ダメになる会話「そそっかしい人」

学生B:「おい!おーい!たいへんだ、たいへんだー!」

学生A:「なんだなんだ、相変わらずせわしないな。」

学生B:「これが落ち着いていられるか!」

学生A:「いったい何があったんだ?」

学生B:「こっ! こっ! こっ!」

学生A:「コッコ?ニワトリがどうかしたか?」

学生B:「ころっ! ころっ!」

学生A:「コロコロ?卵か?ニワトリの卵がどうした?」

学生B:「殺しちまったんだよ!」

学生A:「そうか、ニワトリが卵を殺したか。そりゃあ卵も災難だったな。ゆでタマゴだったのかい?それとも生?」

学生B:「何の話だよ!卵の話じゃない!殺しちゃったんだよ!人殺し!」

学生A:「えぇ?いつもそそっかしくて失敗ばかりしてるとは思ってたが、とうとう人を殺しちまったってのか?」

学生B:「ど…ど…どうやらそうらしいんだよ!」

学生A:「そうらしいってのはなんだ?はっきりしないのか?」

学生B:「わかんねぇ。俺も死ぬところを見たわけじゃないし。」

学生A:「だからお前はそそっかしいっていうんだ。相手が死んだかどうかも確認もせずに大騒ぎしてどうする。」

学生B:「だって!急にウンともスンとも言わなくなったんだ!間違いねえよ!死んじゃったんだよ!」

学生A:「穏やかじゃないなぁ。そんだけはっきり言い切るってことはアレか?首から上をバッサリやったとか?恐ろしいねぇ。」

学生B:「バカ野郎!そんな事するわけねぇだろ!相手はクミコちゃんだぞ?そんな恐ろしい事出来るわけねぇだろ!」

学生A:「なに?!お前、クミコちゃんを殺しちゃったっていうのか?!」

学生B:「どうもそうらしいんだよ…」

学生A:「なんでそんな事になったんだ?お前、今年中にはクミコちゃんに告白するんだってはりきってたじゃないか?」

学生B:「わかんねぇ。俺たち、ここのところはずっといい感じだったんだよ…」

学生A:「そうなのか?わからんもんだな。お前とクミコちゃんが話してるとこも見た事ないんだが。」

学生B:「ずいぶん頑張ったんだよ。彼女が登校するときはずっと後ろをついていって…」

学生A:「ストーカーみたいだな。」

学生B:「彼女が下校する時もずっと後ろをついていったんだ。」

学生A:「みたいじゃ無くてストーカーだな。」

学生B:「誕生日プレゼントだって渡したんだ。」

学生A:「彼女の誕生日は半年も先だろう?」

学生B:「善は急げって言うじゃないか。」

学生A:「急ぎすぎて何のプレゼントかわかんないじゃないか?何をあげたんだ?」

学生B:「両腕に抱えきれないほどの花束だよ。」

学生A:「ほう、プレゼントとしては悪くないな。」

学生B:「半年前から用意してたから全部枯れてたけど。」

学生A:「だから急ぎすぎだよ!ある日突然大量の枯れた花を押しつけただけじゃないか!」

学生B:「それでもよう、スマホのアプリで友達になって、毎日挨拶する仲だったんだよ。」

学生A:「本当か?よくフレンドになってくれたな。」

学生B:「彼女の手をわずらわせちゃいけないから、隙をみて勝手にスマホをいじってフレンドにしといたんだ。」

学生A:「それはフレンドだが友達ではないな。」

学生B:「俺が『おはよう!』って送ると『あなただれ?!キモイ!』って返してくれるし。」

学生A:「くれるし、じゃねぇよ。」

学生B:「俺が『おやすみ!』って送ると『本当にキモいからやめて!』なんてキャッキャウフフしてたんだよ。」

学生A:「俺の知ってるキャッキャウフフとはかなり違うが、それが何で死んだの殺したのって話になったんだ?」

学生B:「今日、思いきって『死ぬほど好きなんだ!』って送ったんだよ。」

学生A:「向こうにしたら迷惑なだけだろうけどな。」

学生B:「そしたら、『今すぐ死んで』って返事がきたんだ。」

学生A:「ひどい言い草だが、これまでのいきさつを考えるとやむをえんな。」

学生B:「だから、『一緒に死のう!』って送ったんだけど…」

学生A:「だけど?」

学生B:「それっきり何を送っても返事が無いんだよ!きっと、きっと俺の言葉を真に受けて自殺しちゃったんだよ!あああ、どうしよう~」

学生A:「アホか、そんなわけないだろ。気味が悪いからブロックされたんだよ。ほら、向こうからクミコちゃんが歩いてくるじゃないか。」

学生B:「え!本当に?!あれ本当にクミコちゃん?!」

学生A:「ああ、間違いなくクミコちゃんだよ。」

学生B:「なんてこった!じゃあ俺が後をつけてたのは別人だ!」

学生A:「そそっかしいにもほどがある!」

-END-

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