大森靖子のワンマンライブに行った日の話

8月3日(土)

 久しぶりに家に人が来るのでいつもしないような掃除の仕方もしてみたり。昼前に家を出て隣町のカフェでランチ、エビフライ(三本)とサラダ、選べる主食(よもぎとレーズンの厚切りトーストにした)、ドリンクとミニというには随分立派な桃パフェで千三百円也。喫茶店文化の根付いた土地ならではのこの感じ、とても良い。駅まで送ってもらい本当に久々のひとり電車、そんなに混んでいないのに人との距離が気になる、近い。別れて何分も経っていないのに子と初めて長時間二人きりになる夫のことが気になり始めたので、ぐりこが会ったときに感想を言いたいと無茶を言うのでとりあえず読み始めた『夏物語』の続きを読みながらちょっとうとうとする。危うく降りられないところだった。地下鉄を乗り換えて栄、引っ越してきたばかりの頃SKE48を観に来て以来。大好きな「RESET」公演且つ知っているメンバーがたくさんいて楽しかった、私は妊婦だった。目的の三越に出るには何番出口に行けばいいのやら、黄色い掲示板をガン見したけど見つからず、ようやく最適な十六番出口を発見。両側にお店のある地下を抜けて三越へ、まだ時間があったのでボビイブラウンのカウンターでファンデーションのタッチアップついでに綺麗にしてもらう。チークとリップを選ぶ際にどういうイメージになりたいか訊かれ、大人可愛いとか夏っぽいとか言われたので夏っぽいで!って言ったら自分じゃ選ばないタイプのツヤツヤオレンジにしてもらって嬉しい。
 なんでわざわざ三越かというと、三年越しの念願かなって、というよりお盆帰省前ということで重い腰をようやく上げてアナスタシア初体験。いわゆる眉サロンです、東京はめちゃくちゃ予約取りづらいと聞いていたので一ヶ月前に電話したら普通に取れた。カウンセリングして形取っていらない毛をなんか熱いジェルみたいなの塗ってテープでビリっと取る、痛いのは痛いけど騒ぐほどではない。うっかり寝そうになる。いい感じに綺麗にしてもらって早足で三越を後にする。感動レベルで言えばボビイのファンデのほうが感動したかもしれない、綺麗にしてもらうためにしばらく伸ばしてたからやっと整えられた開放感が勝る(朝の支度はめっちゃ楽になった、後日談)。こちらのテレビでよくインタビューされてるクリスタル広場を通って一瞬感動したけど急いでるから。
 「一生大森靖子」の文字を背負った女の子の背中を追って乗った地下鉄をさらに乗り継いで改札を出たらちょうどぐりこが歩いてきた。私を迎えに来るついでに駅のロッカーに荷物を預けると言っていたのでてっきり私を待って私の荷物も入れて割り勘するもんだと思っていたら既に預けていてこれだからライブに行き慣れない人間はなどと文句を言いつつ先ほど発見したという可愛すぎるがま口のお店に、本当に可愛すぎて可愛いとやばいしか言えない。先日全然美味しくないタピオカを掴まされもうタピオカなど飲むものかと思っていたのだが昨日大須商店街、カフェ、とググっていたらめっちゃあるのタピオカ、懲りずに飲みたくなるのバカだけどぐりこといるし生ビールと名古屋メシ的な店もいいな、とか思うんだけど大須観音で祭りがあるせいかどこも混んでるしとにかく暑い。ライブハウス付近のイートインスペースがあるタピオカ屋でポルノグラフィティが強い話と米津と新海を十代で受け取れる今の子どもたちについて。
 開演十分前くらいに入場するともうこれで完成だろうというレベルで人が入っていて、それでも陣取った上手の入り口付近は段差の下であることもあって余裕あり。アイドル現場やバンドのライブと比べて圧倒的に女の子が多いので視界も良好。横に長いライブハウス。バンドセットの箱ライブとかいつぶりだろう?全然思い出せない。入った瞬間にバンアパの「WHEN YOU WISH UPON A STER」流れてて既にエモ(今調べたけどサブスクじゃ聴けないしバンアパ聴きたかったのに最近のしかなくて全然わかんない)。
 音が消え照明が消え一瞬の静寂と歓声、バンドメンバー登場、ああ、はじまる、と思った矢先、ドラムのピエール中野が「実はまだ大森が戻ってきていない」と、期待を裏切らないというかイメージ通りすぎる。そこから約三十分のサウンドチェックという名の楽器や役割紹介、サクライケンタ初めて本物見た。そこから「Over The Party」を歌える人を客から募る謎コーナー、最前付近で手を挙げたらしい女の子が登壇しノーリハ生バンドで熱唱。グッズで全身を固めみゆちゃんですと自ら名乗った女の子は音楽経験もないという、こういうときに手を挙げてしかもたぶんシラフで堂々とライブバージョン完コピで歌える素直さと若さが眩しい。同時にこの瞬間が彼女の人生の最高潮になって今まで蓋をしていた何者かになりたいマインドを叩き起こしている可能性について、この状況を見ている大勢の女の子たちの気持ちまで想う。こちら側へようこそ。ややあってようやく主役が登場するという。
 大森靖子のライブを観るのは三回目で、初めて観たのは三年前の下北沢サウクル、BiSH脱退が決まっていたハグ・ミィさんと歌った「ミッドナイト清純異性交遊」、ステージから降りての「呪いは水色」では感極まってめちゃくちゃ泣いてしまった。去年のTIFは「死神」がすごかった。子を産んだ後だったので「GIRL'S GIRL」と二曲が響く。そもそもいつから好きなのか思い返してみたけど全然思い出せなくて、でも「絶対少女」はCDで持ってるから多分そのへんからで一番聴いてるアルバム、曲名いちいち括弧で正しく書いていくと文章のグルーヴ感が死ぬんでここから適当にいくけど読みづらいかも、洗脳はちょうど人生超色々あったときのリリースで自傷的に聴いたり聴けなかったり。TOKYO BLACK HOLEもすごく好きで、でも真髄はこの初回版に付いていた産前一ヶ月の日記なのです。リリースしたときは出産とか全然遠い話で、ただ日記が読みたくて買ったのか初回版買うノリだったのか不明。全然読まないで放置されてたんだけど、いざ腹に子がいて産みますという段になって手に取る。大森さんの子とうちの子が誕生日ちょうど(二年と)二日違いで季節とか予定日までのあれこれとかがどんぴしゃでクソみたいな産前里帰り中何度も泣きながら読んだ。同じ日に同じ日付のところ読んでそのまま最後まで読んだり。同い歳の女の子がやってるいい音楽、というところを軽く超えてきたのがこの日記の存在、それ以来大森さんはファンとか自己投影というより勝手に戦友。大森さんが戦ってるのをこうやってたまに確認して私もがんばる的な。いやちょっと綺麗に言いすぎてるかも、自分がこうなれたかもしれない世界線として見ているところもあるのかな、今なりたいかどうかは別として。
 一曲目、ミッドナイト清純異性交遊。本当にここにいる、と思う。自身がアイドルグループをしている影響なのか、動きのキレが以前より増しているように見える。そのままIDOL SONG、後方声出しリーダー系おじさんがめちゃくちゃコールしてて楽しい。セトリに沿って全部書いてくのとか全然楽しくないし興味ないな、ライブレポとかレビューとか書ける人すごい。詳しいことはたぶんぐりこの日記に書いてあるのでそちらをどうぞ、まだ読んでないけど。この夏のナンバーワンソング、Re:Re:Loveが聴けて嬉しい、最初峯田の声録音?と思ったらサクライケンタが歌っててそれもめっちゃよかった。十代の自分を生かしてくれた人と同じところに立って一緒に歌うとなったとき、どんな曲を出せばいいかみたいなことを考えて考えた結果がこの曲と考えるともう愛。初めて聴いたとき最高すぎてぐりこにLINEしたら「好きな男と行く二次会のカラオケ感」と言われたのが腑に落ちすぎてもうそうとしか思えない。このカラオケの後、ラブホには行くけどセックスはしてない。その時は思ってなかったけど青春じゃんね。family nameのピアノアレンジ版もよすぎた。このまま書いててもよかったとかよすぎたとか最高しか言えないけど、死神もとてもよかった。アコースティックだと歌詞が聞き取りやすくて刺さりがち。大森さんはリハ後に道重さんの握手会回してきたら戻れなくなって遅刻したらしい。行動がオタク。困っていたらハロオタの人が会場まで連れてきてくれたのも最高。途中腰が痛すぎて辛い。二時間以上立ちっぱなしとかないからな最近。平賀さち枝との曲もとてもよかったし、アンコールのオリオン座は声出しリーダー系おじさんがでかい声で歌い出したしアンコールなのに大森さん捌けないでいるし。絶対彼女のコールアンドレスポンスは「ヤリマン・処女・ヤリチン・童貞」、aikoだと「男子・女子・メガネ・コンタクト」なのにこの差。ヤリチンはいつも不在らしい。たしかにヤリチン自称してる男に会ったことない。大声でレスポンスした童貞がステージに上げられエアギター。また人の人生が輝く瞬間に立ち会う。これが大森靖子の人との向き合い方で救い方で救われ方で愛、そんなワンマンでした。また会える日までお互い生き抜こうね。
 会場を出てぐりこと一番に話したことは「あれをやれる体力やばい」という話で、同い歳女子として立って観てるだけで腰痛いのに全身全霊で歌って踊って(しかも推しの握手会行ってるし)、そういう体力と気力あるからこそ成功してるんだよねという話になる。めっちゃ感動したみたいな話されたらどうしようかと思ってたけどそれはなくてよかった。そこからやっぱ毎日セックスしてる人は体力も気力もあるしパワフル説を唱えながら電車に揺られて帰る。表現に限定した話になったけど、メディアに出てるようなスーパーワーママも確かに毎日セックスしてそう。松田聖子が性欲強いらしいって私は全然知らなかったのにぐりこは定説だと思ってて面白い。
 初めてのロング(しかも夜)お留守番の子と夫はどうなっているかと心配していたが、意外にも子は熟睡、夫はこの世界の片隅にを観ながらお祭りで買ったというクリームソーダを飲んでいた。家も綺麗だった。シャワー浴びて手羽先とビールで乾杯、引き続き性欲と創作の話をしたりしつつ。夫は男の性欲は毛と比例するという新説を唱えていた。二時前頃に子が起きてきたのでうさちゃんピースを教えたりして就寝。

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