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ガルビュール、白く温かい冬のスープ

先週のイベントでお出ししたスープは、フランスの南西部の郷土料理、ガルビュール。本来は豆やキャベツなどの野菜と、この地域名産の塩漬け豚や鴨のコンフィ、生ハムの骨などを使います。各家庭によって野菜もレシピも違う、素朴なおふくろの味。今回は少しアレンジして、塩鶏と豚の背脂で作りました。今日のような、雪の日にぴったりのスープです。

材料(つくりやすい量)

鶏もも肉 1枚 ※あらかじめ塩漬けにしておきます
ベーコン 50g
豚の背脂  30g

たまねぎ 1/2個
長ねぎ 1/3本 
にんにく 1片
エリンギ 1本
かぶ 1個
じゃがいも 1個
キャベツ 1/6個
カリフラワー 1/4個
白いんげん豆(戻したもの)200g
※野菜はお好みで何でもよいのですが、たまねぎ、キャベツ、豆は入るといいかなと思います。豆は今回、手亡という小サイズのものを使いました。ひよこ豆や大豆でもいいですが、大福豆、うずら豆、きんとき豆、レッドキドニーなど煮崩れるいんげん系の豆がおすすめです。あと、レンズ豆も案外よいです。

サラダ油、塩
ピメント・デスペラッド(一味唐辛子でも)適宜

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鶏肉は粗塩をまぶして3日ほど冷蔵庫に置いたものを、さっと水で洗い流して1cm角に切る。野菜は好みの大きさに切る。(今回はイベントのため少し小ぶりでした)ベーコン、豚の背脂も小さく切る。

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鍋にたまねぎ、長ねぎ、にんにく、ベーコンを入れ、油を回しかけて火にかける。色づかないよう気をつけつつ炒め、さらにエリンギ、キャベツ、カリフラワーの順に加えながら炒めていく。焦げ付きそうだったら水を少し加えながらやると安心して加熱できます。

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全体がしんなりとなじんだら鶏肉と白いんげんを加えて水を注いで強火に切り替え、塩大さじ1を入れ、出てきたアクをすくう。火を弱火に落として約30分煮る。じゃがいも、かぶ、豚の背脂を加えてさらに30分煮込む。

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味を見て、足りなければ塩、胡椒で補う。ピメント・デスペラッドを添える。

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ピメント・デスペラッドは、この地方の唐辛子で、マイルドな辛みと独特の香りがあります。ピリッとしたアクセントがあるとよいので、なければ胡椒や一味で代用してみてください。

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イベントのときはみなさんお腹を空かせていると思ったので、小さく切ったバゲットを添えました。みなさんにお出ししたときはまだ野菜の形がはっきり残っていましたが、下の写真は一晩寝かせて温め返した翌日のもの。このぐらい煮崩れるまで火を入れるのが美味しいように思います。

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さて、ここからはイベントに参加された方へ。イベントで私はこのスープを、スープドガルビュ、とご紹介し、白いスープの意味だと説明しました。その後、参加者の方から、白いスープだったらsoup blancheでは?という疑問が投げかけられ、確かに!と思い、あらためて調べてみました。

赤坂n『コム・ア・ラ・メゾン』というフランス南西部の料理を出すレストランがあります。このお店、“スープ・ド・ガルビュ”が看板メニューで、本当に美味しいのです。
シェフが若いころに修行したときの師匠がランド地方の出身で、その師匠にスープドガルビュは白い野菜を入れる白いスープだと教わったということで、このお店のスープドガルビュには白い野菜がいろいろ使われています。ただ、シェフは白い野菜を使うスープだとは言ったけれど、ガルビュ=白、と言ったわけではないですね。ここは私の勘違い。失礼しました。

スープ・ド・ガルビュという呼び方は他ではあまり聞かず、一般的には「ガルビュール」と呼ばれます。手元にある『ヨーロッパのスープ料理』(誠文堂新光社)によると、ガルビュールは、もともとスペイン国境近く、ピレネー山中のベアルヌで食べられていたスープのことだそうです。語源は“煮込み”を意味するスペイン語「ガルビアス garbias」。

豆とキャベツといった野菜と、豚肉や鴨、ガチョウなどの肉を使った煮込みで、農家の繁忙期に大量に作って長いこと食べるようなもの。家庭ごとに様々な味があります。日本の芋煮的なものと思っていただければよいのではないでしょうか。ランド地方では、毎年ガルビュールの大会が開かれるそうです。先ほど紹介したお店では、その記念プレートで料理を出してくれるのです。

そんな、遠い場所のスープを、日本でこうしてみなさんと分かち合うというのもなんだか面白いなと思います。寒い時期にぜひ作ってみてください。

読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。