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1月14日 NO PROGRESS 稽古映像

稽古概要(担当:かれら)

1月13日の深夜、僕はNO PROGRESS のグループラインで、次の日の稽古で行うシーン、そして、俳優の3人にそれぞれ稽古場に入ってからのルールを加えた。まず、安瀬さんには、一定の時間以上、無言でいないこと。12日の稽古での安瀬さんは普段話している時と違って、言葉少ない感じだった。でも安瀬さんは、僕らが話している本筋とは全く違う角度の話を入れ込んでくるのが魅力だ。前回の稽古映像には入っていないが、読み合わせのときのしょぼくれた感じ、これが続くと良くないなと思ったのだった。そこで喋らなければならないという圧力は、「私」の強固な境界を破壊するための一つの試みになると思った。
ロビンには、12日に安瀬さんが作ってきたシーンをもう一度やってもらおうと思った(稽古映像なし)。zoomでの話し合いを直接的に使った安瀬さんのテクストは、本番には組み込めないなと思ったけど、ロビンは初回の稽古で少し恥じらいのようなものが見えたので、安瀬さんのテクストにある、ロビンが全力で歌うというのを、もう一度やってもらおうと思った。
山本さんには、「動きやすい格好で」と言った。前回の稽古ではなにかまだ身体を持て余している感じがあって、演技というよりも、全力でなにか動いたりダンスしたりして疲れた状態が欲しいと思った。

3人へのルールからも分かると思うけど、今回はなにか模倣するということを逸脱したいという思いが強い。もちろんこのルールが暴力的であることは百も承知だ。とはいえ、普段生活し、社会性を維持するこの理性的な「私」から解放されるために、演じているとき以外にも何か圧力をかけてみるというのは、一つの手立てかもなと思った。

14日、稽古場に入って準備運動している途中で、「プロの俳優ってカレラくんにとってどんなもの?」と聞かれた。僕は今回、意図的に演技経験の少ない(全くないわけではない)メンバーを集めていた。みんな演劇というよりも他に主として日々やっている仕事や別ジャンルの創作をしていて、そういうものを作品の内部に持ち込みたいと思っていた。
僕はどう答えたか覚えていないが、出る人たち(僕も含め)にそれぞれ固有の世界への質感(ごみ収集のロビンが見る街とおれが見る街は違う)を持ちこんだものを作りたく、そこでは演技の経験は邪魔かもしれないと思った。それに一番最初の座談会で言ったように、今回僕がしたいのは「知らないを使う」ということだった。

そういうことは安瀬さんにも共有されていると思う。でも1回目の稽古は、安瀬さんとしては、今後面白くなると思わなかったのだと思う。だからまだ引き返せるこのタイミングで、ちょっと待った!と言ったのだと思う。ということで話が始まって、3時間以上、話し合いだけでこの日は終わった。

今回はその映像を、3時間ほぼノーカットで配信しています。見るのは大変だと思うけど、しかしこういう進まないジリジリするものを公開することこそ、今回の企画の醍醐味と言っていいんじゃないかと思う。

この次の回から、稽古=作品はぐっと生き生きしだした。安瀬さんはいつも生命力を吹き込んでくれる。

稽古コメント(担当:安瀬)

照れずに言うと、人間はもっともっと素晴らしいって思った。それはどういうふうにすればそういうふうなことができるのかっていう方法はわからなくて、でもお互いの違いがわかるまで踏み込むことだっていうのが浮かんだ。きっと面倒くさいあんなことやこんなことが起こるだろうとも思った(めんどくさいことは嫌い)けど、浮かんだら躊躇しないでボール投げようと思った。ひとが円滑にいくためにはふつう整理が求められる、のだろう、でも整理してしまうと、伝わりやすい分こぼれ落ちるものが多い。というか、「僕が」浮かんだのではなくて、作品にとって必要で、作品が「僕を」使っているのではないかと少しイタいことも考えていたと思う。いつ誰の何が最後になるかわからないわけですし、実は。

日頃の生活はうんちみたいといえばうんちみたいだし、はぁ〜いいなぁ〜この時間いいなぁ〜っていう時間もときどきあるけど、そういう世界をギュッッてしてブワーって超えていく感じ。

頭で考えたことなんて軽々超えていく感じ、あきらめの近所。

稽古映像 1/14

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