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食卓においしい縁起物を─幸せを呼ぶ「赤べこ押し寿司」の作り方

2021年の大晦日。丑年がもうすぐ終わろうというタイミングではありますが、和牛の美しい赤を「赤べこ」に見立てた押し寿司を考えてみました。赤べこは「幸運を運ぶ牛」と言われる縁起物なので、干支に関係なく厄を祓ってくれるはず。すご〜くおいしいのもポイントです。

歴史好き必見! 赤べこを生み出した名武将とは?

「赤べこ」とは、福島県会津若松市の郷土玩具。指先でちょんっとふれると首がゆらゆら揺れる、あれです。ゆるキャラの走りみたいな愛嬌のある風情をしていますが、じつは古くからある民芸品です。

赤べこは、1200年前、会津地方で起きた大地震で壊れた円蔵寺の虚空蔵堂の再建の時、聖材をはこび黙々と働いた赤毛の牛がお堂完成の日、石化して守り神となったと言われ、円蔵寺には今も『撫牛』として境内に牛の石像が祀られています。 そして、この赤牛にあやかり壮健を祈り、疫病除けとして、昔から子供が産まれると赤べこの張り子を贈る習慣が出来ました。その後、会津地方に天然痘が流行った時、赤べこを持っていた家族が疫病にかからなかったということから、今でも厄除け、縁起物のお守りとしてされています。

THE COVER NIPPON「会津の守り神 会津民芸張り子 赤ベコ」より

張り子で赤べこを表現するようになったきっかけを作った人。それは、会津若松の基礎を作った文武両道の名将・蒲生氏郷(がもう・うじさと)だといわれています。今から約400年前、京都から張り子職人を招いて藩士たちにその技法を伝え、殖産振興を奨励したのです。

そしてじつは、日本で牛肉を食すようになったのも蒲生氏郷がきっかけになったといわれています。

時を遡ること1590年、小田原攻めの際にキリシタン大名の高山右近が、利休七哲の茶人仲間である蒲生氏郷と細川忠興に牛肉を振る舞いました。その味にいたく感銘を受けた蒲生氏郷が、領地である近江、松坂、会津で食用の但馬牛を飼育したのが日本における「牛肉食」の起こりなのです。

ひとくち食べれば無病息災。ぜひとも和牛で召し上がれ

江戸時代、牛肉は養生薬として味噌漬・粕漬にして大名や将軍に献上されるような超高級品でしたが、今日では誰にでも手の届く食材になりました。

料理によっては安価な海外産も悪くはありませんが、この料理は和牛の赤身肉でしか出せない味わいです。

赤べこらしさを演出したかったので少量の白髪ネギとマヨネーズを使いましたが、実際に食してみると、思った以上にこのバランスが絶妙だったんです。ネギもマヨネーズも、試験的に量を増やしたりもしてみたものの、写真のようなバランスが最もおいしい仕上がりでした。「赤べこらしさ」は、見た目だけでなく味わいとしても正解だったようです★

ポイントは、なんといっても赤身肉の美しい「赤」。牛肉は表面さえ焼けば中は生で食べられるので、6面を焼いたあとは周りの部分を切り落としてから押し寿司にしています。

切り落とした部分は醤油でヅケにしてそのまま食べてもよいですし、余ったすし飯をラップで丸く握り、その上にたっぷりのせて手鞠寿司のようにして味わうのもおすすめです。

ひとくち食べれば無病息災。縁起のいい赤べこ押し寿司の完成です!

*赤べこ押し寿司レシピ*

材料(押し寿司1本分)
・和牛もも肉ブロック 100g程度
・すし飯 約1合分
・長ネギ(白い部分)、海苔、マヨネーズ 各少々
・醤油(食べるとき用) 適量

※すし酢は、2合分なら米酢大さじ2、砂糖大さじ2、塩小さじ2。
もしくはミツカンなど市販のすし酢を使用しましょう。

つくり方

下準備:
・ご飯を炊く
・長ネギを白髪ネギにしておく
・海苔は穴開けパンチなどを使って丸く切り抜き、7mm幅ほどの細長い紐状のものも用意しておく

1)ご飯が熱いうちにすし酢を加えて切るように混ぜ、すし飯をつくる
2)押し寿司の型をすし酢でしめらせ、すし飯をぎゅっと詰めておく
3)牛肉は表面(6面すべて)をフライパンで焼き、7mmほどの厚さに切る4)すし飯の上に牛肉をきれいに並べ、軽く押さえたら型からはずし、包丁をその都度湿らせながら切っていく
5)首の部分に紐状の海苔を巻き付け、目の部分にはマヨネーズと丸い海苔、鼻に海苔を飾り、側面にも海苔を貼る。赤べこの模様になるように白髪ネギを飾る
6)お皿に並べたら、醤油を上から適量たらしてめしあがれ!
※醤油は甘味のあるものがおすすめ。わが家では鹿児島の「母ゆずり」というおいしいお醤油を使っていますが、普通の醤油なら本みりんを加えるなど、お好みで調整を。

家族・友人の健康を祈願する「おいしい縁起物」として、ぜひぜひ作ってみてください。ホントにホントにおいしいですっ。


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