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昔はよくポルノ聴いてたよって言わないで

どんなバンド・アーティスト好き?と聞かれたら必ず挙げるアーティストがいる。

ポルノグラフィティ 

私の周りだけかもしれないが、そう答えると必ず言われる言葉がある。出来れば言わないで欲しい。

「昔はよく聴いてたよ〜」 

今はどんなか知らないけど、とりあえず会話続ける為の優しさの答えの一つ。
わかる。 けど、 

過去のものみたいな扱いしないで。

今も格好良いよ、聴けよ。

と思ってしまう。

そんなポルノグラフィティは20周年を迎えた
この前、主人と晩酌をしながらWOWOWで20周年のドーム公演を観た。
新旧入り混じり、新規ファンも古参ファンも楽しめたライブだった。終盤に差し掛かり"Zombies are standing out"が始まった時、
「これはねぇポルノ第三期の名曲の一つ」
と私は伝えた。(見ている時に解説するマンはさぞウザかったろう)
しかしその直後に自分に突っ込んだ。

いや第三期ってなによ。 

酒が入っていたとはいえ、言ったからには証明しよう。
昔はよく聴いてた人々にも伝われ。
もし私が期を分け、ポルノを語るならこうだ。

第一期 1999年〜2003年

・ベースTama在籍まで
・本間さん×晴一さん歌詞は最強。
(プロデューサー×ギタリスト)

どういう最強の組み合わせかと言うと、
『耳馴染みの良いメロディ×ちょっとひねくれた歌詞』

代表曲

アポロ
みんながチェック入れてる限定の君の腕時計はデジタル仕様
それって僕のよりはやく進むって本当かい
ただ壊れてる

・ミュージックアワー
・メリッサ 

本間さんは最近いきものがかりのプロデュースもしている方。キーボーディストでもある。

どのアーティストでも誰にでも耳馴染みの良いアレンジをするスーパープロデューサーだと私は思う。最近はいきものがかりのプロデュースもしている。
晴一さんがどれくらいひねくれているかは、歌詞を見れば分かる。ちなみに村上春樹の作品を敬愛していた。 

デビュー後、タイアップが多かったこともあり多く認知される。
今ほどネット(SNS)が普及していない頃にタイアップが多かったのは本当に効果的だった。
やはりお茶の間に認知されるのはこれから活動していくうえで、良い起爆剤だ。
今もそうだが、一定のファンの高齢化に止まらず常に新規ファンが入り続けるのは、ファンにもポルノ自身も活性化されてとても良い。

第二期 2004年〜2011年

・tasuku(ギタリストでありプロデューサー)さん編曲スタート
("君は100%"のカップリング"煙"〜)
・2010年のツアー(ターゲット)ではアンコールの定番曲"ジレンマ"をセトリから外した

・ネオメロドラマティック
・ハネウマライダー 

10周年を迎え、楽曲毎にアレンジャーを変えるなどをし、積極的に変化を試みていた。試みの一つとしてファンの中で一番衝撃的だったのは、
アンコールの定番曲『ジレンマ』をセトリから外したことだろう。ライブが終わった直後、しばらく会場はざわついた。
観ていた私もよく覚えている。定番曲がなくなったショックは皆無だった。「飽きたのもあるかもしれないけど、新しいことに挑戦するんだ」と言葉がなくても肌で体感し、その姿勢に震えた。
むしろ中堅ポジションに胡座をかかずにいることが嬉しかった。

第三期 2012年〜現在

・ライブアレンジをよくするようになった。
・時代に順応しつつ、ポップ過ぎない突き抜けたロックな曲が増えた。

・瞬く星の下で
・THE DAY
・Zombies are standing out

本間さんプロデュースから離れ(第二期から少しずつ)本格的にtasukuさんアレンジが増え、最近のロックバンドとしてのポルノを確立した。プロデューサーがキーボーディストからギタリストに変わったからか、ロックの傾向が強くなった。私はとても好みだ。

もちろん、本来のポルノの良さである派手さを生かしながら。
サポートミュージシャンの変化も大きい。
年上の熟練のスタジオミュージシャンから、平均年齢を下げ同年代に近いミュージシャンと演奏するようになった。熟練の力を借りてポルノを演奏するという形から、より一層ひとつのバンドとして作り上げる感の強い演奏になった。
"THE DAY"のライブアレンジは、ポルノの2人がハードロック好きだったんだなと彷彿とさせるギターフレーズやシャウトが飛び出した。
以前、昭仁さんは「自分の声はロックじゃなくてポップなんだと少しずつわかりました」※2
と言っていたが、この時ばかりは日本一ロックな高音シャウトだった。

多様性

メンバー1人だけが作詞作曲をしていたら多分私はここまでハマらなかった。
お互いバランスを取ったアプローチをしている。そっちがそう作るならこうしよう、みたいなやりとりのおかげで多様な作品を楽しめることが出来る。

例えば作詞。とてもわかりやすい。
歌詞だけ見て誰が書いたかわかる。
晴一さんは技巧派。ひねくれているとも言う。でも絶対ロマンチスト

・今宵、月が見えずとも
旅人気取りでいたいくせに 迷い道回り道が嫌いで
雨風凌げる屋根の下で グーグル検索で世界を見る
・サウダージ
想いを紡いだ言葉まで、影を背負わすのならば
海の底で物言わぬ貝になりたい
誰にも邪魔をされずに、海に帰れたらいいのに
あなたをひっそりと思い出させて

昭仁さんは真っ直ぐ。比喩を使わないわけじゃないが「ああ今そういうこと考えてるんだな」と素直に書いてる印象。

・n.t.
今この胸から溢れ出す 情熱や憤りを
声高らかに吐き出せる そんな僕もそんな人間(ひと)もいいだろう

技巧派じゃないが故に、たまにめちゃくちゃ刺さる歌詞を書いた時が凄い。

・夕陽と星空と僕
君の形 僕の形 重ねてはみ出したものを
わかり合う事をきっと 愛とか恋と呼ぶはずなのに

途中まで勢いで書けて、2番から考えちゃった曲とか素直過ぎて好き。

・Mr.ジェロニモ
1サビ

今日はレフト インサイド 狙いをスタック
それは雌 I'm 雄 too many woman
三日月のHigher ディスコティック
むせる温和な恋 de hot leg dance
2サビ
そこにshe 現る!!多面な相 両の目止まる
He finds a new love 自分と同じ刹那の匂いを嗅ぎ取った Smell like a beast

「ポルノを完成させたら終わり」 

20周年を迎えるにあたり、振り返る系のコメントをすることが多くなった。
2つ印象に残っている言葉がある。
1つ目は上に書いたもの。※1
昨今、バンド活動の終了・メンバーの脱退などのニュースは途切れることはない。
そのニュースを見る度に、自分の好きなバンドにもその時が来たらどうしようと考える。
ショックで打ちひしがれながら、バンドの意思を素直に受け止められるだろうかと。
悔いのない応援が出来ているだろうかと。

俺と飲むとこんな話するぜ、などという会報の企画があるくらいのロマンチストでひねくれた晴一さんが簡単に終わらせるはずがない、と甘えていないか。

期待に応えるべく全力疾走し、高さも張りもある昭仁さんの声が永遠に聴けると思っていないか。

何度も閉店セールをするお店の様なやり方で、おすすめしたくないが**「いつか生で観てみたい、その内また聴いてみよう」を先延ばしにするのはもうやめた方が良い。 **

2つ目は

コンプレックスを持っていたこと。

昔は曲を自分達ではなくプロデューサーに作ってもらっていて太いレールに乗せてもらっていたことのコンプレックスがあったこと。
今ようやく自分達で作れるようになったこと。

これは必要なことだった。昔インディーズ時代の曲を聴いたことがあったが、売れるか?と聞かれれば難しいだろうなと答えざるを得ない感じだった。やはりポップでありロックで良い曲だけど、多数には刺さらなそうだった。 (もちろん格好良くはある)

コンプレックスだったとはいえ、そこでしっかり結果を出せるのは実力だし、その反動で出来た曲は私をずっと揺さぶり続けている。

・音のない森
見渡せばそこにいくつもの足跡
誰もが通り行く場所なんだろう
身を屈め泣いていた 音も無い この深い森に
怯えて耳を塞ぐと 確かな鼓動だけ聞こえた

そして優秀なチームのもとで様々な経験を経て力を授かった今、めちゃくちゃ凄い

ライブでは認知度のあるシングル曲をアレンジするようになったし、持ち曲の多さや新しいことへ挑戦する姿勢を考えると、セトリの流れも予想しにくくなった

引き出しの多さや知識的には色んなミュージシャンが欲しがると思う。
だから今最強のポルノを見てほしい。聴いてほしい。

ポルノはいつだってライブで「胸を張って行け!」と伝える。ポルノファンである我々を誇らしくしてくれる。
完成させて終わってしまったら寂しいけど、どんなふうに完成させるのかも見たい。
私は過程も結果も、どの瞬間いつだってポルノを見届けたい。 
だからどうだろう。今一度、観てみないか。聴いてみないか。

※1 ROCKIN' ON JAPAN 2018.1月号
※2 音楽と人 2019.8月号

CD代、ライブ代からのレポ費用にします。今のところ。