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コミュ障な自分が今日も震えるほど嫌い

赤羽駅の改札内に貢茶(ごんちゃ)がある。つい最近までタピオカブームだのなんだの言われていた。「ブームだから」飲んでる子もそりゃ周りにはいたけれど、私はタピオカが本当に美味しいから飲んでいただけだった。タピオカ屋を見つけては入るみたいなほど好きなわけではなかったけれど。
たまに友達に誘われて行くレベルだ。でも本当に美味しいと思っている。
貢茶はタピオカドリンク屋っぽいが、ただのお茶だけでも飲めるからいい。お茶屋さん、という感覚で私は貢茶を見ている。

今日も外へ出たくなったので外へ出ている。どこまで行くのかは決めていないがとりあえず電車に乗っていた。朝ごはんを食べていないのでなにか口にしたいと思いとりあえず赤羽で降りて貢茶に行くことにした。
私の初めての貢茶は実は韓国旅行中に立ち寄った貢茶だった。チョコミルクみたいなドリンクにタピオカを入れたものを飲んだのを覚えている。美味しいくせにお腹いっぱいになった。つまり超満足していた。
そこから実は隠れ貢茶ファンだったのだが、なにしろいつ見ても混んでいたり、特別近くに店舗がなかったりでそこまで貢茶に行く機会がなかった。隠れファンのくせに、知識なんてまるでないのだ。

だから今日、赤羽駅の貢茶の注文の列に並んだはいいものの、注文なんて決まっていなかった。あああっちのほうでメニュー調べてからまた並ぼうかなとも思ったけれど、わざわざそんなことをして店員に顔を覚えられるのも嫌で、手汗をかいているのも、少し焦っているのもバレないように列に並び続けた。
ついに順番が回ってきてしまって、店員と向き合い初めてメニューの文字列をザッと見る。いいわ、もう、なんでも。お茶でいいわ、もういいわ。と、店員の目を気にしつつ、メニューの中で目に入ったお茶をホットで頼む。タピオカも忘れずに。
声も笑顔も優しいお姉さんがレジを打ってくれていたので、目を合わせられないタイプの人間で本当に申し訳なかった。接客頑張ってくれているのにそれに相応しくない客でほんとすんません。
不安は消えない。ああ早く全てが終わってほしいと思いながら財布をまさぐってお金を取り出す。注文これで言うこと合ってるかなとか、お金ちゃんとあるかなとか、レジに来てから不安になってしまうから情けない。手汗をかいているので小銭もきっと湿っているだろう。ごめんなさいと思いながらトレーに小銭を並べる。
なんとか会計を済ませて、手汗を拭き取るためにカバンからハンカチを取り出してたら私のドリンクが完成したので呼ばれる。中のタピオカ熱いから気をつけてくれと店員に言われてちょっとびびりながらも受け取る。両手でドリンクを受け取り手を温めたいのではなく、落とすのが怖いから両手でがっしりとドリンクを掴んで店をあとにする。だから冷たい飲み物のときも、私はがっしりとドリンクを掴んで手が必要以上に冷える。

電車に乗り込んで、お腹が空いて限界だという自分の気持ちに思うように応えられないのは、タピオカが熱いと店員に言われてしまったからだ。私は猫舌なので、ストローで吸い込んだ瞬間タピオカが熱すぎてもし車内でタピオカをぶちまけてしまったらどうしよう?斜め左に座る人も私の左に座っている人もどっちもスーツだから、タピオカがくっついたらクリーニング代を請求されてしまう。
だめだ、と思いしばらく両手でがっしりとドリンクをホールドしたまま動けなくなる。まだ一時だ。これからなにしよう。

車内が空いてきたのでようやく私にもチャンスが訪れた。クリーニング代を請求してこなそうな同世代の若者しか近くにはいない。
ちょっと、ちょっとだけ吸い込んでみたら、意外といける。いい感じに冷めてくれたようだ。

だけど不味いなあこのお茶。自分の舌には合わない。今度からはメニューをちゃんと見て、自分の本当に飲みたいものを決めてから行かなきゃ。
コミュ障な自分のことが、今日も震えるほど嫌い。貢茶すら楽しめずに一人で電車に乗って外の景色を眺めている。

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