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おいしいものは君と食べたい

 私は外食が好きだ。本やネットでレストランや喫茶店、カフェを調べて電車を乗り継いで少し遠くても足を運ぶ。そして味や見た目が自分好みだったら、それはそれは幸せな気持ちになる。
でも私には、何を食べるか以上に重要なことがある。"誰と食べるか"である。どんなに好きな雰囲気のお店でどんなに美味しそうな料理がテーブルに並べられても、一緒に食べる人のことを好きではなかったら一口も食べる気にならない。そんなことを初めて実感したのが高校3年生の終わり頃だった。大学も決まり周りも免許やらバイトやら新しいことを始め出した。私も、働いてお金を稼ぎ自分の好きなことに使うということに憧れを抱いていたためバイトを始めたある日、何人かでの顔合わせがあった。そこではもちろん全員が初めましてで、人見知りの私は完全に萎縮してしまった。お昼にカフェでご飯を食べようということになりみんなが次々に食べるメニューを決め注文するなか、お腹がまったく空いていなかった私はすぐには決められなかった。朝に軽く食べた以来何も口にしていなかったため本来なら、何でも食べられるぞ!と思うくらいお腹が空いているはずなのになぜか食べたくなかった。でも流石に何も食べないのは空気的に違うとわかっていたため、周りが全員パスタを注文する中、1人だけホットドッグを注文した。それも食べ切るのに必死で会話なんて到底出来なかった。
こんな経験初めてだった。そもそも小・中・高で初対面でご飯を食べることはなかったし、高校生活の大半がコロナ禍だったからか外でのご飯は基本1人で話さないというスタイルが染み付いてしまっていた。ああ、私にとってご飯って一緒に食べる人がこんなにも重要なんだということを見に染みて感じた出来事だった。正直、好きなものを食べられない辛さもあったし初対面の食事の場を楽しめない自分の特性にも嫌気がさした。慣れたら変わるのかなとも思っていたけど、どうやらこの特性はなかなか治らないらしいこともわかってきた。だから私は、こんな鬱陶しい出来事は心の奥底にさっさとしまって、好きな人と行くご飯を大切にしようと思う。なんなら、好きな人としかご飯は食べたくない!なんて思うようにもなっている。大人のコミュニケーションは飲みの場で培われるのかもしれないけど、私は飲みの場以外で仲良くなってから飲みに行きたい。この人好き!!って思いながら食べるご飯は、多分最高に美味しい気がするから。
              はなり


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