ダメになる会話「新年のご挨拶」

学生A「おー、あけましておめでとう。」

学生B「おまえもか!」

学生A「え?なにが?」

学生B「まったく!どいつもこいつも!」

学生A「なんだ?何を怒ってるんだ?」

学生B「口をひらけば『あけましておめでとう』って!」

学生A「え?そこ?そこに怒ってんの?」

学生B「今朝から会うやつ会うやつ!親兄弟に親戚一同!近隣住民!子々孫々!先祖代々がそろいもそろって!なんの儀式だ!」

学生A「いや、おまえ何年日本人やってんだよ、正月の挨拶といえば『あけましておめでとう』だろ。あとお前すごいたくさんの人に会ってるな。」

学生B「お前こそ、この歳になるまで毎年毎年同じフレーズを飽きずに懲りずに使っている事を疑問に思わんのか!?」

学生A「そこに疑問を持ったことがないし持とうと思ったことさえないわ。」

学生B「もういい!もう十分だ!日本人は『あけましておめでとう』を酷使しすぎだ!」

学生A「ごめん、言ってる意味がさっぱりわかんねえ。」

学生B「だからあたらしい新年の挨拶を考える事にした!」

学生A「…そうか、がんばれ。じゃあな。」

学生B「お前もやるに決まってるだろうがーっ!」

学生A「なんで新年早々そんな無駄な事に時間と労力を使わにゃならんのだ!」

学生B「なにが無駄なことか!いいか?ここで考えた新フレーズが国民全員に行き渡れば、来年からは全日本人が我らの考えた挨拶を使うのだぞ!痛快じゃないか!」

学生A「その未来予想図にたどりつける気が全くしない。それで?候補とかあるのか?」

学生B「まず第1の候補!『あけましてニューイヤー!』」

学生A「くっ…かなりハードルを下げてたつもりなのに、それを大幅に下回ってくるとはな。ある意味すげえわ。」

学生B「気に入らんか?」

学生A「気に入るもなにも、『あけましておめでとう』と『ハッピーニューイヤー』を切り貼りしただけじゃねえか。新しくもなきゃ意味もわからん。」

学生B「では次!『1月がキターーーー!』これは勢いがあっていいだろ?」

学生A「新年を祝う感じやおめでたい感じがまったくない。ただの報告だ。」

学生B「祝う感じかー、じゃあ『また西暦1ポイントゲットでございますね』なんか得した気分だろ?」

学生A「お前の中で西暦はどういう扱いなんだ。あのな、新年の挨拶ってのはお互いに『無事に新しい年を迎えられましたね、喜ばしいことですね』という気持ちをさり気なく伝えられるような、奥ゆかしい心づかいのもとに受け継がれてるんだ。そういう和の心をフィーチャーしないと日本人には受け入れられんぞ。」

学生B「ぐはっ!至極まっとうな指摘!」

学生A「そう簡単に変わりのフレーズなんか出てこないだろ?」

学生B「いや!まだあきらめんぞ。新しい新年の挨拶考案は先祖代々から受け継いだ我が家の使命!」

学生A「お前の家にそんな重要な使命がたくされるわけねえだろ。」

学生B「これはどうだ!『どうもオレと幼馴染みは年があけたら結婚させられるらしい』」

学生A「どこのライトノベルだ。」

学生B「『新年だから特別にあんたと初詣にいってあげてもいいわ』」

学生A「ツンデレか。」

学生B「『オレ、新年がきたら故郷に帰って結婚するんだ』」

学生A「映画で死ぬやつのセリフか」

学生B「『オレは正月が大好きだああああ!』」

学生A「…そうか良かったな。」

学生B「よし、これにしよう!」

学生A「ええええ…。まあ、お前がそれを使いたいならそうするがいい。お前以外の日本人は絶対に使わないだろうが。」

学生B「あ、そういえばまだ言ってなかったな。」

学生A「何を?」

学生B「あけましておめでとう。」

学生A「そっち使うんかい!!」

-END-


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