ダメになる会話「犯罪計画」

アニキ「むーう、こりゃもうダメだな。」

サブ「アニキ、何がダメなんですか?」

アニキ「なんというか、何もかもダメだ。」

サブ「そんなにダメですか。」

アニキ「いい大人が二人もいて、貯金は無ぇ、仕事は無ぇ、食うもんも無けりゃオンナもいねえし頼れる身寄りも無ぇときた。」

サブ「ははは、こりゃお笑いだ。」

アニキ「アホか。笑ってる場合か、俺とお前の事だぞ。」

サブ「あぁ、そういえばそうですね。」

アニキ「俺は口より先に手がでちまって仕事についても続かねえ」

サブ「アニキはケンカっぱやいもんね!」

アニキ「お前ときたら売り場に並べるケーキを全部一口づつつまみ食いしてから並べるバカヤロウときた。」

サブ「採用から15分でクビになっちゃった。」

アニキ「当たり前だバカ!こうなったらもうアレしかねぇな。」

サブ「ええー!いやだいやだ!」

アニキ「まだ何にも言ってねえだろ?何がいやなんだ?」

サブ「アニキと心中なんてやだよう。せめて吉木りさとしたかった。」

アニキ「バカヤロウ、誰がお前と心中なんかするか!」

サブ「なんだ違うのか。よかった。」

アニキ「あと吉木りさがお前と心中してくれるわけねぇだろ、なにがせめてだ図々しい。」

サブ「誠心誠意お願いしたらなんとか。」

アニキ「全くどこまでおめでたいんだか。いいか?金目の物を盗むんだよ。俺たちゃ無一文だが、あるトコにはたっぷりあるんだ。」

サブ「するってぇと、銀行強盗ですかい?」

アニキ「まてまて、確かに銀行にゃうなるほど金があるだろうが、それだけに警備が厳重だ。俺たちがノコノコ行ったって捕まるのがオチだ。」

サブ「じゃあ、金持ちの家を襲いますか?」

アニキ「それだって同じよ。金持ちは泥棒対策だってしっかりしてらぁ。」

サブ「うーん、なら、コンビニ強盗?」

アニキ「ニュースなんかで見るだろ?ああいうところのレジには最低限の金しか置いてないんだよ。強盗は重罪なんだぞ?数万円と引き換えじゃあワリにあわねぇ。」

サブ「ええーと、そうすると、普通のサラリーマン家庭とか?」

アニキ「いい線だ。だが空き巣は下調べに時間がかかる。家に入ったら奥さん子供、同居の年寄りなんぞがゾロゾロいたんじゃ面倒だ。」

サブ「うう~ん、もう思いつかないや。」

アニキ「狙い目は一人暮らしのくせに部屋に金庫を置いてるような奴だ。一人暮らしならそいつが留守の時を狙えばいいからな。」

サブ「なんだ!まかせてください、そんなら俺、ばっちり条件に合う家を知ってますぜ!」

アニキ「なに?!本当か?」

サブ「ええ、しかもすぐ近くです。」

アニキ「そんな好条件逃す手はねぇ、すぐいくぞ!」

サブ「ここですぜ、アニキ!」

アニキ「なんだかパッとしねえアパートだが、家賃が安い分貯金に回してそうだな。さて、なんとかして玄関の鍵を…」

サブ「鍵ならあいてますぜ?」

アニキ「玄関に鍵もかけてねのか?不用心だなぁ、よし、お前はそこで人がこねえか見張ってろ。」

サブ「見張りですかい?ガッテン承知の助。」

アニキ「…お前はいつの生まれなんだ。まあいいや、おじゃましますよっと。うわ!きったねぇ部屋だな!」

サブ「アニキ、声が大きいっす!」

アニキ「うわー!『午後の紅茶』が上が透明な水、下が茶色い水に分離してる!何年放置してたらこんなことになるんだ!?」

サブ「三年くらいじゃないですかね。」

アニキ「どんだけ無精してたらこんな事になるんだよ。怖え…。しかしやたら雑誌が散らばってるな。『ヤンジャン』に『漫画ゴラク』、『ちゃお』に『Newton』に『季刊コンクリート』?人物像が全くわからねぇ!」

サブ「アニキ、俺まだ見てたほうがいいの?」

アニキ「当たり前だ!見張りが途中でやめてどうする!ええと金庫金庫と、おおっ!?えらく立派な金庫が置いてあるぞ。」

サブ「アニキー、俺飽きてきちゃった。」

アニキ「もうちょっと我慢しろ!思ってたよりデカい金庫だ。これじゃ持ち出せねぇ。貴重品はこの中だろうになあ!どっかに番号メモした手帳でも置いてねえか?」

サブ「あ!アニキ!誰か階段を上がってきますぜ?」

アニキ「クソ!金庫の番号が分からねえ!」

サブ「番号なら7763だよー!」

アニキ「なに?!あ!開いた!本当に開いた!あーっ!でも空っぽじゃねえかっ!チクショウ!しょうがねえ、逃げろーっ!」

サブ「え?逃げるの?」

アニキ「なんでもいいから早く逃げろバカーーーーー!」

サブ「はぁ~~~~~~~い」

アニキ「ふう~、ここまでくれば大丈夫だろ。」

サブ「はぁ~~、疲れた。」

アニキ「それにしても拍子抜けもいいとこだ。あんな立派な金庫を置いといて中身がカラとはなあ!ところでお前、なんで金庫の番号知ってたんだ?」

サブ「そりゃあ、あそこは俺ん家ですから。」

アニキ「………… え?」

-END-


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