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起業への思い

2022年5月に開業届けを提出し「Seat Table」という屋号を付けて起業しました。そんなわけで、すっかり眠っていた😂こちらのnoteを再開するきっかけができました。今回は、私がなぜ起業しようと思ったか、起業してどうしたいのか、5年後の夢、そんなようなことを書いていこうと思います。

起業しようと思ったわけ

私はおよそ16年間、病院や施設で常勤の言語聴覚士として働いていました。言語聴覚士というと、皆さんはどのような仕事内容を想像されるでしょうか。患者さんと1対1で机に向かって言語訓練をしているイメージでしょうか?それとも、お昼時に患者さんの食事を見ているイメージでしょうか?
働く地域や場所によって、言語聴覚士が対象とする患者さん像は様々で、それに伴い業務内容も多岐に渡ります。

私の住む地域は高齢者が多く、何度か転職はしましたが、どこでも一番のニーズは摂食嚥下障害への対応でした。もちろん、加齢が原因というわけだけではなく脳血管疾患の急性期やALSなどの神経難病の患者さんへの対応も行ってきました。
食べることへの支援は、食べられなかった患者さんが再び食べられるようになるとやりがいを感じる一方、リハビリで機能を取り戻すことができず無力を感じることも多々ありました。やりがいと無力さの狭間で時を過ごしてきましたが、月日の経過とともに自分自身の体力にも限界を感じるようになってきました。
病院での摂食嚥下訓練は、とにかく体を使います。朝からずっと病棟を回ってのベッドサイドでの立ち仕事が多く、筋力の乏しい私の体には徐々に負担となっていきました。
また、機能訓練の実施に当たってはどうしても私の状態では難しいこともありました。これがしてあげれたらもっと楽になるかもしれないのに・・・と思うことも多く、自分が不甲斐なく悔しい思いでした。

体も疲れて、こんな思いして働き続けて私は人生幸せと言えるのか?もっと自分らしい働き方ができるんじゃないか。いつしか、こんなことを考えるようになりました。私らしいやり方で、もっと人の役に立ちたい。人生もっと楽しみたい。これが起業のきっかけでした。


夫と一緒に

そして、私にはある夢がありました。
それは、夫と一緒に食堂をすること。夫は、家業を継いで食堂を経営しています。私は、夫が営むこの食堂が大好きです。料理の味も好きだし、何より懐かしくて温かくて、家族の賑やかな笑い声が似合う地域の人たちに長く愛されている食堂だからです。

私は、よく患者さんから「お寿司が食べたい」という言葉を聞いていました。うちの食堂はお寿司が美味しくて、特に巻き寿司は御使い物にされるお客様も多く伝統の味です。
嚥下障害があっても、うちの巻き寿司を食べてもらいたい。嚥下障害があっても食べやすいメニューが出せる食堂になったら、もっとたくさんの人を幸せにできるかもしれない。何年も前から夫にも話をし、こんなことを思い描いていました。
病院勤務を続けることの限界とデリソフタとの出会いもあり、いよいよのタイミングでやわらかメニューが出せる店として発表しました。

やわらかメニューが出せる店「かさい食堂」はこちら
https://www.facebook.com/kasaisyokudou300

これまで、一番身近な夫の役に立てない自分も悔しかったです。本当なら、食堂に嫁いできた者として夫の右腕になって店を一緒に盛り上げれたらどんなにいいかと思っていましたが、車椅子の私には十分なことができません。
やわらかメニューを提供するということ。これは、言語聴覚士として、障害当事者として、そして食堂の妻として。いろんな私の思いが絡み合って実現したことなのです。

実現したいこと

食堂でのやわらかメニューをきっかけに、「自分らしい働き方」ということがどんなことなのか、少しづつ見えてきました。
私は言語聴覚士であると同時に、シャルコー・マリー・トウス病という進行性の神経難病と共に生きてきた障害当事者でもある。
勤務時代は、言語聴覚士の仕事を続けていく上でこの難病は弱みに感じることが多かったけど、これを強みにすることこそ自分らしい働き方と言えるのではないかと思い始めました。
自分も幸せになって、人も幸せに。これが私が生涯かけて実現したいこと。そう思います。

屋号に込めた願い

屋号「Seat Table」。
Seat=座席 ですが、S=Speech(話す)、eat(食べる)とも掛けています。
Table=食卓
障害があってもなくても、歳をとっても、関係なくみんなで食卓が囲めるインクルーシブな地域社会の実現を願って名付けました。
イメージカラーはイエロー。キャッチコピー「みんなで囲む笑顔の食卓」。

こちらはSeat Tableのロゴです。

インクルーシブという言葉はしばしば耳にされるようになってきましたが、まだまだ聞き慣れないという方も多いのではないでしょうか。
詳細はまたの機会に譲るとして、簡単に日本語に訳すと「包括的な」という意味になります。
障害の有無だけに関わらず、国籍や宗教などこの社会には多様な人々が一緒に暮らしています。互いが違いを受け入れ認め合う、これがインクルーシブ社会です。
インクルーシブ社会の実現には、物理的バリアの解消だけでは困難で、心のバリアをも解消していく必要があります。
笑顔の食卓の実現に向け、私はこれを強く伝えていきたいと思っています。

5年後の夢

色々な街にSeat Table認定店のような飲食店が増え、今よりもっと多くの人が外出をし食を楽しむことができる地域社会になればと思います。
Seat Table認定だから安心だと、認知されるくらいに成長したいと思います。
もう一つ、笑顔の食卓本が出せたら。※レシピ本ではありません。

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