【小説】さもとらけのうた【短編】
死んで、それで終いや。
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「さもとらけは常にわたしのそばにあった。ふと足もとに目を落としたとき、ほとんどいつもそれは転がっていた。不意に空を見上げても、隣を見ても、果てはただ前を向いていただけでも、さもとらけはわたしの視界に現れる。それは「さもとらけ」とひらがなで転がっていて、水に浮かべた文字のように空気に滲み、揺らいでいる。思い入れも思い出も何一つないそれは、わたしの頭の内側に貼りついて離れない。ふとした瞬間に思い出されては、視界のはしに浮かんでこっちを挑発してくる