見出し画像

半導体市況について(2022/11/6)・・・民生用と車載半導体の不足状況

前回はつぶやきとして色々分析前提とかも書いてましたが、時間かかるので率直に半導体市況だけメモしておきます。

半導体市況について

前回9月末の時は予想より少し早くMCUや電源アナログICなどは64週まで改善していました。10月末ではバラツキはありますが50週前後まで改善されました。おそらく民生用の半導体は年末までに48週より短くなってくると予想しており、春節までは更に短くなる可能性があると考えています。
ディスクリートはほぼコロナ前に戻りつつあり、短いところだと24週前後まで戻ってきた感じです。
車載半導体不足については、他の半導体不足と分けて考える必要があります。車載は違う要因で半導体不足解消はゆっくりだと思いますが、理由は下記に記載しました(長文になってしまいましたが)。

私が取り扱っているのはスマホやパソコンなどで使用している仕様が近いこともあり、影響を顕著に受けていますが、それぞれのアプリケーション分野ごとの状況を整理しておきたいと思います。

スマートフォン

スマホは中華系スマホがHUAWEIへの米国への制裁前後から、市場を取るためOPPO、Xiaomiなどの中華系スマホメーカーが実需以上に積極的に購入を進めそこにコロナが始まり更に調達を加速して過剰発注していました。
スマホは約12~14億台程度が世界需要ですが、その時に中華系スマホメーカーだけで同等くらいの規模の発注を掛けていたようです。 
そして昨年末のクリスマス商戦はiphoneの一人勝ちで終わり、高級品向けの半導体が余り、今年はゼロコロナ政策によるロックダウン影響で中国国内の景気悪化も重なりスマホが売れずとダブルパンチを食らった形になり、現在までその在庫がはけていないというのが実態と予想しています。
また、iphone14が円安吸収のための大幅値上げや13との差別化もあまりないなど予約が芳しくないというニュースも出ていますが、例年11月末~12月くらいに調整がはいるのが、10月末~11月には調整にはいるとの噂もあり、スマホ向け半導体は在庫調整となっています。
この在庫調整がおそらく春節までは続くと予想しています。

パソコン

パソコンはコロナ特需で需要の先取りしたこともあり、今年は復活はないかなと思います。こちらはDRAM/NANDなどのスポット価格が上向くのが確認されたら3ヶ月後くらいには需要がある程度復活してくると思います。

サーバー(ストレージ関係)

AWSやマイクロソフト、グーグルなど各社の投資次第ですが、安定した投資がされていますが、アメリカの利上げ影響で各社の決算が悪かったので投資がどうなるか次第かなと思います。
もう一方の需要だった仮想通貨のマイニング需要が壊滅的なので利上げが終わり景気回復が見えてくるまではお休みかなと。

通信基地局

中国のHUAWEI及びノキアがしのぎを削ってますが、両者とも需要が落ちているとの情報。国や通信会社の予算の問題もあると思いますが、インフレ影響が大きいのかと思います。

産業機械

半導体装置メーカー向けの需要が堅調。
一部の半導体メーカーが投資減額など発表していますが、実際のところ半導体装置自体の納入遅延もまだ解消していないようなので当面はずっと堅調と予想しています。ただ、全体の需要からみると数量は少ないので半導体需要に対してはあまり影響も大きくないと考えています。
半導体装置の遅延が早く解消して欲しいところです。

車載向け

車載向けはまだ半導体不足は継続中。 
コロナショックで車載メーカーはジャストインタイムで一斉にキャンセルして、その時はコロナ特需の民生用半導体需要(パソコン、イヤホンなど)の発注が一斉に注文が入り、車載メーカーがその後発注再開する時には既に半導体メーカーのキャパが埋まり車載メーカーの発注は1年後とかの納期回答になった。その後、各国政府などからも車載向け増産の依頼が半導体メーカーへ圧力をかけ、一部の民生用半導体の注文に対して割り込み生産され全体の半導体不足が更に加速したのが半導体不足の顛末かと思っています。

現在の状況ですが、民生用半導体は各社在庫調整に入り落ち着きを取り戻しつつありますが、車載用はまだ不足と車載メーカーは言っており、且つ先日のルネサスの決算の時も車載向けはまだ~ という話がでていました。

これは、自動車メーカーなどの自業自得だと思っています。

自動車メーカーが半導体メーカーの都合を無視して強制していたライン認定がネックで増産が難しいというのがあります。ライン認定とは半導体工程の使用できる装置を固定させ、それ以外で車載用半導体は製造してはいけないということを強制しています。
また、車載向け半導体は基本的にプロセス世代が古いです。これは回路変更やプロセス変更すると、車載メーカーの評価がやり直しになるという理由で新しいプロセスの半導体採用が遅くなっています。半導体メーカーは民生用では新しい技術やプロセスでの開発を行い古い物から移行を即してコスト低減や効率化を図りますが、車載向けがあるために古いプロセスを維持する必要がありますが、当然そのプロセス世代の稼働率は下がっていきます。
新しいプロセスの物は投資され増産出来る体制は作りやすいですが、古いプロセスは稼働率も低く、装置までライン認定で指定されているため当然増産は難しいです。(TSMCはそうなっているのかはわからないですが。。)
なお、車載で指定されている装置は同じ装置が沢山あるうちの数台が指定されており、車載専用ではなく民生用も加工できるので、稼働率優先の運用をしているはずで、車載半導体だけの専用にはしていないことが多いと思います。
今までは車の需要は少しずつ増え、計画的な台数だったので作り溜めなどもできましたが、突然のキャンセルでコロナ特需で民生用も逼迫して、民生用は装置指定もなく効率的に稼働させられるので、車載向けは流せる装置が空くまで半導体の加工が装置待ちで止まったりします。

車載は特別対応している割には、値段も買いたたかれ製造リードタイムを無視した発注リードタイムを半導体各社は飲まされてきていました。
今回のコロナで少なくとも発注リードタイムは民生品と同じ土俵に立たざるおえなくなり、車載メーカーが在庫を抱えるという選択をしたというところかと思います。

半導体メーカーも投資規模が大きくなり合併や買収などで各社が大きくなり半導体メーカーの力が大きくなりました。
今回の景気後退で在庫調整がどこまで長引くかにもよりますが、半導体メーカーがこのまま強くなっていくのか、シリコンサイクルの谷が深くなり元に戻るのかはもう少し先を見る必要があると思います。

また情報を集めたらメモりたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?