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R-1グランプリ

ピン芸頂上決戦、R-1グランプリで、僕は優勝した。

実力というより、正直ウケは不十分だったが、消去法で優勝した。

しかし全て、僕の計算通りだったのである。

ウケが不十分なのも想定済み。

むしろ決勝のネタ2本に自信がなかったからこそ、この作戦を思いついたので、「良いネタが揃えられなかったことが勝因」、というパラドクスが起こったのだ。

リハーサルを終え、生放送の本番5分前。

セット裏でそわそわしているファイナリストたちの前に、スポンサーの社長が激励の挨拶にやってきた。

社長は楽しみにしてます頑張ってくださいというようなことを言った後、ケータリングにズラーッと並べてあるR-1ヨーグルトを、どうぞどうぞと1人ずつに配り出したのだ。

みんなその場でフタを開けグイと飲み干した。

僕も例外ではなかった。

が、

僕はR-1ヨーグルトを飲み干してない。

とお思いでしょうが、はたから見たらR-1ヨーグルトをグイと飲み干した大勢のうちの1人ではあるのだが、その実R-1ヨーグルトを1滴たりとも口にしてないのである。

遡ること40秒。

社長が激励の挨拶にやってきたタイミングで、僕はケータリングのテーブルに体を横付けした。

社長がケータリングのテーブルからR-1ヨーグルトを1つ取ってまず、テーブルに腰を密着している僕に渡した。

次に近い順にどんどん渡していく。

その隙に僕はテーブルの後ろ側に回り込み、社長から受け取ったR-1ヨーグルトをスッと陳列の後ろから置き戻した。

そうそうコンビニの飲み物の補充のように。

そして後ろポケットからあらかじめ忍ばせておいたR-1ヨーグルトを取り出し、フタを開け、飲み干したのである。

中身は、とんこつスープ。

もうお分かりいただけたでしょう。

僕はこれで優勝しました。

乳製品によって喉に膜が張った敗退者らは、最初から痰が絡んだままオチまで行っちゃったり本調子じゃない声に動揺して明らかにパフォーマンスが下がっていた。

ネットでは過去最低レベル、過去最低王者と叩かれている。

乳製品を愛するが故に会得していた知識なのだから、僕こそが「R-1王者」にふさわしい。

食べる方のR-1ヨーグルトを肴に、飲む方のR-1ヨーグルトで乾杯した。

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