カリアゲしょうこ

自称・関係妄想家。 1女1男の母。 2020年12月からロンドン暮らし。 想いを言葉…

カリアゲしょうこ

自称・関係妄想家。 1女1男の母。 2020年12月からロンドン暮らし。 想いを言葉にすることが好き。 言葉にすることで見えるもの、見えないものを探りながら、肌ざわりを感じられる文章を綴っていけたらと思います。 いつからか、カリアゲがトレードマークに。

最近の記事

映画『The Zone of Interest(関心領域)』

昨日、いつもの映画館で映画を観た。『The Zone of Interest』は、アウシュビッツ収容所の壁を隔ててすぐ隣に住んでいる所長とその家族を描いた映画だったのだが、想像していた以上に恐ろしい作品だった。 100万人以上のユダヤ人が虐殺された収容所のすぐ横に、”普通の“家族の暮らしがあった。 その家族は、すぐ隣で起きている凄惨な行いが何であるかを知っているはずである(こどもたちがどこまで知っているのかまではわからないが)。しかし、そのことに対して、全くと言っていいほど

    • 娘と2人旅〜グラストンベリーでのリトリート③〜

      丘から下りるにあたり、「靴を脱いで裸足で下りようよ。昨日も裸足で芝生の上を歩いたら気持ちよかったでしょ」と娘に提案をした。しかし娘は「イヤ。今はまだ朝露で濡れているから冷たそうだし」と言うので「それがひんやりして気持ちいいんでしょうが。朝露とともに余計なケガレも流したらいいじゃない」と答えると「ただでさえ私の足は冷たいのに、これ以上冷やす必要ないし」とまた反論してきたので、「じゃあもういいよ。お母さんは裸足で下りるけどね!靴を入れるためにビニール袋もちゃんととっておいたもんね

      • 娘と2人旅〜グラストンベリーでのリトリート②〜

        翌朝、目が覚めたのは朝の4時半頃だった。カーテンの向こう側、窓の外もまだ暗いし、娘もまだ寝ているようだった。私はトイレに行くために起き上がり、廊下に出た。当然、廊下もトイレも真っ暗だったが、トイレで電気をつけて灯りを見てしまうと、それで目が冴えてしまいそうだと思ったので、暗い中で用を足した。そして部屋に戻り、もう一度目をつぶった。 次に目が覚めたのは、7時前だった。今度はカーテンの向こう側が明るくなっていた。私は7時半と8時にスマホのアラームをセットしていたのだが、そのどち

        • 娘と2人旅 〜グラストンベリーでのリトリート①〜

          この週末、娘と初めての母子2人旅をした。行先はイングランド南西部のグラストンベリーという田舎町。ロンドンからバスを2本乗り継いで約4時間の旅。 10:50にハマースミスのバスステーションから出発。といっても、バスは少し遅れてやってきたので、本当の出発時刻は11:05頃だった。 イギリスに来て初めて乗った長距離バスは思いのほか快適で、座席はきれいで、トイレ完備で(ただし使っていないのできれいかどうかは知らない)、空調もちょうどよく管理され、陽気で気さくなドライバーによる安全走行

        映画『The Zone of Interest(関心領域)』

          映画『オッペンハイマー』へのアンサー

          今月末から、日本でもようやく映画『オッペンハイマー』が公開される。 世界では昨年公開され各国で大ヒットしたにも関わらず、日本での上映が見送られたこと、今年に入ってゴールデングローブ賞、アカデミー賞などの名だたる映画賞を総なめにしたこともあり、日本公開に向けての注目度は否が応にも高まっているようだ。 私としても、できるだけ多くの人に、日本人に、この作品を観てほしいと願っている。 私自身は昨年7月に、ボランティアとして働いているロンドンの映画館で『オッペンハイマー』を観た。上映

          映画『オッペンハイマー』へのアンサー

          わが子を通して問い直す

          ミス日本2024のニュースをきっかけに、日本らしさとは、日本人とは、国籍とは、アイデンティティとは、ということについて、日々、考えてい続けている。しかしその答えは、当然のことだが簡単には出てこない。 1ヶ月前のnote記事で、私は以下のように書いた。 記事全文はこちら↓ つまり、このときの私の観点では、“日本国籍を持ち、日本語で思考し、日本人であると自認している椎野さんは日本人である”ということになる。この記事を書いたときには、素直にそう考えたのだけれども、息子を見てい

          わが子を通して問い直す

          ボブ・マーリーの死因と息子の日本語

          昨日、ボブ・マーリーの半生を描いた伝記映画「BOB MARLEY: ONE LOVE」を観た。 ボブ・マーリー、言わずと知れたレゲエの神様、ジャマイカのレジェンド。顔と名前、「One Love」くらいは見知っていたけれど、特に彼のファンだというわけではなかった。 なので、この映画を観て、初めて彼について知ることがたくさんあったーーーもちろん、伝記映画とはいえ、映画の中のできごと全てが事実ではないことを理解した上で。 私はてっきり、彼は銃で撃たれて亡くなったものと思っていた。し

          ボブ・マーリーの死因と息子の日本語

          建国記念の日に気がついた自己矛盾

          今日、日本は建国記念の日。初代天皇である神武天皇が橿原宮で即位し、これをもって、日本が建国されたとされる日である。 その神武天皇の即位から約2700年に渡って続いているとされている我が国日本、そして天皇家。世界最古の国であり、126代に渡り万世一系で続いてきた世界最長の皇室。歴史的実証のない神話の時代を差し引いたとしても単一王朝国家として1400年、100代続いている国。 「だから日本は他の国より優れた国なんだ!特別な国なんだ!」などと言いたい訳ではないが、まぁ特殊な国、sp

          建国記念の日に気がついた自己矛盾

          ロンドンの友人それぞれの見方

          先日のミス日本2024グランプリ受賞の椎野カロリーナさんが、不倫していたことを理由にグランプリを辞退したらしい…アホくさ…。 しかし、彼女が投げかけてくれた問いについて、私は考え続けている。日本人とは、日本らしさとは、そして国籍、民族、アイデンティティはどのように形成、認識されるのかということについての問いについて。 ここ最近会った日本人ではない友人たちに、ミス日本の話を伝え、それぞれの意見を聞いてみた。 私の理解力不足や、聞き間違いもあるかもしれないが、大方このようなこ

          ロンドンの友人それぞれの見方

          ミス日本2024に思うこと

          「ミス日本コンテスト」なるものがある。誰しも一度は聞いたことがあるだろう。 このコンテストは、第二次世界大戦後、衣食住の全てにおいて困窮していた日本に、アメリカの救援公認団体が食料や衣服の支援を行ったことに対して、感謝の意を伝えるために女性親善使節を送ることになり、その使節の選抜のために開催されたのが、その始まりだという。 いや、感謝の意を伝えるもなにも、日本が困窮するような状況に追い込んだのは、他でもないアメリカさんあなたではなかったか…と思わないではないが、今はそれはちょ

          ミス日本2024に思うこと

          "noise in the shadow" 友人の個展を訪ねて

          同郷で日本画家の友人が、ロンドンで初めての個展を開催中とのことで、昨日は日中に一人でふらりと、今日は夕方に家族と一緒に、2日続けてロンドン中心部にあるギャラリーを訪ねてきた。 "noise in the shadow" この個展のタイトルである。その言葉通り、ひとつひとつの作品から、静かに音が流れているのを感じた。風に煽られる和紙の音、筆と紙が擦れる音、顔料を溶かす音、飛び散る音、友人(画家)の息遣いや足音といったような、明確な旋律やハーモニーを持った音楽ではなく、純粋な空

          "noise in the shadow" 友人の個展を訪ねて

          ロンドンの家事情

          ロンドンに住んでいる日本人で、住環境に100%満足しているという人を聞いたことがない。みんな一様に、家の何かしらどこかしらに不満やトラブルを抱えつつも、それを受け入れて暮らさざるを得ないのが、ロンドンの住環境の現実なのだ。なぜ満足できないのかというと、日本とロンドンの住宅事情があまりにも違いすぎるから。 日本では、“築100年の古民家”というと珍しがられ、重宝されるが、こちらでは築100年はザラ、中には築200年以上なんてものもある。ロンドンは日本のような地震や台風などの天

          ロンドンの家事情

          今年のテーマ

          名前 なまえ name 数字 すうじ number 音楽 おんがく music 言葉 ことば word この4つが、今年の私のテーマとなる。そんなことが急に脳裏に浮かんできた。 今年のテーマ、というか、これらはどれも、この世界を構成する元素のようなものだから、今年だけ、私だけに限ったものではなく、宇宙における普遍なるテーマなのだろうけれど、そういうことに、私がようやく気がついたというか、意識を巡らせるようになった、ということだろう。何を今さらそんな当たり前のことを世紀の発

          誰かを想う心

          昨日の能登半島地震のニュースで心がざわついていたところに、羽田空港での飛行機炎上事故の一報が入り、頭が混乱した。なんで、どうして。そんな言葉が頭をぐるぐるしていた。新年早々、こんなことが立て続けに起こるだなんて、何かがおかしいんじゃないか。常に不安定でアンバランスな世界が、さらに平衡を欠いてしまったんじゃないか。そんな考えが脳内をじわじわと侵蝕していくのを感じながら、燃え上がる飛行機を映すスマホ画面を、しばらく暗澹たる気持ちで見つめていた。 今日は朝から、そんな風に重くどろ

          能登半島地震に思う

          新年早々、能登半島を中心に大きな地震が起き、今も余震が続き、日本海側では津波警報も発令されている。家族揃って新年を寿いでいた多くの人たちが、眠れぬ夜を過ごしたことだろう。亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災地の方々に少しでも早く日常が戻ることを願っている。 ロンドンに住んでいると、日本がいかに自然災害の多い国かということを身を持って感じる。というのは、こちらに住んで3年間、自然災害らしい災害に見舞われたことが一度もないからだ。私の住んでいる地域でたまたま何も起

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          2023年の振り返り

          「書」を書初めの一文字に選んだ2023年。“何も書いていない”、と言うほどでもないが、“これを書いた”と言えるほどのものもない。相変わらず中途半端なままの私だった1年。いつになったら変わるのだろう。ずっと変わらないままなんだろう。 そんな今年、ここロンドンで、ようやく“暮らしている”という感覚と、アクトン(住んでいる街)を“ローカル”だと言える感覚になれたことは、私にとって大きな変化だった。そういう感覚を持つことが出来るようになったのは、周りの人たちとの関わり合いによるもの

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