3年間付き合ったけど彼氏がフリーターになったので別れた話。 (10) 初セックスの話その1。

スキをくれるみなさんありがとうございます。久々にもかかわらず嬉しいです。駄文ですが、どうぞ温かい目で見守ってください。



さて、何度かデートを繰り返し、私も先輩である彼に敬語からタメ口をきけるようになってきました。その時の定番コースはサークル後に私の家に寄り、終電までいちゃいちゃして帰る、というもの。お互いお金がないので(今も無いですが)、これが一番効率の良いデートでした。ただ私はいつも、いちゃいちゃとはどうしたらいいのかわからず、部屋に2人きりでも、彼からのアクションを待っているだけの状態でした。

彼が笑いかけてくると、笑い返す。彼が頭を撫でると、喜んでそれを受け入れる。彼が抱きしめてきたら、抱きしめ返す。彼がキスしようとすると、私はただ目をつぶって待つ。彼が何もしてこなかったら、何もしない。つまんない彼女ですね。

彼に対して完全受け身になっていたのは、彼に自分の好意を示すのがとてつもなく恥ずかしかったからでした。彼に、私がどれだけ彼のことを好きか知られるのが怖かった。彼は私に充分なほどの愛の言葉をくれていたけれど、私はその半分も返せていなかったと思います。私から「すき」と彼に言ったのは、あの突然キスされた日だけでした。加えて、一緒にいる時間が長くなればなるほど、彼は私の前に何人の女と付き合って、何人の女とセックスしたのか、そんなモヤモヤが浮かんでくるようになったのです。2歳年上というのもあり、一緒にいるときの彼のふるまいから読み取れる「こなれ感」はその豊富さを物語っているようでした。一方で私は処女でなんならキスも彼が初めてです。それがなんだか対等じゃなくて、それが癪で、私は彼の核心に迫ることもできず、彼に対してうまく愛情表現ができませんでした。



ひねくれていた私ですが、かといって彼に「かわいいね」だとか「すきだよ」と言われて嬉しくないわけがありません。最初はこんなにも愛情表現が過多な男性がいるのかと驚いたほどでした。彼は会えば必ず「すき」と言って頭を撫でて、わたしを抱きしめました。

「はずかしい…」

「もう何回も言ってると思うんだけどな。毎回恥ずかしいの?」

「うん、だってこんなに何回も言われ慣れてないし…」

「毎回ちゃんと恥ずかしがってくれるから、言いたくなっちゃうんだよ?」

「先輩、もはや私の反応を楽しむ為に言ってるでしょ!」

「違うよ、〇〇がかわいい顔するから、すきって言ってるの」

「〜〜〜〜!!!」

私はすきって言われただけで一杯一杯なのに、それを見てニコニコ笑う彼は余裕そうに見えて、それがなんだか悔しかったのです。けれど、悔しいんだけど、何か仕返したいんたけど、恥ずかしがる私をニコニコ愛おしそうに見つめる彼のその顔に見つめられると、私はもう力が入らなくなって、結局恥ずかしがり続けるしかないのでした。

「なんかもう恥ずかしすぎて涙出てきた」

「なんで?」

「わかんない、先輩のせいだから!」

「ごめんね」

そう言った彼の手がわたしの頬を包みます。彼の顔が近づいてきて、キスの予感がして目を瞑りました。予想通り、彼の唇が私の唇と重なります。

「ごめんって思ってないじゃん!」

「思ってるよ。泣いてる顔もかわいいね」

「話噛み合ってな…!」

言い終わらないうちにまた彼の顔が近づきます。訳が分からなくなってきて、とりあえずまた目を瞑ります。今度は彼の舌が入ってきました。びっくりして、彼の服を掴みます。すると彼はふふっと笑って、キスしながらわたしの頭を撫でました。心なしか抱きしめる腕も強くなった気がします。初めての他人の舌の感覚に私は戸惑いました。思ったよりぬめぬめしていて、気持ちのいいものではなかったけれど、でも拒否したいとは思いませんでした。それを気持ちいいという人の気持ちは分かる気がして、ていうかそんなことよりどこで息をしたらいいのかわからなくて、初めてのディープキスを味わう余裕はないまま、唇が離れました。


「息できてた?笑」

「できなかった…」

「鼻でするんだよ」

「わかった…」

「でも気持ちよかったでしょ?」

「うん…」

「じゃあもう一回ね」

2度目はさっきより激しい気がしました。やっぱり最初はびっくりしたけれど、鼻呼吸を取り入れたことで彼の舌の動きを感じる余裕もでてきました。彼の舌は熱くて、繋いでくれた彼の手も熱くて、わたしはその熱に溶かされそうでした。


いつの間にか、頭を撫でてくれていた手は離れていて、わたしの胸の上にいました。


きゃっ……………!!!!!


彼の手を自分の胸の上に認識した瞬間、私は彼から一気に離れてしまいました。びっくりしたのです。そりゃ何度も彼とセックスする妄想はしました。そしてそれは、彼となら悪いものではないことも知っているつもりでした。けれど、いざ本当にそれをされると、恐怖の方が優ってしまいました。ほとんど条件反射で、その直後、私も自分が何をしたのかわかりませんでした。

「びっくりしたね、ごめんね」

彼はすぐさま私を優しく抱きしめ、また頭を撫でました。

「私の方こそごめんなさい…」

「いいんだよ、謝らなくて。悪くないんだから。びっくりさせた俺が悪いの」

「でも…」

「ゆっくりでいいから。今日はキスで我慢するから(笑)」

彼は冗談ぽく言って私をフォローしてくれました。彼はどこまでも優しかったです。もちろん私も、彼としたかった。けれどもどうしても制御できない何かがありました。


その日は結局、終電の時間が来て彼は帰っていきました。そして、その次の日に、私は予定通り帰省をしてしまったのでした。初セックスを果たせぬまま……。





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