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中国巨大技術企業の抑止策(3)(ASPIの報告書)

写真出展:patrick gantzによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/caropat-3683851/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=1957719

本記事は、中国巨大技術企業の抑止策(1)及び(2)(ASPIの報告書)の続編である。前回までの記事は以下のリンクを参照。

https://note.com/karzy_kemaru/n/na9804d0b1954


2.本報告書読後の感想
  本報告書は、「中国の情報サプライチェーン分析」の続編に当たるものである。サプライチェーン分析はデータ収集の生態系に着目したものであり、本報告書は、アメリカを中心とした海外による、中国の巨大技術企業の抑止策を取りまとめたものである。経済制裁措置については散発的に報道で規制されている事実は出てきているものの、このように取りまとめられた資料はなかったことから、この点から現状を把握する上で重要なものと言える。日本としては、過去の制裁の推移を確認しつつ、今後の取るべき政策を考えていくことが重要だろう。
  今回、具体的に学びとなった点は以下の通り。
  ① 制裁が時系列で整理されている点が良かった。単発での報道でしか行動を把握していないと、推移を把握することができないわけであり、このような整理された情報を見ていくことで、何が成功し、何か失敗したかを把握することができるようになる。また、現在進行形の状況、政権交代による連続性と断絶も明確になる。
  ② アメリカだけでなく中国の抑制策がまとめられている点が優れていた。アメリカがどのような制裁をするのかは注目されているが、中国による企業への圧力は、ジャック・マーの雲隠れのような散発的で事件性のあるようなものしか出てこない。この動きは5か年計画などとの関連で着実に進められている政策であり、正確に中国共産党の動きを把握できるのである。

  不満がある点は以下の通り。
  ① 中国の規制が軍事にどのように寄与しているのかが具体的に示されていなかった。経済を中心とした報告書であることは確かであるが、統制している企業はほぼ軍民両用で重要な企業であること、覇権を得るための行動を具体化している現状において、この部分が欠落しているという点はもったいないと感じられる。
  ② 現状把握が中心であり、政策提言がない点が不満だった。前回取り上げた「中国の情報サプライチェーン分析」もそうであるが、今一つ具体性がない。ASPIの記事では外交・安全保障の提言がそれなりになされていることを考えると、本報告書の範囲内という扱いにしていないだけなのだろうか。推測するに、政策提言だけを独立して報告書とするようにも見受けられないことから、ファイブアイズ内の役割分担で政策はアメリカやイギリスが担当するということなのかもしれない。今後具体的な政策提言が出てくることを期待しつつ、アメリカのシンクタンクやイギリスのRUSIなどの記事に着目していきたい。
 
  日本ではこのレベルのまとめがなされている報告書は残念ながらお目にかかれない。日本人は中国に近すぎるがゆえに、感情を排して中国の政策を見ることが困難なようだ。冷静な議論を行ううえで、正確な現状把握は必要不可欠であり、このような報告書で丹念に学んでいくことが今後の外交・安全保障に重要だろう。

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