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お金と働き まとめ

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私たちのあいだを巡る「お金」や「働き」について書いた文章をまとめています。お金の原理は、からだの原理や整体の原理に深くつながってくると、そんなことを思って書き連ねています。
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記事一覧

贈与の霊がつなぐもの

マルセル・モースの『贈与論』の中に、ニュージーランドのマオリ族の人たちが「ハウ」と呼ぶ不思議な力についてのお話があります。 それはどんなものかと言うと、例えば自分が誰かから何かの贈り物をもらい、そしてそれをまた誰か別の人に贈ったとします。 しばらくして今度は逆に、贈り物をした相手から御礼として何か別の物を贈られたとしたら、それは自分が贈った贈り物の霊であり、それを「ハウ」と呼ぶのです。 そのハウは、自分が贈った物の霊であるのと同時に、自分が初めにもらった贈り物の霊でもあ

子どもから始まる愛と貨幣の運動

1.モノではなく流れを観る子ども政策で有名な明石市の元市長の泉房穂さんが、2022年に「子ども家庭庁」の設置に伴って参議院内閣委員会に参考人として呼ばれた際に、「お金がない時こそ、子どもにお金を使う」というような発言をしました。 これは分かるようで分からない、なかなか理解しづらいロジックかも知れませんが、非常に大切な考え方だと思います。 整体の創始者の野口晴哉は、自宅の井戸の水が涸れかけたとき、家族で集まって「しばらく水を節約しよう」と家族会議をしていたら、「そんなこと

子どもとお金の出会い方

1.ボク、そのお金はどうしたの?私たちがこの社会を生きていくときに、お金というものを抜きにして語ることはできません。 となると、子どもの教育ということを考えるときにも、「子どもがお金とどのように出会っていくのか」ということは、非常に大事な教育のテーマであると思うのです。 いったい子どもはお金とどのように出会っていくのが良いのでしょう? たとえば経済を語る言葉の中で「消費者」という言葉をよく耳にしますが、はたして消費者とはいったい何なんでしょうかね? お店に何かを買い

星の商人とかどうかしら

1.交換するための物語「お金」というものは、非常に便利なツールです。 農家と消防士と染織家と芸人と物理学者といった、あまりにもかけ離れた仕事をする者同士が、それぞれの働きを持ち寄って、それぞれが欲しいものを手に入れて生活していくことができるのは、お金という共通の度量衡があるからです。 もしお金が無ければ、私たちは自分が欲しいものを手に入れるために、毎回非常に苦労して交渉しなければならなくなることでしょう。 私たちの持っているさまざまな資産というのは、その背景に多様な価

お金をいろんな角度から考えたい

1.貸した金は返して欲しい?「銀行は貸した金を返して欲しいとは思っていない」と言ったら、みなさんどう思われますかね? 「何言ってんの?」と思われますかね? まあ、どういうことか聞いて下さい。単純な話です。 先ほど「貸した金を返して欲しいとは思っていない」と書きましたが、もう一言付け足すと「貸した金の利子だけ払い続けて欲しい」のです。 もうこれだけで「あ、そっか」と思う人は思うでしょう。 まあでも、もうちょっと説明しましょう。 たとえば銀行は、「1000万円貸して」と言

財源財源って言うけれど

いまの政府は何かと「財源財源」ってそればっかり言っていますが、どうもそれはつねに「増税」ということとセットで語られるようです。 「支出をする分は増税で賄う」ということは、「社会のお金の総量が変わらない」ということなんですけど、その点についてはどう考えているのでしょうね。 日本全体のお金の量が増えないのなら、それは当然、経済も基本的に成長しないと思うのですが…。 まあ、どこか滞って貯まってしまっているところから回収して、それを流れに戻していくというのなら、まだその考えは理

働くというコト/人のあいだを巡るモノ

1.財政に関する思考実験以前、「財政に関する思考実験」と題した記事を書きました。 詳しくはぜひ元記事を読んで考えていただきたいのですが、かいつまんでお話しすると、『大量のお金を稼ぐのに穴に放り込んでしまう人がいると、その国はお金が足りなくなるので、政府はドンドンお金を発行しなくてはならなくなって財政赤字が膨らみますが、はたしてその国は財政破綻するでしょうか?』という疑問でした。 それは「財政赤字は問題か?」という問題をシンプルに考えてみるための思考実験なのですが、とりあえ

贈与と返礼を巡るおでこの物語

1.悩める若者私が大学を卒業した頃はいわゆる就職氷河期と呼ばれた頃でしたが、私自身はいっさい就職活動をすることなく、もっと人間の勉強がしたいと思って、整体の師匠の下について人間のからだのことを勉強していました。 大学を卒業しても就職せずに何だかよく分からないことをやっている息子の姿に、母親もやきもきしていたことと思いますが、私の中ではそのまま会社に就職して働くということが、どうしても想像できなかったのです。 卒業から一、二年も経った頃、久しぶりに大学時代の仲間たちと集まろ

働く人がいなくなる日

「働く人がいなくなる」ということがどういうことなのか、とっても実感できるのが「元旦」というものですね。 町を歩いてもほとんどのお店は閉まっており、ご飯を食べたいと思っても、お買い物したいと思っても、切らした薬が欲しいと思っても、開いているお店を探すだけで一苦労な、そんな状態が唐突に訪れるのが元旦です。 貧乏人も、お金持ちも、うっかり何の用意もせずに迎えてしまうと、等しく困り果ててしまう、そんな1日です。 「働いてくれる人がいない」ということは、いくらお金を持っていても意

財政に関する思考実験

1.税は財源?以前、「国の財源はなんですか?」という記事を書きました。 その中で「税は財源ではない」ということを書きましたが、おそらく9割方の人は「いやいや何言ってるの?」という感想を抱かれたかと思います。 私もそうでしたが「税は財源である」という考えは、それくらい私たちの中に当たり前のこととして根付いていて、たいていの人は疑うどころか、実際どうなのか考えてみることもしないのではないかと思います。 なので、財政や財源に関する簡単な「思考実験」というものを考えてみました。

国の財源はなんですか?

1.税は財源ではないいきなりお金の話でなんですが、税金って国の財源だと思いますか? 世の中には「財源だ」「財源じゃない」、どちらの意見もありますが、管理通貨制が採用されている現在、私は「税は財源ではない」と思っています。 そんなこと考えたこともないかも知れませんが、そもそもの始まりを考えると、どうしてもそういう結論にならざるを得ないのです。 たとえば国が成立して、政府が手始めに道路でも整備しようと予算を組もうと思ったら、当然「財源はどうする?」という話になります。 そ