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融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

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完結。投稿した歴史小説「融女寛好 腹切り融川の後始末」をまとめたマガジンです。前書き及び本編全35章
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記事一覧

【第35章(最終章)・融女謝師恩碑】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第三十五章(最終章)  融女謝師恩碑  狩野融川の切腹から二十五年が経った。  天保七年…

仁獅寺永雪
6か月前
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【第34章・木挽橋暮色】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第三十四章  木挽橋暮色  素川章信と晴川養信が呼び戻された。部屋に入ってきた二人は、床…

仁獅寺永雪
7か月前
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【第33章・金色の悪意(後段)】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第三十三章  金色の悪意(後段)  十九歳の女絵師と三十七歳の幕府奥絵師、役者が違うと言…

仁獅寺永雪
7か月前
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【第32章・金色の悪意(前段)】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第三十二章  金色の悪意(前段)  伊川栄信が、阿部備中守の動向について栄に問い質すため…

仁獅寺永雪
7か月前
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【第31章・伊川と晴川】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第三十一章  伊川と晴川  昼八つ(ほぼ午後二時)ちょうどに浜町狩野屋敷から二丁の町駕籠…

仁獅寺永雪
7か月前
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【第30章・一門会議】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第三十章  一門会議  打ち合わせが終わると長谷川たちはすぐに出て行き、座敷には栄と素川…

仁獅寺永雪
7か月前
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【第29章・朝】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二十九章  朝  いつもと違う天井だ。でも、杉板の木目に見覚えがある。そうか。泊めていただいたんだわ。  昨夜、栄が阿部家上屋敷から戻ったとき、すでに日付が変わっていた。彼女が身を寄せる姉の婚家まで、歩けばさらに四半時(三十分)はかかる。そこで、浜町狩野屋敷の女中部屋に泊めてもらったのだ。  栄も、十一から十六までの内弟子修行中、この部屋で他の女性内弟子や女中たちと寝泊まりしていた。勝手知った場所である。疲れもあって、ぐっすり眠れた。  いや、寝すぎた。完全に日が高

【第28章・幕間狂言(二)柳橋の女】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二十八章  幕間狂言(二) 柳橋の女  娘を見送った後、こまの父親も浅草の店に戻る。彼…

仁獅寺永雪
7か月前
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【第27章・幕間狂言(一)扇屋の娘」融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二十七章  幕間狂言(一) 扇屋の娘  江戸の朝は明け六つ(ほぼ午前六時)に始まる。各…

仁獅寺永雪
7か月前
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【第26章・涙】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二十六章  涙  栄と新十郎が浜町狩野屋敷に着き、門脇のくぐり戸から中に入ると、玄関前…

仁獅寺永雪
7か月前
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【第25章・帰り道】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二十五章  帰り道 「新十郎さん、お待たせ」 「あっ、お栄様。終わりましたか」 「ええ、…

仁獅寺永雪
7か月前
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【第24章・意外な名前】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二十四章  意外な名前  栄は、背筋を伸ばし、正面から備中守を見て返答を待っていた。 …

仁獅寺永雪
7か月前

【第23章・将軍の影】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二十三章  将軍の影 「くっ、それは・・・」  備中守は、自分が完全に追い詰められてい…

仁獅寺永雪
7か月前
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【第22章・備中守の狙い】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二十二章  備中守の狙い  栄は、備中守の問いを無視し、彼を睨んだまま黙っている。十万石の大名に対して、これはない。町田が堪らず注意する。 「もし、お栄殿、お栄殿、聞いておられますか。備中守様が、お尋ねですが」 「も、申し訳ありません。少々、考え事を」 「お栄殿には不本意かもしれませんが、備中守様のおっしゃる通り、ここは法眼様の乱心として処理をし、後々、家督相続などについて備中守様にご助力いただく、とすればよいのではないでしょうか。備中守様も、如何でしょうか」  備中