文系の論文の書き方 テーマ編

「君、論文はもう書けたのか?」

 先生の言葉に、私はうっと言葉に詰まった。探るような視線から思わず目をそらしてしまう。そんな私の態度から察したのだろう、先生はわざとらしくため息を吐いた。

「この時期になっても出せていないのは君くらいだぞ。卒業しないつもりか?」

「いえ、そんなことは……」

 私はますます俯いた。大学も内定が決まって卒業間近となれば気が緩んでしまうもので、友人たちと遊び惚けていたのだ。その時のツケが今、私の肩に現実として重くのしかかっている。

 卒業できなければ、せっかく取れた内定もなくなってしまう。希望していた職種だけに、このまま行けないのはあまりにも悲しい。

 くそぅ……どうして一緒に遊んでいたはずのあいつらは論文を書けているんだろう。いったい、いつ、そんな時間があったのか。

「どこまで進んだんだ?」

「うっ……えっと……」

 私は言いにくそうにおずおずと現実を言った。

「な、何について書くかすら、決まってないです……」

 私はその時に見た先生の表情を、たぶん一生忘れないだろう。普段は無表情な先生が、これほど呆れているのを見たのは初めてのことだった。彼は大きく嘆息して額に手を当てた。

「はあ……いいだろう。論文の書き方を教えてやる。覚悟しておけよ」

「……はい」

 先生の言葉に、私は頷くしかなかった。


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