見出し画像

苦手なものを語ろう!〜催事場編〜

人は、自分の苦手なものを語ってこそ輪郭というものがくっきりと浮かび上がってきます。相手のことももっと理解できた気になれます。 『好き』の共感よりも『嫌い』の共感の方が、得られて安心するはずです。 『同担拒否』はよく聞けども『同嫌拒否』は聞いたことがありません。自らを脅かす存在を共に敵視してくれる仲間の方が、生存戦略的には良いはずですよね。快適を近づけるのと、不快を遠ざけるのとでは、生物的な欲求では後者の方が強いはず。

僕が苦手なもののひとつに、スーパーなどでの催事場があります。
催事場、みなさんはご存知でしょうか。 スーパーなどでよく、普段は陳列していないような他の地域の特別展や、何らかの食品会社が特別に店内にスペースを借りて、スーパーに来た客に当社の製品を買ってもらうような場所やその状況、がそれにあたります。 そういう場所を総称してここでは、催事場と呼びましょう。

催事場には美味しそうな、見慣れないものが多々置いてあります。 まるで旅行に来た気分になれることもあり、僕にとってもとても魅力的です。

しかし、そのスペースではある特徴があります。 それは、「そのブースの担当者の方がその場所でお客さんと交流している」ことです。 そうすることで、もちろん売上が上がるでしょう。 その食品を作り上げた方の創意工夫や熱意を知ることもできるでしょう。 しかし、僕はこれが苦手なのです。

普段は同じようなものしか食べない一人暮らしの僕にとって、 たまに普段のルーティンを外したくなる時があります。 その時には、催事場に置いてあるものは魅力的に目に映ります。 そこで、ふらっとそのコーナーに立ち寄り、数秒間眺めていると、

「この商品はね、レンジで30秒温めると特に美味しいんだよ」
「お兄ちゃん若いからいっぱい食べられるね!こっちのこれはどう?」

などという『強制イベント』である店側と客側との会話が始まります。 これが苦手なのです。 話しかけられたタイミングで取れる行動の選択肢は2つあります。

①かけられた言葉に対して『場にふさわしい』返答をする。
②無視する。あるいは「買わないので…」と、この段階で断りを入れる。

どちらをあなたは選びますか? いや、果たして②を選べるでしょうか?
もちろん僕も①を選択することになります。

「この商品はね、レンジで30秒温めると特に美味しいんだよ」
僕「えー!そうなんですねー!すごーい!」

大概の食品は電子レンジで温めると温度が上がり美味しくなります。 そのような当たり前の事実に対しても、「初めて聞いた!」みたいなリアクションを思わず取ってしまいます。 こうなればもう店側の勝ちです。 お客を捉えることに成功しました。

今後どのような行動選択をしても、購入エンディングに向かいます。 一度会話のラリーが始まれば、その後数度のラリーが起こるのは自然の摂理。 サービスエース、レシーブエースを起こすほどの能力は互いにありません。 その商品が生まれるまでの生い立ちなどを聞く羽目になります。

きっと本当の『社会で生きていく力』とは、複数回の会話を続けたのちに、 「やっぱり買わないでおきますね。色々教えてくれてありがとう!」 と会話を締めくくることだと思うんですね。売買行為とは通常、そういったものです。 でも、そんな事できね〜〜!!これぞ、催事場のフィールド魔法な気もします。

話を聞いていくうちに、何かを買う流れになっていき、 ここでもひとつの問題が生じます。 値段が分かりずらいのです。 そういう場所では経験上、量り売りがなされている場合が多い上、 タッパーなどでまとめられている単位での重さが明記されていない場合があります。 自分が見ていないだけか…?

「これにします」と宣言をし、僕のターンが終了したのちに、 相手側の計量フェーズにて初めて値段が判明します。 そこでなぜか高確率で(は?え?こんなに高いの?なんで?)となってしまいます。

スーパーに陳列されている商品でそのようなことが起こったらどうするか。商品を棚に戻せば良いだけなので簡単です。 しかし、催事場となれば話は別です。 もう戻せません。 「事前によく確認しろよ」「店の人に値段を聞けばいいじゃん」という声が聞こえてきますが、 分かっているよ!!でも、そんな事できね〜〜!!催事場のフィールド魔法がかかっているのです。その魔法効果を破壊するには、『ハーピィの羽根帚』という魔法カードを唱えなければなりません。しかし、僕の手札にはありません。あるのは、クレジットカードのみです。

買わないと申し訳ない気持ちにもさせられます。
自然の会話になるために、ある程度こちらからも質問を投げかけたりもします。すると、それはただの雰囲気作りというか、社会人としてすごく普通の行為というか、そういう類のものであっても客観的に見て、最終ゴールとして『買う』という行為が綺麗なラリーの完結に思えます。でも、そういう雰囲気を『あえて相手に作らせて』購入まで紐付ようとする店側の戦術…?じゃあそういうスキルを使用しようとした時点で自分の負けは確定している…?いや、美味しいもの買えたのだから勝ち…?でも高いから負け…?
あああああああああぁぁぁぁぁ…!嫌あああああぁぁ…!
サンリオピューロランドにでも行って、おいしい空気を吸いたいです。

おそらく旅先などの非日常空間であれば、こういうイベントはむしろ楽しいと思うんですね。しかし、非日常空間であるのは相手側。こちらはあくまで、日常空間の延長上ですので、その中での観光地価格はあまり楽しめるものではありません。自分の家から一番近い自動販売機で、遊園地内特設のちょい高い飲み物が売っていても誰も買わないでしょう。

さらに、そのようなイベントが発生したのち、そのスーパーにしばらくいけなくなってしまうのです。その催事場は定期的、あるいは複数日開催されており、そのタイミングで僕が再びスーパーに訪れると、『買ってくれた客』として見られてしまうのです。 するともちろん声をかけられ、という強制イベントが再び発生し、購入エンドに辿り着きます。
自意識が過剰?一流の催事場ショッパーは客の顔を覚えてこその成功なのです!

もしそのスーパーに行けたとしても、催事場の人の視界に入ってはならないため、催事場周辺には近寄れなくなってしまいます。いつも行くお魚コーナーに近寄れない…ということが起こります。 そうなるくらいなら、「別のスーパーに行くか…」となってしまうのです。

いかがでしょうか。 この記事を書いていて、 「もしかして自分はかなりチョロい客なのではないか」という疑念が自分の中に浮かび上がってきました。
僕からお金を巻き上げたい場合、僕の自宅の最寄りのスーパーで、驚いちゃうくらい高額な英会話教材セット、あるいはビジネスで絶対に成功すると謳われたとっておきの情報商材を販売する催事場を開くと良いでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?