「いやだからぁ、トンネルを作るから5日後に立ち退いてくださいって無茶ですよ」

　「ではわかりました、角砂糖を700万個にさらに300万個追加して1000万個！1000万個でどうでしょうか！？」

「万個万個うるさいよ！無理無理無理無理、これだけの巣を作るのにどれだけの家族がどれだけの日数をかけたと思ってんの、帰った帰った」

　「わかりました、ではほんとは良くないんですが、こちらでどうでしょう…」

「こ、これは、、マズイでしょ」

　「わたくしモグラの世界では無駄な殺生はしないとの決まりがございますが、こんなこともあろうかと、朝採れカマキリを工面させていただきました、どうか彼の死を無駄にせんといてくれませんか」

「じゅりゅ……帰ってくれ」

　「ヨダレは正直ですね、ほら、ご家族たちもヨダレを垂らして見ていますよ」

　　パパー

おなかすいたー

　　　それ食べれるのー

　食べたーい

パパ〜

　　　　　食べようよ〜

　　もらえるのそれ？

　　パパー

　　　　　パパー

パパ〜

　　パパー

　　　　　パパー

　
「はいはいはい！オッケオッケー！角砂糖1000万個とカマキリね！どうぞどうぞトンネルでもなんでも通してください！働きアリはまた働きますよ！」

　「あり、がとうございます」

「はいはいおもしろい」

　「ほなまたひょっこり顔出しますわ」

「おもしろいねおもしろいおもしろい」

仰向けのモグラの死体に蟻が群がっているのを、4才の僕が観察している。

視線を感じ顔を上げると、背高草の陰から茶色いカマキリがこちらを見ていた。