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泡盛の古酒

沖縄の海に出会うと、頭は即、オリオンビールと泡盛に切り替わる。

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与論にはオリオンビールはあれども黒糖焼酎文化圏なので、
あの泡盛独特のパンチを味わうと沖縄に来た感がすごい。

琉球王朝時代は沖縄でも庶民の間で芋焼酎(イムゲー)が作られていたのだが、今は泡盛ばかりだ。

さて、スーパーで600円とかで買える透明瓶に入ったパンチのある泡盛も良いが、
その真髄は古酒(クースー)にあるのではないか。

美味しんぼにも文学者が古酒に取り憑かれる回があった。
あのように、良い古酒を前にすると、本当にうむぅとなる(値段にも)

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では、なんでこんなにまろやかなのだろうか。
バニラのような甘さ。。。これは本当にバニリンそのものが入っているのだ。

米のフェルラ酸を起源として発酵、蒸留でできた4VG(4-ビニルグアヤコール)が非酵素的な酸化によってバニリンに変わっていく。
フェルラ酸から4VGへの変換は発酵中の酸や蒸留時の熱、酵母によるものと長年考えられてきたが、実は黒麹のフェノール酸脱炭酸酵素の寄与が大きいことを琉球大学を中心としたグループが最近解明した。

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-676125.html

であれば、麹造りの日数によって含有量は随分変わってくるはずだ。

4VGそのものは、ケムリというか消毒液というか独特な香りで、清酒などではオフフレーバーとされることが多い。だから、すぐ飲む泡盛には少なく、古酒を目指す泡盛には多く入ることが望ましい。

昔の杜氏はそんな科学的な目がない時代にも、経験的に新酒向けは普通の日数、古酒向けは長く時間をかけて製麹した老麹と作り分けていたそうだ。昔の人の五感には大変感心させられる。

先程、4VGからバニリンへの変換は非酵素的酸化と書いた。

酵素は、タンパク質でできた触媒である。
触媒は特定の反応を引き起こすものと誤解されているが、本来起こりうる反応の活性化エネルギーを下げることで反応速度を上げるというのが本質だ。
その力があまりに大きいので(数百万から数億倍とも)、酵素なしでは反応が起きないようにも思える。

だから古酒は何十年、百年以上でも、適切に保管されることで価値を増していく。

にしても、非酵素的な酸化なんて気の遠いことを。。。
工業的にはありえないような時間をかけて味を育む、それが泡盛の古酒特有の価値を担っているのだ。

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てびちとラフテーとソーキの乗ったそばを食べたいなあ。

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