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2023年 新聞歌壇に載った歌まとめ

アットマークの書き方を教えてほしい、嘘、きみの書くそれを見たくて  /読売歌壇 俵選 過去形で僕を殴れよ焼肉の銀の箸など持ち替えながら  /読売歌壇 黒瀬選 一席 溶け込んで見えるだろうかスーツ着て生徒を誘導しているわれは /読売歌壇 俵選 都会とは季語のなりそこないだらけ 偽薬のような雲ひろがって /読売歌壇 黒瀬選 国家って感じないよね ファミレスで鶏むね肉にスプーンを刺す  /読売歌壇 俵選 便りには違いないよね スタンプのひとつひとつを愛でている春  /読

    • 2022年 新聞歌壇に載った歌まとめ

      滝行の広告京王線にあり他人(ひと)の望みといふ暗がりよ /読売歌壇 俵選 春だから夢が語源の中に持つ野原に取り残されてみたくて /読売歌壇 俵選 詩をつくるゆびをピアノに踊らせて君は明度を手離してゆく /読売歌壇 黒瀬選 過去はもう遠くへ引き返す波で卒業証書に春の結び目 /読売歌壇 俵選 友より低い点で受かつて陽に燃える陽と見つめ合ふ時間だつたよ /読売歌壇 黒瀬選一席 飛び立つものすべてを飛行機と呼べばゆたかな翼を持つスニーカー /読売歌壇 俵選 木下闇 誰かの

      • 連作「凪のはげしさ」

        ※プロジェクトセカイ「白石杏」をイメージした連作です 街 すべてを教えてくれた 抱えこむ膝は廃墟のぬくもりとなり 相棒のひびきが好きだ 才能がきみを天使に見せるとしても きわどい位置のほくろを教え合うようにきみと探した隠れミッキー 紐を抱きしめ直してあげるスニーカー そのときまでは隣にいたい 背中合わせで歌うことができなくなっても二つが高く跳ねるならいい! 伝説は燃えていますか ありますか いちばんつよいのは命だよ知ってる? 街 あたしを欺いていた 信じれば過去

        • 30首連作「ひとつながりの鈴」

          靴下がタイツに変わり革靴に余白うまれる冬のはじまり 色の無いほのおが揺れる理科室で滔々と性について話した 天からの飛び降り自殺をこころみた雪がつぎつぎ霙になった 安心感みたいな風がやってきて気が付きました異星のことに 空白も名を持つような真昼間にあなたがきゅっと水筒ひねる 積雪はあなたの殺気だと思う 気づかぬうちにひらいてる窓 スカートを認めたくない 黒板消しクリーナーから微粒子が飛ぶ 天使から天使が生まれないことは分かる どうにかコンビニへ行く 家という仕組

        2023年 新聞歌壇に載った歌まとめ

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        • 短歌連作
          8本
        • 歌集 感想
          0本
        • 一首評
          2本
        • からすまぁの短歌日記
          16本

        記事

          連作「どちらかが死ぬ」

          どちらかが死ぬ 駅だった 会いたくなくて会いたくてたくてきみから声がかかった すずやかにビジネススーツに身を包むきみに肩先揺らされている 陽の声を届けてくれることだけが変わらなかった どうしてばかり 宵闇に透けるパーカー 立ってれば寄せては返すラッシュのままに 深淵の目を振り払い自宅へと向かう自宅に向かうほかなく 探偵はその頃スタバで新作をふたくち飲んで雲間を見てた 通知音で分かってしまう かずかずのアプリひしめく雑感のなか きみからのLINEは端的だったから

          連作「どちらかが死ぬ」

          連作「場所になる」

          ※プロジェクトセカイ「鳳えむ」をイメージした連作です。 木から木へ空から空へ飛び移ることはたやすい 魔法を背負う 飴玉を降らせるような空想にこころを包ませながら眠った それははるか遠い約束 ありとあらゆる思いが走らせるコースター ワンダーが胸をつらぬく苦しみをわたしでさえも知らなくていい 思い出は場所に染み付く 観覧車 それはわたしも同じだったよ わたしがずっと見続けている夢のなかあなたから役割をもらって お兄さんお姉さん目覚めるような扉のこちら側にはいない

          連作「場所になる」

          推し歌人-青松輝さん

          ※この文章はヨミアウの企画に応募するために書かれたものであり、からすまぁの熱量のほんの一部である。 青松輝は本気だ。そして青松輝は必死だ。 必死なんて言うと、ネガキャンのように思われるかもしれない。いつからだろう、余裕のある態度が良く見られるようになったのは。インターネットの冷笑主義とまでは言わないにしても、「相手にするだけ無駄だ」というような、「関心がない」ということはより上位の存在の証だ、というような。そんな風潮をたまに感じる。少なくとも熱くなることを避けるような節

          推し歌人-青松輝さん

          連作「原色の憂鬱」

          (プロジェクトセカイの「東雲絵名」をイメージした連作です) 昼という闇に抱かれて裏返るなら裏返れわたしの瞼 わたしには春って無彩色だけど 歌詞のとおりにうずまきを描く 朝食の黄 許せない感情が彼にだけあるほんとうにある 自撮りにはいいねがついて緑色だらけの部屋で眠ったみたい 綺麗なものは描かない描けない描けないわ食卓にいる画家という父 銀の鍵ふかく引き抜くわざわいはどこからともなく差し込んでくる 目に母は映らないからはげしさの青でラフ画を際立たせてる くるいだ

          連作「原色の憂鬱」

          短歌50首「新銀河より」

          新銀河より  からすまぁ 一万年が経った。 人類は超進化を遂げた。不老長寿、超科学的能力の獲得。太陽系すべての惑星に居住可能となった。 第四次太陽系大戦をもって人類は一つの連邦となり、以降の数千年は平和であった。戦争を終わらせるためには、〈戦争 を終わらせるための戦争〉が必要なのかもしれない。 ところが数百年前に太陽系の近くに他の生命体が居住域を広げてきたことにより状況は一変した。彼ら—— 来訪者は人 間と同程度の知性を持ち、交流により友好的であることが分かっている。

          短歌50首「新銀河より」

          短歌25首「少女戦士としての春」(U25短歌選手権 予選通過作品)

          精霊がつよく額に降ってきて悪を倒せとわめく昼なか ハイウェイに立ち尽くしたる怪人が花冷えに目を閉じている 今 選ばれてビルの向こうをたゆたえば少女戦士としての春来る 単語帳カフェテラスにてひらくとき数値化できないこもれびを受く ミスのない簡単な語で書くべきで英作文は主張を見ない(らしい) うたかたの終点として合格はあって分厚い制服を着る 特別は虹の速度で当然に溶け込んでゆき鳩が飛び立つ 戦いはワンクールでは閉じなくてフリルの裾の焦げあとに凪 草木はなべて受動態

          短歌25首「少女戦士としての春」(U25短歌選手権 予選通過作品)

          一首評 歯磨きの漱ぎの水に少しある苦みのような懐疑のような/鬼頭孝幸

          歯磨きの漱ぎの水に少しある苦みのような懐疑のような/鬼頭孝幸 第三回超然文学賞優秀賞「米の花」 底知れない魔力を持っている歌だと思う。 この歌を読み進めていくと、四句までは「共感」だ。確かに歯磨き粉というのは独特な味で、飲んだことはないのに絶対に飲み込みたくないと感じる。食べ物の側では歯を磨きたくないと思う程だ。それが水と混ざって薄まったときの微妙さを、「少しある苦み」はよく表している。「歯磨きの漱ぎの水に」という説明も上手い。これだけで日常の細部の感覚を鋭敏に捉えた詩とし

          一首評 歯磨きの漱ぎの水に少しある苦みのような懐疑のような/鬼頭孝幸

          一首評 ときどきどこかへとてつもなく帰りたい眼科検査の気球への道/飯田有子

          ときどきどこかへとてつもなく帰りたい眼科検査の気球への道/飯田有子『林檎貫通式』 「眼科検査の気球への道」、眼科で白い紙の上に顎を置いて機械の中を片目で覗き込んだときに見えた、気球の浮かんだ景色。 初めてこの歌を読んだとき、私はこの景色が持つノスタルジーがすんなりと理解できた。すとん、と「帰りたい」に対して共感した。 「とてつもなく帰りたい」「どこか」は、故郷といった生半可なものではないだろう。言うなれば、生の起源のようなものだと思う。 ノスタルジーというのは、眼科検査の

          一首評 ときどきどこかへとてつもなく帰りたい眼科検査の気球への道/飯田有子

          【卒業記念企画】からすまぁの短歌総選挙

          インターネットのお陰で、言葉はより容易く誰かに届くようになった。だからこそ、活字となった言葉はより重く、より確かに残るのである。 ということで、『卒業記念ネプリ』を作りたいのです。 膨大な数の作品が溢れる現代では、常に今の、新しい作品が求められる。 過去の作品についてあれこれ触れられるのは、よほど有名な人ぐらい。 なので自分で掘り返しにいくことにしました。 企画概要 私が作りたいネプリは、 印刷した人がちょっと大事にしておきたい、と思えるような、短歌+イラストの、

          【卒業記念企画】からすまぁの短歌総選挙

          高校生歌人「一音乃遥」と青春について

          なんかどうしても書きたくなったので書きます。 一音乃遥のプロフィール高校生短歌界隈の前線に立つ一音乃であるが、彼の踏破した大会は数知れない。 その詳細は彼のTwitterのbioに書かれている(※現時点)ので、そちらを参考にしていただきたい。 https://mobile.twitter.com/haru_shiika?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor 最近の彼の動向を見ている中で、「青春」と

          高校生歌人「一音乃遥」と青春について

          2021年 新聞歌壇に載った歌まとめ

          公園の遊具は少しだけ伸びて夜の生き物たちを迎える /日経歌壇 穂村選(特選1席) 抱きしめて震える君を理科室で静かに夢みる真昼がありぬ /日経歌壇 穂村選(特選4席) 車内にてカバーもつけず罪と罰〈下〉を読むひとはあまり揺れない /読売歌壇 俵選 軒先に吊るす何かがないからだ秋がこんなに曖昧なのは /読売歌壇 俵選(評あり) 群青がultramarineであることを踏まえてわたしの哀しみはある /読売歌壇 俵選  缶切りが缶しかひらかないような綺麗な呪いとして思春期

          2021年 新聞歌壇に載った歌まとめ

          連作30首「ねじれの位置を背負う」

          短歌研究新人賞2020に応募した連作を今更ながら載せます。予選通過しました。 冬空に矢印を描きわたしから放たれていくベクトルひとつ 日直は「起立」と言って透明な虹が満たされていくのを待った パクチーを知らない人がパクチーを語れば伝説めくサラダあり 不完全な祈りのようにさんかくに折られているトイレットペーパー 同性愛を許す人 って椅子を取るゲームでそんなことを聞くなよ 先生という商品とすれ違うここはそういう廊下ですから 貴方の背からあふれてやまない温泉にあらゆる温

          連作30首「ねじれの位置を背負う」