柏木公宰のエッセイ 第二十一回「映画の話~嗤う分身~」
皆さんこんにちは、柏木です。
今回も前回同様、映画の話を書かせていただきます。
今日は2014年にイギリスで公開された映画「嗤う分身」についてお話させていただきます。
あらすじをざっくり説明させていただきます。
容量が悪い会社員のサイモン・ジェームズ。
影が薄く友人もおらず、職場でも上手くやれない内気な男。
唯一の楽しみは、自宅アパートの向かいに住む想いをよせる女性「ハナ」の私生活を望遠鏡でのぞき見ることだった・・。
ある日、そんな彼の前になんと自分と見た目がそっくりの新入社員ジェームズ・サイモンが入社してくる。
ジェームズ・サイモンはサイモン・ジェームズと違って、容量が良く社交的で明るく、職場では人気者である。
そんなジェームズに苛立ちを感じ始めたサイモン。しかしジェームズはサイモンの苦悩を理解しており、彼にハナを誘惑する方法を伝授します。
・・・とこんな感じです。
ここから少しづつカオスな展開になっていくのですが、それは実際見ていただければと。ちなみにこの映画、コメディでもなんでもないスリラー映画です。
なんだったら全体的に暗く、ホラー映画のような雰囲気もあります。
原作は「カラマーゾフの兄弟」でも有名なフョードル・ドストエフスキーの「分身」です。
いわゆる「ドッペルゲンガー」ものですが、そんなドッペルゲンガー的存在のジェームズが平然と自分に話しかけ何食わぬ顔で自分の職場で自分と一緒に働いてる。
それは自分にしか見えない存在ではなく実在している人物。
さらに恐ろしいのは職場の同僚達はみんなサイモンとジェームズを「全然見た目は似てない」と言い切る。
どういうこと?
なんとも奇妙でカオスな空間(笑)
もし自分が同じ立場だったら耐えられないな~。
さて僕の感想ですが、この映画はとても暗く実に奇妙な作品と感じております。
人の弱さ、滑稽さ、そして邪悪な面がほどよくでてるダークな雰囲気。
登場人物もハナ以外は全員卑屈で性格に難あり、それでちょっと病んでる。
特に主人公であるサイモンが群を抜いて暗い!
いや、暗いというか・・見てるこっちが不安になるぐらいやつれてる。
俳優さん誰だろう?と思ったらなんとジェシー・アイゼンバーグ!
「ソーシャル・ネットワーク」の人か!!と驚いております。
こんな不気味だったっけ?と思う一方、明るく社交的なジェームズも演じて分けているのだからすごい。
この映画の時代背景ですが・・
一回見た限りでは、場所も年代もよくわからず主人公が何の仕事をしてるのかもよくわからないんです(もしかしたら劇中でちゃんと説明されてたかも)。
仕事に使うパソコンみたいな機械もよくわからないデザインをしていますし、書類のコピーをとるためのコピー機もでてくるのですが、僕が知ってるコピー機と見た目が全然違います。
でもそんなとらえどころのない機械のデザインや進んでるのか退廃しているのかよくわからない時代がなんとも不気味で不安を煽る世界観を作っております。
あと音楽。
なぜか各シーンで暗い世界観とは全く逆の日本の歌謡曲が流れるんです(歌手、曲名はわからないです)。
しかし、この歌謡曲が主人公の心情をとても分かりやすく表現していて僕は感情移入しやすくて結構好きです。
このように、とても暗く陰湿な世界観と奇妙なストーリー、それとちょっとしたシュールな演出が魅力的でひきこまれます。
「嗤う分身」。ぜひ一度観てみてください。
追記:「嗤う(わらう)」という漢字がわからなかった!(嗤)
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