ある老夫婦

銀行の前を通った時、パーパーパーと車のクラクションが鳴った。怒ってる鳴らし方だ。どんな運転手かと見ると、白髪の老人だった。

老人の目の先には、同じ歳くらいの女性が紙袋を持って歩いていた。迎えにきたのだろうか。それはやさしいことだけど、あの鳴らし方は「おい!」と言っているかのような鳴らし方だ。

女性の方は全く気付かず、スーッと何事もないかのように通りすぎている。

旦那様がお呼びですよ。と言ってあげたいような気もするが、先を急いだので、そのまま通り過ぎた。第一、窓をあけて呼びかければ、すむことだ。

でも、やはり気になるので通り過ぎてから、後ろを振り向くと、白髪の老人は車から降りて、女性の方へ向かっていた。初めからそうれば良いのだ。


ところが男性は、くるりと踵を返して、車の方へ戻った。そして不思議そうな顔で女性を見ていた。

人違いだったようだ。自分の妻を間違える?何十年も連れ添って?私は奥さんになったつもりで、驚いた。「おい!」とか言ってる場合じゃないよ。

いや、すべて憶測にすぎないのだけど・・・

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