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【離職防止】入社後の活躍支援_タレントマネジメントツールの選び方

タレントマネジメント
ここ2,3年で急速に語られ始めた人事領域のパワーワードです。

採用活動が年々厳しくなり、新たな人材調達が難しい中、外部調達ではなく社内メンバーでのやりくりが事業運営の鍵になろうとしています。そういった中で、欧米では当たり前になっている『タレントマネジメント』という考え方が、大手企業を中心に急速に普及しはじめています。
そして、これからは中小企業で非常に大切な役割を担うといわれています。

その推進を担うテクノロジーツール、『タレントマネジメントツール』とはどういう役割なのか、なぜ必要なのか、自社導入する際に何をポイントに選べばいいのか、などについて解説していきます。


タレントマネジメントについて

タレントマネジメントとは何か

タレントマネジメントは1990年代後半に米国で生まれた用語で、さまざまな定義がありますが、「簡単にいうと、社員一人ひとりの持ち味や特性を見極め、最も能力を生かせる適所に配置して、会社の業績向上と社員のリテンションをどちらも実現させる統合的な取り組み」と、ネットで解説されていました。

全然簡単では無いのでわかりやすく翻訳しますと、ようは、「オンもオフも含めたその人の特技や持ち味を生かした配置をすることで、会社を元気にする」という事ではないかと思っています。

「田中さん、昔デザインをやってたらしいやん。この連絡チラシをきれいに作ってくれへんやろか!」(素質発掘)
「(完成を見て)おーすごいな!これでおいしいもんでも食べに行き!」(ほめる)
「公民館でパソコンレベルアップ教室があるから行くなら会社でお金出すで!」(レベルアップ)

という零細企業にありがちな光景を、人数がそれなりにいる会社でもちゃんとできるようにする仕掛け、じゃないかなと勝手に思っています。(違っていたらごめんなさい)

タレントマネジメントツールとは

タレントマネジメントツールとは、こういった人材に関する情報を一元的に集約・管理することで、企業の人材リソース(タレントパフォーマンス)を最大化させることのできるツールのことです。

主な機能は
・人事基本情報(社員名簿)の管理
・入社前情報(タレント情報(※))の管理
・目標/達成度合い/評価/面談履歴の管理
・組織図の可視化
・アンケート(追加情報の収集)機能

タレントマネジメントツールはピンからキリまで20種類くらいは存在しています。その中でも主要な機能をまとめると以下のようになります。

タレントマネジメントツールにできること

・人事情報・タレント情報(※)の一元化、データ化(クラウド化)
タレント情報とは「所属組織」「移動歴」「評価・業績」「組織へのエンゲージメント」といった入社後の情報に加えて、「学校時代の専攻」「保有資格」「特技」などの入社前から持っているそのそもの資質、いわゆるポテンシャル情報を指します。
こういった情報を一元化し、クラウドのシステムに保管しておく事ができます。

・人事部門業務の効率化(紙とハンコからの解放)
クラウド上のデータで管理することができますから、いちいちプリントアウトして、上長のハンコをもらってファイルに閉じてロッカーに片づける必要がなくなります。人事の仕事が圧倒的に効率化されます。

そのほか、「人事評価・能力判断の可視化」「組織コンディションのパトロール」などもリアルタイムで可能になり、社員ひとりひとりのことを、いちいちロッカーのファイルを開けることなくスマートフォンで持ち運びして確認することができるツールです。

タレントマネジメントが重要視され始めた背景

日本においてタレントマネジメントが急速に重要視され始めた理由は2つあります。

①終身雇用型組織の終焉
終身雇用型組織とは日本の伝統的な組織です。
定年退職まで働くことを前提にして、年齢・社歴に応じて重要度が上がり、育成も順番に長期的目線で行う仕組みです。記憶とさじ加減で対応できるので、データ管理・運用はさほど重要視されませんでした。

それが2000年以降になって離職・中途入社が盛んになり、社長や古株社員の記憶で組織のコントロールを行うことがだんだん難しくなりました。
終身雇用型組織が終焉を迎えることで、個人の情報を第三者が把握する必要が発生し始めたのです。

②多様化への対応
さらに2020年になって、外国からの働き手や複業ワーカーの活用、プロジェクト単位での業務運営、スポットワーカーとの業務シェアリング、期間限定出向による武者修行など働き方も多様になり、いままでの画一的な評価のありかたでは収まらなくなってきています。

中小企業にタレントマネジメントが必要な理由

いままでタレントマネジメントツールを導入するのは従業員が1,000人以上などの大企業が中心でした。ですが2019年以降は大手企業での導入が横ばいで中小企業の導入が伸びており、この先も伸びるといわれています。これからは中小企業にこそ重要だといわれているのですが、その理由はなぜでしょうか?

少し古い2018年のデータ。実際にはこれよりもSaaS型システムの導入規模は大きくなっています。

①そもそもタレントがマネジメントできていない

仮に把握していても古株社員の頭の中だけにあり、管理しているところは極小です。

②組織への「個人タレント力」の影響力が大きい

大手企業より、人数の少ない中小企業の方が一人一人のパフォーマンスアップが業績向上に大きく寄与します。高校野球では地方の名もない公立高校に少年野球のエースで4番が入ったことで甲子園にまで出てしまったという話もありますが、まさにそんな感じです。

③「組織の成長」を最大限にする必要性

資金が潤沢にない、採用力が強くない中小企業にとっても会社の維持・成長は必要です。人の成長は急にできなくても、そもそも持っているポテンシャルを最大限発揮できる環境を作るだけで大きく組織は成長します。

④「個人のモチベーション」「能力開発」を最大限にする必要性

「自分が活かされている」と思えばモチベーションが上がり、仕事への取り組みが積極的になります。能力開発にも前向きになり、成長を促進することができます。

⑤そもそも人事作業を行う人材・パワーが不足

働き方改革だから、というわけでもなく、限られた時間で最大限の業務量を行うためにも業務の効率化は必須。ツールを入れて楽になるところは楽をする必要があります。

タレントマネジメントツールの選び方

タレントマネジメントツールを選ぶとき、何に気をつければよいのでしょうか?基本的な比較のポイントを上げていきます。

比較ポイント① システムの仕様 SaaSかオンプレミスか

SaaSとはSoftware as a Serviceの略で、必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウェアもしくはその提供形態のことを指します。
一方のオンプレミスは、サーバやソフトウェアなどの情報システムを、使用者が管理している施設の構内に機器を設置して運用することをいいます。

そもそもオフィスシステムはオンプレミス型のサービスが中心。システムの管理環境を整える人員や予算が必要で、なので大手企業中心のサービスにならざるを得ない側面もありました。
最近はサーバーや管理者を置かずとも月額数万円で利用できるSaaS系サービスが主流で、それによって中小企業での利用が拡大しているとも言えます。

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比較ポイント② システムのメイン用途

タレントマネジメントをどんな用途で使いたいか、これを考えてツールを導入することが大切です。CMをしていて有名だからと言って導入したものの必要以上の用途があり手に余る状態でも導入した意味がありません。

たとえば「業務効率化を優先したい」か「細かい分析を行いたい」かなど。まずはどんな用途で利用するのかを考えて、その機能が備わっているかどうか、オーバースペックではないかどうかを考えてから選びましょう。その他に考えておくポイントは以下です。

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比較ポイント③ 今後の機能拡張イメージ

未来のことはわからないかもしれませんが、この先人数が急に増えたり、事業領域が拡張する可能性があるなら注意が必要です。

今は必要なくても途中でサービスを拡張することができるか、できないか。
できる場合、同じブランドで機能を拡張できる「プラットフォーム型」か、異なるサービスを接続する「連携型」か。そして連携型の場合はデータの連携が「API連携」か「CSV」での受け渡しかは、扱うスタッフの手数問題にもつながりますので(CSVの方が工数がかかります)確認が必要です。

比較ポイント④ 人事の使い勝手

機能上は「微差」だが、使い方で好みが分かれる部分でもあります。
操作する人事や入力者が「デモ操作」してから判断することは重要です。

そして大切なのは自社の制度とシステムが対応しているかどうか。
評価制度に対応しているか(たとえば、MBO、OKR、コンピテンシーなど)
フォーマット変更が可能か、変更は容易か、直観的でわかりやすいか
あと、評価点の計算を自動で行ってくれるかや評価の甘辛調整がしやすいかなども重要なポイントになります

代表的なサービス

最後に代表的なサービスを紹介します。

カオナビ:汎用的なツールで、標準的に機能が網羅されていることがメリット。ユーザーコミュニティがあり利用企業どうして事例共有や活用促進をすすめる事ができる。リクルートの資本が入っており、ポジション候補者をお勧めする人材採用とも直接連携している。

タレントパレット:カオナビとは対極のハイスペック型。分析機能も充実しており、AIとの連動で退職リスクの高い従業員の予兆を発見する機能までが搭載されている。初期費用も含めてそれなりに高いが、考えられるやりたいことがすべて実現できるといっても過言ではない。

Smart HR:労務管理、年末調整として導入している企業が多いサービスですが、タレントマネジメント領域にも進出しており、同じサービスでの機能拡張として利用が可能。

HR Brain:評価管理・人材育成のスタンダードなサービス。労務管理、タレントマネジメントとオプションサービスとして機能拡張できるプラットフォーム型。

ヒトマワリ:初期費用無料。管理だけなら月額2万円から利用できるもっともリーズナブルなサービス。分析や採用管理機能まで拡張するならば6万円でそれでもほぼ最安値。カスタマイズや多機能を求めない場合には利用価値が高い。

muuv:タレントマネジメントの進化系である「タレントマーケットプレイス」ツール。国内初の実装。管理から活用・育成へと人的資本経営を考えて使いこなしていくならば面白いハイエンド型。


終わりに

中小企業においては採用環境が厳しくなるこれからが本当の試練。採用力で大手には勝てないならば、現存スタッフのもてるポテンシャルを最大限引き出して戦っていくことが必要です。
何もない状態では考えられないので、まずは情報収集とストック、考えるヒントを作るのための土壌としてタレントマネジメントツールを入れるという方法もあるのではないかと思います。


おまけ

現在、投稿しているnoteの内容をまとめ、ITが苦手な人でも採用~離職防止までの活動を便利に進める入門書籍を作成しようと進めております。順不同の五月雨でどんどん投稿してまいりますので、応援をよろしくお願いいたします。

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