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宮里さん、カレーリーフ本土に出荷販売してますね?

突然、このような問い合わせの電話が自宅に来ました。電話の主は那覇植物防疫事務所の方。
え?えっ??強い口調で確認されて、戸惑いながらも素直に「はい、確かに出荷しています。何か問題があるんですか?」と問いました。

「カレーリーフは、沖縄県以外の県に移動するのは検疫法に触れます。カレーリーフはミカン科の植物で、カンキツグリーニング病のウイルスを媒介するミカンキジラミが寄生している可能性があり、沖縄以外に沖縄からミカンキジラミが持ち出されないようにということになっています。今すぐ発送するのは止めて、今までの取引先の明細と、圃場の確認をさせてください。」

青天の霹靂。頭が真っ白になりました。カレーリーフを少ない量ながら.細々と発送するようになって7年ほどのことだったと思います。老舗の南インド料理店なども取引きしてもらい、インド料理食材店にも置いてもらうようにもなり始めた頃でした。
とりあえず、取引先に連絡をし、「植物防疫事務所から出荷先のデータを出せと言われていて、提出しますがもしかしたら確認の連絡が来るかもしれないので、ご迷惑をおかけします。当面の出荷は植物防疫事務所からOKが出ないと出来ないので、再開はめどが立たないので、併せてご迷惑をおかけします。」
取引先の方々も、びっくりされて、とりあえず理解を示してもらい、再会まで待つからと言ってくださいました。
私が出来ることは、検疫所の方の調査に素直に応じて、調査に協力する事しか出来ません。
せっかく、南インド料理に欠かせないカレーリーフを生で使ってもらえるようになってきたのに、10年近くやってきた事がもう出来なくなるのかなと、暗澹たる気持ちでした。

この連絡が来て6ヶ月ほど連絡が来た頃でしょうか、那覇植物防疫事務所の方から連絡が来て、「出荷毎、那覇の植物防疫事務所でカレーリーフの全量目視検査をして、ミカンキジラミがついていないことを確認し、合格したものだけを出荷する事が出来る。今までの分は始末書を書いてもらい、今後は検査を必ず受けるという誓約書を出してください。それでなら本土に出荷は可能です」ということになりました。

私の住む名護から那覇までは高速を使っても片道1時間30分ほどかかります。距離にして片道70キロ超えます。それを出荷毎ということは、毎週1度は訪れることになります。私にとっては検疫検査だけで1日仕事。かなりの手間になります。
しかも、この頃はまだカレーリーフだけの売り上げは、私の小遣いぐらいしか稼げていなく、将来にかけての見通しははっきりしてない頃でした。だから他の仕事もしていました。

ですが、検査を受けないと、出荷はできない。南インド料理が広がるためにという、怪しいおぢさんこと沼尻さんや、亡きガネーシュオーナーの石原さんの意志も潰える事になる。南インド料理関係の方々、沢山の方々が待ってる。ここでやめたら今までが無になる。将来や先行きは開けているとは言えない状態でしたが、すぐさま私は決断し、検疫検査を受ける事で出荷できるようにすると関係各所にお願いをし、那覇植物防疫事務所の方々が検疫検査体制を整えてくださいました。

以来、私のほぼ1年通して毎週1回から2回の検疫検査通いは、今もこれから先も続いていきます。
今では、異動のある職員の方よりも那覇植物防疫事務所に通って検査の内容を知ってるって、職員の方に笑われるほどです。植物の事や虫のことなど、よく質問したりしながら学ばせてもらう間柄にもなりました。
合同庁舎の守衛の方にも覚えていただき、見掛けなかったら宮里さん最近来てないの?と言われるほどです(苦笑)

あの時、検疫を全て受けるという選択をしなかったら、そんな私に付き合って、検疫検査を受けた沖縄産カレーリーフを使って南インド料理を広げる方々がいなかったら、今のようにカレーリーフはマスメディアでその名前を聞くまでにはなってなかったもなー。昨今のスパイスカレーブームにもつながらなかったかもなーと、僭越ながら思ってしまいます。
もちろん、今では本土でも沖縄でもカレーリーフを作って出してる方もたくさんいらっしゃいます。でも、南インド料理なんてまだ知られてなかった頃からカレーリーフに関わってきたのですから、ちょっとぐらいそう思ってもバチは当たらないでしょう。(笑)

ちなみに、なぜ植物防疫事務所から連絡来たのか。それは、カレーリーフが検疫法に違反して自由取引がされているとテレビで知って、他にいないかと調べたからでした。(他の農家さんがテレビに出てたらしい)
無知だったとはいえ、植物防疫事務所の方には大変ご迷惑をおかけしました。後で聞いたら、本土の取引先にも訪れて調査確認されていたそうです。

検疫検査中の様子

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