芋掘りロボット
地球上に男が生まれなくなってから長い年月が経った。子孫を生むことができず、とうとう人類はひとりの女を残し絶滅してしまった。
涙も枯れ果てた地球最後の女が荒廃したかつての都市をさまよっていると、空から何かきらきら光るものが降ってくるのが見えた。鉛筆のような形をした宇宙船だった。
宇宙船はぐんぐん近づいてきて、轟音をひびかせながら女の眼前に着陸した。女が呆気にとられていると宇宙船のハッチが開き、中から人影が現れた。
「うへえ、やっとこさ着陸できただ。うーん、なーんもねえな。辺鄙な星だんべ。ん、おめえ、もしかしてこの星のズン類だべか?」
現れたのは、人型をしているものの、金色のフレームがむき出しになったガイコツのようなロボットだった。女はがっかりした。そのロボットは、女が望むようなモノはとても持っていそうになかった。
「人類は?人はいるの?男の人は?」
わずかな希望を持って彼女は訪ねたが、無情にもロボットは首を横に振った。
「おらとこのズン類は全滅だ。3人いたが、みんなおっ死んでかっぴかっぴに干からびちまった」
「うそ!うそよ!」
女はロボットを押しのけて宇宙船の中へ強引に入っていった。しかしロボットの言ったことは本当だった。死んでからどれほどの時間が経ったのか、中にあったのは3体のミイラだけだった。
失意に包まれた女が宇宙船の外へ出ると、例のロボットが彼女へ歩み寄った。
「な、おらの言った通りだろ?そんなことより、ほれ、これを見てけれ」
ロボットは、両端がこぶしのような形をして中央に丸い突起が複数並んでいる白いモノを両手で抱えていた。女の目の色が変わった。
「立派なもんだろう?おらが開発した『絶対に腐らねえ芋』だ。宇宙船の中にズン類がいなくなって、誰もおらになんも用事を言いつけねえから暇で暇でしかたなくってよ。芋掘りロボットとしちゃやっぱ芋作んなきゃなんねえと思って、研究に研究を重ねてやっとこさできたのがこれだんべ」
「ちょうだい!!!!!」
女は狂人のような表情でロボットの手から芋を奪うと、申し訳程度に腰に巻いていたもはやボロきれのスカートと下着を剥ぎ取った。
「おお、びっくらこいた。よっぽど飢えてただなあ。恍惚の表情浮かべてうまそうに食ってるだ。そんなに喜んでもらえると芋掘りロボット冥利に尽きるだよ。いやあ、しかし宇宙は広えもんだ。おら、股ぐらに口がついてるズン類は初めて見ただよ。あーあー、もうあんな根元まで……」
(了)
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