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長男の修学旅行の話 4

楽しい時間

翌日の早朝、N先生から再びメールが届いた。
何かあったかと不安になって開くと、写真が1枚。
寝ぐせバッチリ、目を腫らしながら照れたように笑っている長男だった。
そして
「友達と楽しそうにやっていますよ。」
とメッセージが添えられていた。
(珍しく?泣かなかった、私えらい!)

ずっと長男に友達ができたらなぁと願っていた。
長い間、もがき苦しんでいた長男。
とんでもない勇気を振り絞って修学旅行の参加を決めたんです。
もうそろそろ楽しい時間も与えてやってもらえませんか
と、
神様に祈るような気持ちでいた私にとって、
腫れぼったい目で笑っている長男の写真は、とてもありがたいものだった。

旅行中は様々な体験プログラムが組まれていて、
やりたいと思うものに参加できるようになっていた。
修学旅行のしおりの写真を撮っていたので、
今これをやっているんだなぁ・・・と思いを馳せたりもした。

修学旅行最後の夜、再びN先生からメールが届いた。
写真付き。
開いてみて吹き出した。
長男、N先生とのツーショット。
小柄だが超個性的、パワフル、ちょっとマフィアみたいなN先生の横に立つ長男は、少し困ったように笑っていた。

号泣してくれてありがとう

最終日。
数名の活動グループで、小樽の街を散策する時間がとられていた。
高2男子たちが連れ立って、オシャレな雰囲気のカフェに立ち寄り、スイーツをみんなで食べたらしい。
お土産物屋さんでは、私が頼んでいたチーズケーキを一発で探し当て、購入してくれた。
そして長男は一目惚れしたグラスを自分用に購入。
なんでそんな高いものを?と思ったが、長男にとっては大きな思い出の品になるのだから、それはそれで良かったのだろう。
友達とともに美味しいものを食べながら、彼らは小樽の街を謳歌していた。

途中、長男からLINEが送られてきた。
食べたスイーツとともに、シマエナガのぬいぐるみを買ったという報告(笑)
かわいい丸っこいぬいぐるみ。
我が家でオカメインコを飼い出してから鳥類に目がない長男は、これまた一目惚れで購入していた。
高2男子・・・まぁ良しとしようじゃないか。

夜、再び空港へ迎えに行く。
どんな話が聞けるだろう。
私は泣かずに聞けるのだろうか。

長男が降りてきた。
キャリーバックとともに、ビニール袋を振り回しながら歩いてくる。
私を見つけるとぺこっと頭を下げて近づいてきた。
「ただいま」
「おかえり!」
車に乗り込んだ長男、ビニール袋の中身を私に投げてきた。
シマエナガのぬいぐるみ・・・デカッ!!
「え?大きすぎん?野球のボールくらいかと思ってた」
バレーボールサイズの可愛いぬいぐるみが、長男とともに帰ってきた。

帰宅後、たくさんの土産話を聞いた。
北海道を出る空港で
「もうちょっとみんなとここにいたいな」
と思えるほどだった、と。

友達の名前とともに長男の口から語られる修学旅行。
結局というか、やっぱりというか、当然というか、
私はずっと泣いていた。

「よう泣くなぁ!!(笑)」

長男はキラキラした目で言った。

「あの時、号泣してくれてありがとう。行って良かった!」

・・・そりゃ泣くぜ。
こちらこそ、
とてつもない勇気を振り絞ってくれてありがとう。
友達の名前と、旅の思い出を伝えてくれてありがとう。
無事に帰ってきてくれてありがとう。


あとがき

今、学校になかなか行けない子供達が行事に参加することに対し、賛否が飛び交っているのを時々見かけます。
修学旅行や卒業式等に「行くか行かないか」の瀬戸際で、本記事を読まれている方もいらっしゃるかもしれません。

くれぐれも間違えないでいただきたいなと思うのは、
この記事は
「修学旅行にはなんとしても行くべき!」
とは全く意図していない
ということです。

私があの時号泣してしまったのは、浅はかなミスだと今でも思っています。
親と子は別の生き物。別人格。
親の気持ちを子に対して「泣く」という行為でぶつけてしまうのは、よろしくなかったなぁと思います。
(嬉し泣きは別ですよ ←自己擁護?)

長男はこの時期、ある意味ガチガチの「不登校」からは脱してはいましたが、まだ「不登校傾向」にあるのは間違いない状態でした。
高校に入学してからも、孤独な毎日を漂うように過ごしていました。
しかし長男の場合は、彼自身にエネルギーもそこそこ溜まってきていて、かつ本人が「変われるものなら変わりたい」と願っていたことと、私の号泣がたまたま合致したことで生まれた【奇跡】だったのだと思います。
そういう意味では、長男の「変わりたい」気持ちを汲み取った私が
「変わりたいと思っているなら、あと1歩進めばいいじゃないか!」
と思ったから泣けてしまった・・・という要素はあったのかもしれません。

一番大切なのは、やはり子供本人の【意志】【意思】です。
「不登校」と言っても、その子の年齢、性格はもちろん、学校に行けなくなって以降どの段階なのか等、様々な要因で状況は変わってきます。
正解は1つではありません。
子供自身の意思を負荷ないようにさりげなく確認しながら、なおかつ周囲とも協力しながら、進まれることを切に願います。

必要な方に届きますように・・・✨


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