上庭園で断面線を切らないことでした。そうすれば、細かいことを言えばスラブ天端をFLから200mm下げるが、誤魔化すことができます。(役所の人間のように細かい人が採点官なら別ですが…)
このミスは正直見逃してもらうことを祈るばかりです。ミスだったとしても、減点になるぐらいだと思います。

7.北側および南側に延焼ラインを記載していないケース

試験後1週間ぐらいして、SNSで騒がれていました。とある学校のとある受講生さんが「北側と南側は境界線に延焼ラインがかかるけど、描かないとランクⅣらしい…」。私がその投稿を見たとき、唖然しました。なぜなら、私の通常講義では、境界線にかかる延焼ラインまで記載する指導をしていなかったからです。
今回の課題の『Ⅱ.要求図書』には、『延焼ライン(建築物の延焼のおそれのある部分の有無にかかわらず必ず記入する)』と書いてあります。先ほどのミス要素の2番目に近いのですが、わざわざ書いているということは…そういうことなのかもしれません。。。
恐らく、S学院生の殆どは書いていないと思います。ただこれだけで、不合格になるかと言われると考えにくいです。私は減点項目だと思います。というか、そうしてほしい(懇願)

8.屋上庭園を床面積に含んだケース

既受験者がやってしまったケースです。なぜかというと、『2.面積表』の(2)では、屋上庭園を面積に算入しない記載されていないからです。

純粋に考えれば屋上庭園は床面積に算入しません。これは通常講義でも多くの学校さんが教えています。日頃の授業で深く考えすぎていた既受験者が、本番になって素直になりすぎたが故のミスだと思います。

ある講師の先生は、『問題文のバルコニーが屋上庭園のことだと思う』と仰っていましたが正直私は理解に苦しみます。私が仮に受験者だったら、試験会場でめちゃくちゃ悩んだと思います。「それなら最初から屋上庭園って書けよ!」ってなりますもの。これに関しては減点項目だと思います。さすがにランクⅣはないかと。。。

以上が、受講生さんの復元採点をして多かったミスや実際に面談をして受講生さんが打ち明けてくれた不安要素です。

とくに大きな不安は、基礎の表現方法だと思います。前例のない課題条件でしたので、どういった作図表現であれば減点にならないか採点に迷いがありました。今後の対策講義では、常に実務経験を踏まえた徹底指導が大事だと改めて考えさせられます。

■採点を終えて感じたこと

今年は15人の受講生さんを受け持ちました。冒頭でも書いたように、今年の設計課題は初要素が多かったため、初受験者も既受験者も、解けたけど不安が多いと言ってました。15人のうち8割は初受験者だったのですが、15人全員が未完成ではなかったので、それだけでもよく頑張ったと率直に感じます。

人によってミスは違います。ご紹介したミスだけでも8パターンありました。同じ課題でも課題文の読み取り方や学習の仕方で、こんなにも変わってくるのだと改めて感じました。大事なのは、テキストや毎回の練習課題にあることだけでなく、実務に直面した知識もプラスアルファとして伝えることだと感じました。受講生も日頃は建築業界で働くプロとはいえ、私も建築士として働くプロです。業種は違えど、伝えることは沢山あるので試験勉強とはいえ、教えることは足りなかったなぁと感じました。

■まだ分からない!もしかしたら合格できてるかも

投稿の内容をいろいろ見返して編集していたら、試験から1ヶ月が経ちました。
受験者の中にはミスが明確で、不合格だと諦めている人も多いはず。しかし諦めないことです。採点官も、人間です。採点のミスはあります。試験の結果は、運というものもあります。合格発表日まで気を落とさずにいることが大事です。受かってたらラッキー!!という気持ちでいるぐらいが丁度いいと思います。それが合格になる秘訣のひとつかもしれません。

とはいえ、確実に合格見込みが薄い人は、今から受験対策をしておくことをオススメします。年々、実務に近い課題条件が発表されています。今年を振り返るつもりで、次回こそ合格できるように早めの準備をしておきましょう。これも合格になる秘訣のひとつかもしれません。


最後まで、ご覧いただきありがとうございました!

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