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亀田の柿の種

私の両親は、あまり甘いものを食べない。たまに食べることはあっても、毎日食べることはない。だから、わが家(実家)にはお菓子が常備されているということがなかった。ある時、友達の家に遊びに行って、戸棚いっぱいにお菓子が入っている様子を見て、「なんだこれは!戸棚全部がお菓子だなんて、そんなことが有り得るのか?!ここは天国か?!」とおったまげた記憶がある。

そんなわが家にも、唯一常備されているお菓子があった。それは"亀田の柿の種"。これだけは、ほんとうにいつもあった。うちによく遊びに来ていた友達に「しょうこの家には柿の種しかないな」と言われたことがあるくらいだ。でも待てよ。柿の種はお菓子なのか?お菓子じゃなくておつまみだよな。酒のアテだよな。それを"唯一のお菓子"と認識して食べていた小学生の頃の私、一緒に食べていた友人、ドンマイ。

ともあれ、私は柿の種を食べて育った。大人になってからもよく食べた。そして、結婚した相手(夫)は新潟出身。これも長年、柿の種を食べ続けてきたことと、何か浅からぬご縁があるのかもしれない。いや、絶対ないだろ。
 
こどもが生まれてから、食に対していろいろと思うところがあり、添加物や農薬、放射能のことなどを気にして、できるだけオーガニックのものを選ぶ、いわゆる"自然派"(私自身、この表現が好きではないが)になった。それでも柿の種だけは食べ続けた。もちろん、食べる頻度は減ったけれど。

時代は進んで令和の今、私はロンドンにいる。ロンドンに来て間もなく1年になる。ロンドンに来て以来、一度も柿の種を食べていなかった。私人生において、こんなにも長い間、柿の種を食べなかったことはなかったのではないかと思う(バンコク駐在の頃は、さほど価格が高いわけではなかったのでたまに買って食べていた)。別に、柿の種がなけりゃ生きていけないとか、食べなければ禁断症状が出るとか、そんなことは全くない。全くないから、あえてイギリスで4ポンド(600円くらい)も出して買おうとは思わなかった。

しかし、先日、私は亀田の柿の種と偶然の再会を果たしてしまった。お友達の娘さんに本を貸したら、そのお礼にと言ってくださったのが、他でもない"亀田の柿の種"だった!!!F&Mの紅茶より、Rococoのチョコレートより(どちらもイギリスでは有名なハイソなお店)嬉しい!!!Nさんありがとう!!!

久しぶりに食べる亀田の柿の種、お供はもちろんビール。ビールのお供に柿の種、ではなく、柿の種のお供にビール。主役は柿の種。いざ、袋を開けると、懐かしい匂い。口に放り込むと、パリッとした食感、ピリッとした味、刺激を和らげるピーナッツ。嗚呼、そうそう、これこれ。これですよ。おかえり、柿の種。ただいま、柿の種。好きです、柿の種。亀田の柿の種は、間違いなく私のソウルフードである。