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イスラエルの軍事AI活用(RUSIの記事)

写真出展:Gerd AltmannによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/geralt-9301/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=4354460

 2024年2月8日に英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は、イスラエルのガザ侵攻における軍事AI活用に関する記事を発表した。内容は、イスラエル防衛省が発表したハブソーラというAIシステムの活用に関して考察するものである。
 軍事情報は機密性が高くその内容が十分に伝わらない傾向にあるが、軍事AIの活用についてはもはや公然の秘密となっており、個別具体の能力以外は情報を隠蔽する必要がなくなる段階になっている。安全保障問題を考える参考として、本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Israel’s Targeting AI: How Capable is It?)
https://www.rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/israels-targeting-ai-how-capable-it

1.RUSIの記事について
 ・2021年にイスラエルは、ガザの軍事組織に対抗するためAI兵器を活用したと発表した。今回のガザ侵攻においても多分にAI兵器を活用していると見られており、その能力や役割について注視していく価値がある。
 ・2019年イスラエル政府は、軍(特に空軍)の兵器として標的部隊を創設したと発表した。過去の紛争において、空軍は最初の数週間で把握している標的を全て攻撃してしまった結果、攻撃目標が定まらなくなることがあり、効率的かつ効果的に標的を把握するため、平時から標的の情報収集を行う専門部隊を創設することとしたのである。
 ・イスラエル防衛省は、収集したデータを迅速かつ適切に処理するため、ハブソーラというAIシステムを活用していると公表している。このシステムは旅団から分隊レベルまでの集団を対象として標的を設定することが可能とされており、防衛省は人間による評価とハブソーラの分析結果が完全に一致することを目標にしている。
 ・イスラエル防衛省の技術力や軍事能力は世界屈指であるが、AIの活用に関しては未知数の所も多い。標的の設定と聞くと容易なもののように思われるが、実際には困難な作業であることから、もしハブソーラが実戦配備されているとすると、突出したシステムということになる。AIを活用するには多様な情報源から整然と整理されたデータを取り込み、既存のデータとの整合を図りつつ、最小限の被害で済むように標的を設定するという膨大かつ困難な作業が必要になることを考えると、全面的な実戦配備の可能性は低いと考えるのが妥当だろう。
 ・またイスラエル防衛省の発表している情報だけでは、ハブソーラの個別具体の能力は未知数である。軍が標的を設定する際には、人間による厳重な相互チェック体制が好まれる傾向が高いことから、AIによる効率化の効果が半減していると考えられる。より現実的なシナリオは、大量のデータを一貫して処理するためにAI援用をしているというものだろう。AIによるデータの高速処理は新しいものではなく、その能力に応じて様々な活用がされてきたが、動的な標的設定にはまだ活用される段階にはないだろう。
 ・ただ情報がないからと言って、イスラエル防衛省のハブソーラが能力を発揮できていないという証拠にはならない。イスラエルはかなりの程度軍需品などの標的の攻撃に成功しているにも関わらず、民家などへの被害も相当程度に発生していることを考慮すると、この被害は意図的に発生させたものと推測することができる。標的を攻撃する際、防衛省付の顧問弁護士のサインが必要としていることから、少なくとも防衛省の高官はガザ地区の現状を把握したうえで承認しているはずである。 

2.本記事についての感想
 ガザ侵攻は無辜の住民が多数巻き込まれるという悲劇に見舞われており、世界のニュースでも連日大きく取り上げられていることから、国際社会が大きな関心を持っていることがわかる。
この侵攻においてAI兵器が活用され、高い精度で攻撃が行われるとしても、無関係の住民が犠牲になることには変わりなく、今回の侵攻を正当化する議論はするべきではないだろう。そもそもAI兵器を有効活用できていれば人質事件を未然に防ぐことができたはずであり、事件防止にこそ注力するべきだと考えるのが普通だろう。ただ、私は今回のイスラエルによる侵攻に批判的ではあるものの、ハマスを擁護するつもりは全くないという点について強調しておきたい。
 また日本でもAIの活用が活発に議論されるべきだが、こういったニュースをきっかけとして議論を深める動きは全くと言っていいほど見られない。日本の言論空間の貧しさを物語る事象と言えるのであり、こういったニュースを積極的に発信し、国民の意識改革をしなければ、来る台湾有事への対応などおぼつかないだろう。
 
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