笠井幸子

言語聴覚士をしています。シャルコ-マリ-トゥス病という神経難病を持つ患者でもあります。…

笠井幸子

言語聴覚士をしています。シャルコ-マリ-トゥス病という神経難病を持つ患者でもあります。言語聴覚士として、患者として、日々の思いや考えを綴っています。

最近の記事

新しい年に寄せて

2023年がスタートしました。新しい年になってすでに1週間経ちました。 1月はいく、2月はにげる、3月はさる、と言われるように、このままいくとあっという間に春になり月日が流れてしまいそうです。 という訳で、忘れないうちに昨年の振り返りと今年の決意表明をしておこうと思います。 2022年の私 昨年は、これまでとは違う働き方にチャレンジした年でした。 約16年間フルタイムで言語聴覚士として働いてきましたが、昨年からはパートタイムとなりSeat Tableという屋号で個人事業を

    • すべては幸せのために

      私は、5月にSeat Tableという屋号を付けて起業しました。 「みんなで囲む笑顔の食卓」をキャッチコピーに、障害があってもなくても関係なくみんなで食卓を囲める社会にしたい。みんなで食卓が囲める社会はきっと誰もが幸せになれる。 こんな思いから起業を決意したわけですが、それは言語聴覚士としての経験と神経難病を持ちながら生きてきた自分自身の様々な体験、どちらもがあっての行動だと思っています。 どちらの視点も持ち合わせているからこそ、笑顔で食卓を囲む為には実に色々な切り口から整

      • 心を癒す飲み物

        心がモヤモヤした時、悲しい時、辛い時、泣きたい時。一杯の飲み物が心を癒してくれた経験はありませんか? 飲み物には、食べ物ほど高い栄養価値はないかもしれませんが、ほんの少しの一杯が心を満たし穏やかに、豊かにしてくれる効果があるような気がします。 一杯の心の栄養剤。誰かにそっと差し出せる自分でありたいものです。 食べることと飲むこと 食べることと飲むことは、「飲食」といってよくひとくくりに扱われますが、両者は少し異なる立場にあるように思います。 生理解剖学的に、口腔から咽頭

        • 小田巻蒸し

          きっと誰にでも思い出の食べ物ってあるのだろうと思うのですが、私にとってのそれは「小田巻蒸し」。子供の頃、何度も母が作ってくれた食べ物です。 その味は優しく温かく。私はいっぱい母に愛されていたんだなあと感じるのです。そして、この時があったからこそ、また今の私もいるんだろうなあと思うわけです。 食を振り返ることは人生を振り返ること。そんな気がしています。だから、食を大切にしたいのです。 子供の頃過ごした場所私は、幼少期から体に障害がありました。いつまでも一人で歩けず運動発達

        新しい年に寄せて

          苦い思い出

          今から10年以上前になりますが、私はかつてディサービスに勤めていました。そこは比較的介護度の低い、元気な方が通われている施設でした。 Tさんもまた、その元気なうちのお一人でした。 しかし、ある日脳梗塞を発症し入院。退院し再びディサービスに来られた時は、口から食べることができなくなっておられました。 代わりに胃ろうを造設され、そこから栄養を摂っておられる状態でした。 あの頃の私は、アイスクリームを数口食べていただくのを見守るしかできませんでした。 今の私なら、もう少し違うことが

          苦い思い出

          起業への思い

          2022年5月に開業届けを提出し「Seat Table」という屋号を付けて起業しました。そんなわけで、すっかり眠っていた😂こちらのnoteを再開するきっかけができました。今回は、私がなぜ起業しようと思ったか、起業してどうしたいのか、5年後の夢、そんなようなことを書いていこうと思います。 起業しようと思ったわけ 私はおよそ16年間、病院や施設で常勤の言語聴覚士として働いていました。言語聴覚士というと、皆さんはどのような仕事内容を想像されるでしょうか。患者さんと1対1で机に向

          起業への思い

          関わり続けること

           かなり久しぶりに書きます(-_-;)  今回つけたタイトル「関わり続けること」、これは私が臨床現場において最も大切にしていることです。  でも、関わり続けることって時に難しく感じることがあります。特に人生の最終段階においては。私は役に立てているのか、もうすぐ亡くなるかもしれないこの方に対し何ができるのか。とてもとても悩みます。 悩みながら、でも最期まで関わり続けることにはどんな意味があるのでしょうか。  言語聴覚士は食べるリハビリに携わる仕事をしています。食べること

          関わり続けること

          口腔ケアについて考える

          「口腔ケア」という言葉は、医療や介護現場ではすっかり耳慣れていますよね。でも、口腔ケアが持つ意味について広く深く知っている人、考えて実践している人って意外と少ないような気がしています。 虫歯にならないように歯磨きしたり、口の中をお掃除することでしょ? ……はい、そのとおり。間違ってはいません。でも、もっともっと奥深いんですよね、口腔ケアって。 口腔ケアは単なるお口のお掃除ではありません! お口の中には、膨大な数の細菌が住み着いていると言われています。普通に毎日歯を磨いて

          口腔ケアについて考える

          自動車運転について

           車に乗れるか乗れないかで、私自身生活が随分変わってくることを経験してきました。交通の便の良い都会なら、車に乗れなくても生活はできます。むしろ、ない方がいい場合もあるくらい。でも、1時間に1本しかバスが通らないような田舎では、車はもはや生活の必需品です。  病気や障害の為に元々車の運転が可能だった人が難しくなること、これは加齢の為免許証を返納するのとはわけが違い深刻な問題だといえます。 私と自動車とのお付き合い 私が車の免許を取ったのは29歳の時。随分遅いデビューでした。

          自動車運転について

          言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーション

           コミュニケーションは、言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションの両者で成り立っています。  言語的コミュニケーションとは、話したり書いたりといった言葉を使ったやりとりをいいます。一方、非言語的コミュニケーションとはその逆で、言葉を用いないやりとりということになります。  では、言葉を用いないで何を用いるかといえば、例えば表情や顔色、声のトーン、話す速度、ジェスチャー、視線などがこれに当たります。  コミュニケーションを図る上で、特に喜怒哀楽のような感情の伝

          言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーション

          その人らしさのリハビリテーション

          リハビリテーションにおいて、その人らしさを知ることは最も重要なことではないでしょうか。でもそれを知ることは難しいことだとも思います。ある程度の時間もいるでしょう。急性期の短い関わりの中でも、その人らしいと思えることを一つでも見つけて次のステージへ繋げていきたいものです。 その人らしさとは リハビリテーションの中では、よく 「その人らしく生活することを支 援する」とか、「その人らしさを尊重して」などということが言われます。でも、何がその人らしいのか、理解することはとても難しい

          その人らしさのリハビリテーション

          顔面神経麻痺を持って生きる

          顔面神経麻痺って非常につらい状態だと思います。見た目がやっぱり気になるし、特に写真がきらいという人は多い気がします。 私もそう。写真は苦手だし、それだけじゃなくて生活上のいろんな悩みがあるんですよね。 患者さんの中にも、顔面神経麻痺を抱えた方がたくさんおられます。顔面神経麻痺は、完治しないことも多いです。つらいけど、たとえ障害が治らなくても生き続けて欲しいと願います。 顔面神経麻痺って 顔面の筋肉を動かす神経が何らかの原因で障害を受けた時、顔が思うように動かせなくなる状

          顔面神経麻痺を持って生きる

          「歌唱」リハビリと想い出

           言語聴覚士はリハビリプログラムに「歌唱」を用いることがあります。その目的は様々かと思うのですが、以前私は人生の最終段階と言われた方とも「歌唱」をする時間を共に過ごしました。その時間を想い、振り返ります。 言語聴覚士が用いる「歌唱」の目的 リハビリプログラムの一つに「歌唱」を用いる言語聴覚士は多いのではないでしょうか?私も良く用います。今日も患者さんと一緒に歌いました。  呼吸や発声機能が低下した方の機能改善に、失語症の方の発語の促進にというように、何のために「歌唱」を用

          「歌唱」リハビリと想い出

          病気を診ずして病人を診よ

          医療現場では、しばしば人を診ずして病気ばかりに焦点が当てられることが多いように思う。リハビリテーションにおいても同様なことが起こりやすい。目の前の患者さんは、病人である前に様々な役割を持った一人の人間です。そのことを決して忘れないようにしたいものです。 病気を診るか、人を診るか 『病気を診ずして病人を診よ』。この言葉は、東京慈恵医科大学の建学者 高木兼寛(1849〜1920)の教えです。胃や心臓などの「臓器」のみを診るのではなく、その人自身を診て、その人が抱える苦悩や困難さ

          病気を診ずして病人を診よ

          言語聴覚士の私が大切にしていること

          1、言語聴覚士とは 話す・聞く・食べるのスペシャリストで、1997年に国家資格となりました。脳卒中後の失語症など、ことばによるコミュニケーションの障害、発音や声の障害、聴覚障害、ことばの発達の遅れ、食べること・飲み込むことの障害をお持ちの方々に対応しています。これらの障害は子供から高齢者まで多岐に表れる為、言語聴覚士が関わる年齢層は実に幅が広いんですね。障害に対する評価・訓練だけでなく、たとえ障害があっても自分らしい生活が送れるよう支援していくことが大切な仕事です。  一般

          言語聴覚士の私が大切にしていること