ホールorカット?トマト缶はどっちがおいしいの?
パスタやトマト味の煮込み料理に欠かせない、トマトの水煮缶のお話です。
トマトには、生食に向くトマトと加熱しておいしいトマトがあります。トマト缶は、「加熱しておいしいトマト」を使いやすいよう水煮したものです。缶を開けたままでも食べられますが、通常はトマトソースや煮込みに使われます。
もともと日本では生食でトマトが定着した経緯があるため、トマトはいまだにサラダなど生で食べることが圧倒的です。加熱用のフレッシュトマトはあまり出回らない上、夏以外の季節にお目にかかることは、まずありません。
そんな日本でも、季節を問わず手軽に完熟の加熱用トマトを使うことができるトマト缶はとても便利です。しかも安いものなら1缶100円前後と安価ですから、家に常備しておきたい缶詰のひとつですよね。
ホールとカットは、味が違うの?
さて、このトマト水煮缶、売場に行くと「ホール」と「カット」があります。ふだんはどちらをお使いですか?
こちらでは、トマト缶を使ったスープのレシピをご紹介しています。トマトの水煮缶を使っています。
トマトがまるごと入ったホールトマト、ダイスカットされたカットトマト、このふたつは単なる形状の差だけかと思ったら、そうではないようなんです。
缶を見ると、描かれたトマトの絵が、ホールとカットで違うのがわかるでしょうか。
ホールトマトはちょっと細長いトマト、カットトマトは丸いトマトですよね。
必ずしもすべてのトマト缶がそうであるとは言い切れませんが、多くのトマト缶ではホールとカットで使われるトマトの種類が違います。
ホールトマトでは細長いサンマルツァーノ種、あるいはその改良種が使われています。イタリアを代表する品種で、加熱することによって美味しくなるトマトです。味が濃く、煮崩れやすく、トマトソースなどにするにはもってこいです。
一方、カットトマトには丸い形のトマトが使われます。こちらのトマトも改良種で、加熱に向いたトマトであることには変わりありません。
ただし、こちらはより果肉がしっかりしていて煮くずれしにくいのが特長です。そのことによって、カットしたトマトを水煮しても、ソースのようにどろどろになってしまわず、果肉がちゃんと残るようにしてあるわけです。
今回、トマト缶を販売している会社数社に使用品種を問い合わせてみたところ、多くはいま説明したような違いとなりました。(なかには、同じトマトですというメーカーもありました)
ちょっと食べ比べてみましょうか。
デルモンテの「完熟ホールトマト」と「完熟カットトマト」。デルモンテのホールトマトは「ローマ種(サンマルツァーノの改良種)」、カットトマトは「ラウンド種」とのことです。
缶を開けてみると、赤さはあまり変わりません。
ホールには細長いトマトが丸のまま、カットには細かくダイス状に刻んだトマトが入っています。
食べてみましょう。ホールの方がわずかに濃い、という気もしますが、はっきり違う!というまでの差はありません。甘さ、酸味も同程度です。
他のメーカーのものも、いくつか食べてみました。
こちらは、首都圏ではおなじみのカルディで購入。
ホールは結構しっかりした甘み。トマトの中に種が入っていて、その種を食べると強い酸味を感じます。
カットは、デルモンテのものよりも角が崩れている感じがします。味自体はホールよりややさっぱりしていましたが、種がないので酸味はあまり感じません。
他にも何メーカーか比べてみました。その結果、
「トマト自体はホールの方がやや甘く濃い。しかし種が多めに入る分、酸味も強い。カットはあっさりした味わいだが、種のが取り除かれているため酸味もおだやかである」
という印象を持ちました。(種は、カットでも多少は残っています)
トマトは別の品種でも、漬けてあるジュースは同じものを使っている、というメーカーもあるそうです。そうなると味は近づいてきます。
ホールとカットで、トマトスープの作り比べ!
さて、トマトそのものより、実際に使い比べるとどうなるかの方が多くの方にとって気になるところかと思います。
そこで、ホールトマトとカットトマトで同じレシピを作り比べてみました。使ったのはデルモンテのトマトです。
作るのはブロッコリーとトマトのスープ。ブロッコリー、トマト缶、塩、たっぷりのオリーブオイルを鍋に入れ、そこに水を加えて煮込むだけ。
ブロッコリー、塩、オイルなど他の素材は全く同じです。
火加減も揃えて、仲良く鍋で煮はじめます。
30分ほど煮込むと、ホールはかなり溶け込んでいるようです
カットトマトは十分に煮込まれても、果肉の「角」がまだ残っている状態です。
どちらもおいしそうにできました!
食べてみると、生で食べたときと同様、味自体にそれほど大きな違いはないようです。しいていえば、ホールのほうが甘み、酸味、香りともにわずかに強さがあるという印象でしょうか。カットの方が、あっさりしています。
ただ、カットトマトでもトマトのコクや甘みは十分に感じられます。
ホールトマトが煮崩れやすいという話でしたが、30分程度の煮込みでは、全く形がないというほどではありませんので、潰したトマトと切ったトマトの食感の差が一番の違いかなと思います。
つまり、私たちはどうしたらいいかというと
結論として、家庭でこの程度の量を使うにはどちらも遜色なく、スープについては同じように使ってもらってよいというのが、私の考えです。使用量や煮込み時間の規模が違うレストランでは、また違う結果になるかもしれません。
ただ、家でトマトスープやパスタソースを作ろうとしたとき、ホールがなくてカットトマトしかないから煮込み料理ができない!というほどの劇的な差にはならず、黙って出して家族が違いに気づくケースはほとんどないだろうということです。
カットトマトは形がそのまま残りやすいので、なめらかなトマトソースやトマトの形がなくなるぐらいまでじっくり煮込むスープやシチューなどには、ホールトマトがおすすめです。とはいえ、丸ごと煮たら残ります。
また、これはあるお店で教わったのですが、両方をブレンドする、というのもいいそうです。2つ買っても二百円とちょっと。ふたつの缶を開けて味くらべした後、ブレンドを楽しんでみてはどうでしょうか。
「切るのが面倒だし手も汚したくない」という方は、カットトマトを使うことをおすすめします。
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さて、いろいろ比べてみましたが、ホールとカットでどちらがおいしいということはなく、単なるタイプ違いという結論になりました。これを選べ!という歯切れの良い正解がなくて、ごめんなさい。
以上、スープラボからのレポートでした。
ブロッコリーとトマトのスープのレシピは、こちらにも掲載されています。
読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。