新元号jpg

新元号決まりましたね

 四月一日というと、新年度開始にエイプリルフールに、と、毎年話題の尽きない日であるはずですけど、今日はさすがに「新元号発表」に持っていかれた感がありましたねえ。

 菅官房長官が、一発目に新元号でフリップボケをかまして、「エイプリルフールでーす、テッテレー」で、国民が全員手を叩いて大爆笑、みたいな国だったら幸福度振り切ってんだろうなと思いますけども、そこはまあ(ちょっとお堅い)我が国ですから、粛々と発表がなされました。いつもポーカーフェイスな菅さんも、少し緊張した様子で、なんかかわいかったですね。

 そして、今年5月1日からの新元号は「令和」。
 万葉集からの引用ということで。

初春の令月にして、
気淑く風和ぎ、
梅は鏡前の粉を披き、
蘭は珮後の香を薫らす

 こっそり、僕の名前(薫)も入っててウフフです。

 僕は教養なし方面の物書きなので、万葉集も古今和歌集も真面目に読んだ経験ないですけど、梅の花の咲く、うららかな初春の空気感を歌った部分なのかなあ。なんだか、のどかで平和そうな、ちょっぴり肌寒いけど日差しが暖かい日が思い起こされて、お酒でも一杯どうよ、と言いたくなるような感じがします。

 でも、こういうのを決めるときって、必ず反対意見とか、気に入らない、みたいなことを言いだす人が一定数いるわけですよ。「高輪ゲートウェイ駅」なんか、署名運動までやっちゃってね。

 万人が十全で納得できる新元号(駅名もね)なんか、最初からあり得るわけがない。にもかかわらず、語感がよくて、国民に受け入れられ、意味がポジティブで、そして実用性も高い、という条件を満たす新語を作るって、めちゃくちゃプレッシャーだし、かなりの言語センスが必要だよなあ、と思うんですよ。そりゃ、学者さんとか(林先生とか)集められるわけですね。

 昼のテレビ番組で、選者に若者がいないのはなぜか? みたいなことが言われてたんですけど、こと元号については、若者の瑞々しい感性よりも、いぶし銀のセンスを活かすべきジャンルなんじゃないかな、と個人的には思います。たとえ同じ文字を選んだとしても、いろいろな人生経験をされてきた方が選んだほうが、より深みのようなものを感じるのですよね。

 案の定、SNS上では、命令されてる感じがする、とか、センスねえ、みたいなことを言う人が散見されるわけですけれども、「令和」は基本的には好評で、満足度で平均取ったら「85点」くらい取れているような印象を受けます。こういうのは、それくらいの水準の点数を取るとこに置くのが難しいんですよね、きっと。「高輪ゲートウェイ駅」だと65点くらいじゃないですかね。主観でしかないですけども。そういう意味では、今回の元号決定は「大仕事をそつなくやり遂げた」と言っても過言ではなく、選者の方には称賛を贈る他ないなあ、と、僕は思いました。

 「令和」という二文字の並びがどういう印象をもたらすか、何を意味するかは、いろいろな考え方があると思います。スゴイ好き! って人もいるでしょうし、なんかいいよね、わりといいよね、もあると思いますし、言語道断、受け入れがたい! というのもあるでしょう。でも、文字ってのはあくまでも「なにかを伝えるための記号」でしかなくて、そこに反映されるのは、見た人の気持ちなんじゃないかなと思います。

 この二文字を見たときに、自分がどう感じるのか。そしてそれが特にネガティブだったとしたら、いったいなぜなのか。きっと、文字の組み合わせとか語感だとかいう記号的な問題なのではなく、解釈する側の心の問題じゃないかな。ポジティブにとらえるのもネガティブにとらえるのも、自分の心次第。気に食わない、という人は、一度自分の胸に手を当てて、なぜなのかゆっくり考えてみるといいと思います。この世間の空気の中、それでもスーパーネガティブにしかとらえられないって、わりと異常事態だと思いますよ。精神的に。

 僕なんかは物書きなもので、文字や言葉を使って人に物語や気持ちを伝えなければいけない商売をやっています。自分の技量的な問題はもちろんありますけど、それでも、選んだ言葉が、受け取る人によって全く違う解釈になってしまうこともままあります。その難しさがなんとなく想像できるがゆえに、今回の元号については、よくぞ考えてくださいました、お疲れ様でございました、という気がしますね。僕としては、「令和」は「85点」の元号で、「85点であるからこそ至高」っていう感じがします。

 余談なのですが、「令和」という新元号を聞いた瞬間から、「平成」という言葉にワンパク感みたいなのを感じるようになってしまって、「平成の〇〇」みたいなのが、全部強烈なドタバタ現象的なものに思えて困っております。イメージで言うと「応仁」とか近いなあ。

 まあ確かに、平成期はバブル崩壊もありましたし、大きな震災もあって、安定した平和な時代って感じじゃなかったかもしれません。

 一か月後から始まる「令和」という時代は、どういう時代になるでしょうね。日本国民だけでなく、世界中の皆さんが、心穏やかに、平和に過ごせる時代になることを願ってやみません。そういう時代にしていけるように、微力ながら、僕も何かできることがあるといいなと思います。

 元号とまったく関係ないですけど、新刊文庫、よかったらぜひぜひ。

小説家。2012年「名も無き世界のエンドロール」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。仙台出身。ちくちくと小説を書いております。■お仕事のご依頼などこちら→ loudspirits-offer@yahoo.co.jp