今もこうしてあるなかで VF4EVO

 VF4シリーズ最大の特徴と言えばカードシステムを挙げる人が多いのではないかと思います。

 戦績データの閲覧やキャラのカスタマイズなど、ネットと連動し生まれたコンテンツの数々はどれもそれまでにあった常識のはるか斜め上を行くものばかりでした。他プレイヤーと競い合った結果が数字だけでなく段位として目に見える形で残るというのもガチ勢好みではあったのでしょう。高段位者の同段戦は、それだけでもう一つのイベントのように見えました。
 今現在まで引き継がれているそれらが、バーチャだけでなく昨今の格ゲーの多くに影響を与え、シーン全体の礎となっているのだろうと思います。そういう意味でも革命的、革新的なシステムでした。

 そんな風に語られてきたであろうカードシステムではありますが、それは言わば格ゲーそのものについての変革であり、バーチャファイターとしての進化、変化とは厳密に言えるものではないと思います。しかし、だからといってVF4というゲームへと目を向けた時に、その内容の方にはそれまでのシリーズと比較して革命的と言えるだけの変化がなかったのかと問えば、そんなことはまったくありませんでした。
 VF4になって、以降の作品にも大きな影響を与えたとても重要なシステムが生まれました。成功避けがそれです。

 「相手が出した打撃の発生と避けがかち合った場合、その打撃を自動でかわしつつ、攻撃判定に対し無敵となる」

という文字にしてしまうと非常にシンプルな内容ですが、これが4以降のバーチャファイターの方向性を決定的にしたシステムとなりました。VF3までの避けは

「自キャラが相手キャラを中心軸に位置をずらす動きをして、その動きに相手の打撃が重なっていなければ当たらない」

というもので、つまり判定は画面の見た目通りであり、要するにバックダッシュで相手の技をスカすのと根本的に変わらないものだったように記憶しています。
 前後方向に判定をずらすダッシュと、横方向に判定をずらす避け、ということですね。なので攻撃回避の手段としてはかなりランダム性の強いものだったと思います。

 話をVF4の避けに戻します。打撃に対し無敵となるよう変更されたことにより、避けは防御手段として非常に強力なものとなると同時に、攻防におけるスタンダードな行動と位置付けられることになりました。
 打撃と投げの二択が攻撃の基本であるバーチャファイターにおいて、まず打撃が避けによって無効化されるようになったわけです。

そして、もう一方の選択肢である投げに対しては、複数投げ抜けがVF4で可能となりました。

 前作のVF3では俗に飛車角抜けと呼ばれていたレバーニュートラルの投げ+コマンド投げ一方向の2個だけが同時に投げ抜け可能でした。振り分けられるのがレバー入力の必要なコマンド投げのみであるため、投げを抜けるのに制約のないニュートラル投げは、使う意味がかなり薄かったのだろうと思います。
 VF4になってそれらの条件全てが撤廃され、入力受付時間中であればいくつでも投げ抜けを受け付けるようになりました。同時に入力方法自体も一部多少簡略化されたりして、感覚的にもわかりやすくなったと思います。

 これと前述の避けを組み合わせたテクニックこそが、VF4最大の特徴であり、またおもしろさの源だったと自分は考えています。

 不利な状況から避けで打撃を、同時に投げ抜けで投げを防いで相手のターンをしのぎきったら今度はこちらが攻勢に移り、という攻防の切り替えしをすさまじいスピードで何度も何度も繰り返す。一瞬たりとも目を離せない緊迫感と休まらない手元の緊張感によって集中力は高まり、その精度が上がっていくうちに自分が研ぎ澄まされていくような感覚がありました。
 実際のところは避けにもちゃんとデメリットがあったわけでそこを突く戦術を取られて、ということも当然あったのですが、じゃあ次はそれを読んで、そしてさらに読み返して、と繰り返していくうちに最初の行動に戻って、と読み合いがきちんと一周するように出来ていたために、明確な正解が存在していなかったのも長く遊べる理由になっていたのだろうと思います。

 避けの弱点と言うのも、方向によって避けられない技、あるいは完全に避けられない技というのがきちんと用意されているという至極真っ当なもので、じゃあどちらに避けるかもしくは避けないか、相手はどの打撃を出してくるか、というところまでが読み合いの材料となっていたのが3D格闘らしい仕上がりになっていたと思います。
 バーチャファイターの根幹である奥行きの要素が、改めて意義あるものとして攻防の基礎に関わるところから組み込まれ、新たな面白さとして完成していました。


 自分の中で、この部分がカードシステム以上に衝撃的なものでした。
 それくらいに、VF4で誕生した避け複数投げ抜けは中毒性のある遊びでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?