仁獅寺永雪

野生の江戸美術ファン。特に狩野派絵画を愛好。好きな絵師は、清原雪信、狩野章信、狩野伊川…

仁獅寺永雪

野生の江戸美術ファン。特に狩野派絵画を愛好。好きな絵師は、清原雪信、狩野章信、狩野伊川院、狩野永岳など。令和5年8月1日から小説本編の投稿を開始。よろしくお願いします。

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連載中【前書き・物語の概要と前半主要登場人物】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

小説「狩野岑信 元禄二刀流絵巻」前書き ◆ 連載開始: 令和五年十二月十五日 ◆ 物語の概要  狩野岑信は、江戸中期の幕府御用絵師である。竹川町狩野家の次男に生まれながら、特に分家を許され、さらに、父や兄を差し置いて、御用絵師総上席、狩野派最初の奥絵師となった。  特筆すべき代表作もないことから、従来、時の将軍に気に入られて出世しただけの男と見られてきた。しかし、彼は、主君が将軍になったその年に死んでいるのである。これはどういうことなのか。  彼の特異な点は、「松本

    • 【第36章・武田の隠し金山】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

      第三十六章  武田の隠し金山  間部が居住まいを正す。無表情を一段レベルアップさせ、変な凄みを出してきた。 「いいでしょう。今後のこともあるので、お二人には話しておきましょう。まず、殿の出自に関する讒訴事件についてです。事件のことはご存知ですね」 「はい」 「結構。あの件については、用人職拝命後、私なりに再調査しました。何せ、殿のお立場を根底から覆しかねない問題ですから。幸い、殿の不利益になるような書面や証拠の品は見つかっていません」 「新見典膳はそれを探しているのでしょ

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        俊成朝臣が詠んだ景色、山吹咲く井出の玉川

        • 【第35章・竜之進遭難】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

          第三十五章  竜之進遭難  年が明け元禄十二年(一六九九年)、小正月も終わった睦月半ばのこと。築地本願寺の鐘が暮れ六つ(ほぼ午後六時)を告げる。浜屋敷の御長屋では、狩野吉之助と志乃の夫婦が火鉢を間に置いて夕餉をとっていた。 「あなた。お餅、焼けましたよ」 「おお、済まん」 「それにしても、竜之進様、遅いですね」 「今日は道場の稽古始めと言っていたからな。仲間と一杯やってるんじゃないか」  竜之進は出府以来、道場通いや他家への使いなどで外出の機会も多く、随分と垢抜けた。元々

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        連載中【前書き・物語の概要と前半主要登場人物】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

        マガジン

        • 狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)
          38本
        • 庭めぐり写真帳「京都の四季」編
          25本
        • 雑記帳
          22本
        • 写真で見る物語の現場「狩野岑信」編
          14本
        • 写真で見る物語の現場「融女寛好」編
          18本
        • 融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)
          36本

        記事

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          これぞつつじヶ丘、平戸ツツジ満開の三室戸寺

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          赤い絶景、霧島ツツジ満開の長岡天満宮

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          【第34章・うごめく者】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

          第三十四章  うごめく者  犬神憑きを退治した甲府藩御前様の行列が動き出した。赤穂藩奥方様の行列もそれに続く。その光景を見る二人の男がいた。彼等は通りに面した商店の暖簾の陰に身を隠している。 「くそ、忌々しい。儂の出番を取りおって」と吐き捨てた初老の方は、小太りで茶人風の格好。 「笠間侯、こうなっては仕方ありません。裏口から引き上げましょう。さ、お早く」と言ったのは、背の高い、いかにも物騒な雰囲気をまとった侍。  そして、とっぷりと日の暮れた五つ(ほぼ午後八時)過ぎ。駒

          【第34章・うごめく者】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

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          眼福にも程がある、京博の特別展「雪舟伝説」

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          花散らば すぐに顔出す 柏餅、小説執筆のお供(4)

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          【第33章・犬神退治】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

          第三十三章  犬神退治  元禄十一年(一六九八年)も十一月となった。勅額火事から二ヶ月、市中には焼け跡そのままの場所もまだ多いが、浜屋敷の庭園は別世界の如く紅葉に彩られて美しい。一度ゆっくりこの庭を画に描きたいと思うが、狩野吉之助にそんな暇はない。 「どうしたのですか。なぜ止まったのですか」 「はっ。見て参ります」  甲府藩主の正室・近衛熙子が乗る駕籠の右側から相棒の島田竜之進が駆け出した。吉之助と竜之進のこの日の仕事は、芝の増上寺に参る熙子の護衛である。  増上寺は

          【第33章・犬神退治】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

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          桜と重森三玲の庭、光明院(東福寺塔頭)

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          定番のごちそう・豚ヒレ肉のカレー焼き、ネギ嫌いの食卓(令和6年3月)

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          【第32章・飛び火】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

          第三十二章  飛び火  勅額火事から十日後、浜屋敷の御成書院。 「詮房、此度も駄目か。戦ではないが、予の初陣と言ってよかろう」 「お気持ちは重々。されど、上野寛永寺は将軍家の聖地。その焼ける様を画に残すなど不謹慎極まりなく・・・」 「分かった、皆まで申すな。吉之助、だそうだ。せっかく描いた下絵がまた無駄になったな」 「残念です」 「せめてお照に見せてやろう。しばらく預かるぞ」 「はっ」  吉之助が間部と共に御前を下がり廊下を歩いていると、近習が一人追いかけてきた。 「狩野

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          桜と石庭、龍安寺

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          【物語の現場032】不忍池の向こうは火の海、勅額火事の現場(写真)

          「狩野岑信」の第三十一章では、浜屋敷に帰還した吉之助が間部に報告する形で勅額火事の様子が語られました。  写真は、上野公園の清水観音堂の手前から不忍池を見下ろした景色(東京都台東区、2023.11.8撮影)。  寛永寺に到着した吉之助と竜之進は、すでに消火活動にかかっている各家に対し、主君の到着を伝えて歩きながら、この高台から火事の様子を見ます。  江戸時代には視界を遮る雑木林も高い建物もありません。かなり遠くまで見通せたことでしょう。そして、迫り来る火の勢いに恐怖したは

          【物語の現場032】不忍池の向こうは火の海、勅額火事の現場(写真)

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          花散りてなお名庭あり根来寺、お花見2024(遠征その2:和歌山県岩出市)

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