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『Strange Yellow』セルフ歌詞解説

アルバム『MIRACLE MILK』全12曲の歌詞について書いていきながら自分で深堀りしていきます。

今回は『Strange Yellow』。

この曲の1番のテーマは「ぼくの見てる黄色と他人の見てる黄色って本当に同じ色かな?言葉ではお互いに"黄色"と認識し合ってるけど、実際に見ている色は全然違うものだったりするんじゃないか?」という問題について歌ってる。

主観の景色というのは他者と共有することは実質不可能で、例えばぼくが「綺麗な青い空だ!」と思って見ている「青」は他人の目を通せばぼくの認識している「赤」を「青」として「ほんとだ!綺麗な青い空だ!」と言ってる可能性があるのではないかという話。難しい?

そんなこと考えなくても生きていけるんだけど、それを考えるのが好きなのがぼくなので、せっかくならそれを歌にしたいなと。そして、この歌はそういった主観の世界をぶつけ合った先に決められた「正義」とは本当に正義なのか?というこれまた難しい歌。だけど、歌詞を読んでみてほしい。堅苦しいテーマだからこそ、めちゃくちゃファニーにまとめられたはずだから。

それでは今回も、歌詞の深掘りしながら、サンプリング元や他作品からの影響なども紹介していくね。

歌詞全文(読み飛ばし可)

おれの中の正義感みたいなところに
おれの中の犬みたいなやつが
噛みついて離れない
腹が立つから蹴り飛ばしたったら

タラタラと流れる血が
罪悪感くんこんにちは
ドフィー曰く「正義は勝つ」
勝ったら正義で負けたら悪

カレー味の敗北か
敗北味のカレーか
どっちか一つを食べなきゃならぬが
選ぶ権利が見当たらない

で帰りにソバ ザルかせいろか
それが正論んふっ入んないから
いっつも食ってんだけど
これが勝つとなれば又 格別なのよ

おれに見えるイエロー
あいつに見える黄色
同じ色とは限らない
奇想天外ストレンジイエロー

インターネットに座り込んで
自分の正義以外の尻尾踏んで
ヒップホップに酔っ払って
ポリゴンの角に頭をぶつけて(寝る)

要は多様性の妖精
粉ふりかけてリーチを伸ばして
チーズ溶けるほどメラゾーマ吐いて
火のない所に煙をあげる

掘ったイモ弄んな今は何時だ?
敵も味方もない闇に向かい
テキトーに放り投げたボールが
変なバウンドして返って来ちゃった

おれに見えるイエロー
あいつに見える黄色
同じ色とは限らない
奇想天外ストレンジイエロー

____

「ドフィー曰く」のドフィーて誰?

冒頭の

おれの中の正義感みたいなところに
おれの中の犬みたいなやつが
噛みついて離れない
腹が立つから蹴り飛ばしたったら

この歌詞の部分。めちゃ気に入ってるんですよね。結構前からストックとして持ってた言い回しで、「正義感みたいなところ」とか「犬みたいなところ」の「みたいなところ」て表現。曖昧でいいよね。自分の中の「犬みたいなところ」ってなんだよってツッコミたくなる。けどなんかわかる気もしなくもない。

その後に続く

タラタラと流れる血が
罪悪感くんこんにちは
ドフィー曰く「正義は勝つ」
勝ったら正義で負けたら悪

ここで出てくる「ドフィー」てのは『ワンピース』の中に出てくる最悪最恐キャラ。ドンキホーテ・ドフラミンゴのあだ名ですね。アルバムの中の他の曲にもワンピースのサンプリングがいくつか散りばめてあるから探してみてね。
ぼくはドフラミンゴというキャラクターが超好きで。作中の彼の哲学、思想はかなり強引だけど理屈が通ってて妙に納得しちゃうんですよね。そこに愛があれば彼は相当な人格者になれたはずなのに。悪に染まっちゃった過去とかも含めて僕にとってすごく大切なキャラクターです。

そんなドフラミンゴの名言をサンプリングして「正義は勝つ」と歌ってます。以下、ワンピースのセリフから引用してます。

「海賊が悪!!? 海軍が正義!!? そんなものはいくらでも塗り替えられて来た…!!!」

タイトル:ONE PIECE 作者:尾田栄一郎
出版社:集英社 連載:週刊少年ジャンプ 連載期間:1997年 –

「平和を知らねーガキ共と戦争を知らねーガキ共との価値観は違う 頂点に立つものが善悪を塗り替える!! 今この場所こそ中立だ!! 正義は勝つって!!そりゃあそうだろう!!勝者だけが正義だ!!」

タイトル:ONE PIECE 作者:尾田栄一郎
出版社:集英社 連載:週刊少年ジャンプ 連載期間:1997年 –

痺れますね〜。ある意味この『Strange Yellow』という曲を表してるセリフですね。正義なんてものは見る角度を変えればいくらでも塗り替えられるって前提がこの歌には必要だなと感じていたから冒頭にこういうサンプリングを使いました。

そして、その後に続く歌詞の部分もまた全然違う場所からのサンプリング。スチャダラパーの『サマージャム'95』からのあのフレーズね。もし聴いたことないって人いたら聴いてみて!

スチャダラパーが好きでラップ練習してたりもする

『Strange Yellow』を作る時、正義だ悪だ、主観の色がどうだと、難しいことばかりを題材に歌ってるからこそその堅苦しさを緩めてくれるワードをいっぱい探した気がするなぁ。そんな中でこのバースは本当救いになってると思う。

カレー味の敗北か
敗北味のカレーか
どっちか一つを食べなきゃならぬが
選ぶ権利が見当たらない

で帰りにソバ ザルかせいろか
それが正論んふっ入んないから
いっつも食ってんだけど
これが勝つとなれば又 格別なのよ

「カレー味」ときたらみんなアレを思い浮かべるよね。そう。よく「究極の選択」の例として挙げられるあの2択。「カレー味の💩か💩味のカレーか」食べるわけですよ。時々、人生ってのはそういう場面があったりする。しかも選ぶ権利すらも見当たらない時もあるしね。負けたやつにはそういう選択を迫られる場面が訪れるもんだよと。

で帰りにソバ ザルかせいろか
それが正論んふっ入んないから
いっつも食ってんだけど
これが勝つとなれば又 格別なのよ

ここでスチャダラサンプリングですね。『サマージャム'95』では夏の暑い日にな〜んもやること無くて本屋に行って帰りにソバ食って帰って再放送のドラマでも観て夕方までダラっとするっていう歌詞なんですよね。いいよね。その後銭湯行ってクラブ行って朝まで遊んで...ていうな〜んもないけど全部ある。夏の思い出。そんな曲。

そんな曲から敢えてサンプリングしました。というのも、先述したように楽曲の題材の堅苦しさを緩めるためってのもあるんだけど、それに加えて「めっちゃ食うじゃん!」ていうボケの意味もあったり。1番大事にしてるのは何食うにしても負けて食べるより勝って食う方が美味しいんだよって所を強調したかった。ソバだろうが寿司だろうが焼肉だろうがファミチキだろうが、勝った日の帰りに食えばなんでも美味い!これもまた「視点を変えれば現実は変わっていく」食べ物にとっての正義である「美味しい」は食べる側のコンディションや視点の変化で左右するもんだよって伝えたかったのです。

バカバカしい言葉で韻を踏むという楽しさ

この楽曲でぼくが挑戦したかったのはミドルテンポの激渋ギターリフを弾きながらヒップホップを歌い上げるというスタイルです。ジャック・ホワイトに憧れながらスチャダラライクなラップをやってワンピースとかサンプリングしながら難しいこと訴えかけるというぼくのルーツが詰まった一曲なんですよね。

それに加えてここ3年くらいヒップホップのバトル動画とかよく見るようになって、ロックバンドやりながら「韻を踏む」ということに対する抵抗がドンドン無くなってる自分がいることに気がついて自分なりに言葉をうまくヒップホップ的な解釈で操ってみようと。

要は多様性の妖精
粉ふりかけてリーチを伸ばして
チーズ溶けるほどメラゾーマ吐いて
火のない所に煙をあげる

のように韻を踏む文字数は全然多くないけど、どこにリズムのアクセントを置くかってところを大事にしてます。一度文字で書いてみた後にフロウをずらして気持ちいいところにアクセントを置くというか、まあ、そういう専門的なことはミュージシャン同士で居酒屋で喋りますわ。
とにかく聴いてて「気持ちいい」「面白い」を大事にしてる。

だからこそここでもバカバカしい言葉を選ぶようにしてます。「チーズ溶けるほどメラゾーマ吐いて」とかね。その後の歌詞の

掘ったイモ弄んな今は何時だ?

とか思いついた時自分で笑っちゃったもんね。
解説するまでもないけど、一応そういう記事なので解説しておくね。

「掘った芋弄んな」てのは空耳英語で“What time is it now?”と聞こえるよ。と中学の英語の先生に教えてもらった記憶があって。そのまま直訳で「今は何時だ?」を当てはめると「掘った芋弄んな」と韻が踏めるんですよ!(驚)
本当に思いついた時は鳥肌が立ったね。まだ誰もやってないよな!?とか勘繰ってググって調べたくらい。
毎日のように言葉遊びの旅をしてるとこういう驚きの出会いがあったりするから堪らないんです。それに加えてこのバカバカしさもちょうど欲しかったニュアンスで。
胸を張って後世に伝えてほしい1行ですよ。

ぼく以外にもこの曲1番好きって人いるんだな

ここまで読んでくれた方には伝わるかもしれませんが、自己満足な部分が多い世界観の曲なので、作った当初は人から評価されるとは到底思ってなかった曲です。ただ、この『Strange Yellow』を「1番好き!」ていう人が何人か現れてすごく肯定された気持ちになったんですよね。

この曲を作ることができる自分を時々可愛がってあげないとミュージシャンなんてやってられないよ!ぼくにとっては指標になる曲なんですよね。大事に歌っていきます。

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