【居場所のつくりかた】
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先日、合鍵をつくりました。別にそのためだけに出歩いわけではありません。
たまたま歩いた場所がいつもの曲がり角にあったホームセンターだったこと、以前から合鍵をつくらなきゃいけないという思いもあって寄っただけなのです。
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お店に入ると恰幅の良い色黒の男性がいました。
合鍵を作るためにお店に寄ったことを伝えるとすぐに承知してくださり、私から合鍵の元となる鍵がでるのを待っていらっしゃいました。
3
私は財布に入れといた合鍵の元を探しました。でもいっこうに見つかりません。ちゃんと持ってきたはずなんだけどなぁと思いながら出直すしかないと考え「すみません。忘れて来ちゃったみたいです。」と話しました。
すると店主は「忘れちゃた?」と笑顔で言われました。
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その直後、合鍵の元を財布ではなくクルマの鍵と一緒にしていたことを思い出した私は合鍵の元をクルマの鍵から離してから店主に渡しました。
店主は鍵を一瞥すると「合鍵だね」とすぐに合鍵の元となる鍵の素性を明らかにし、そのまま新しい合鍵を作り始めました。
5
私はお店の中を見させてもらいますと断ってから店内を見学しはじめました。商品にはところどころホコリがかぶっていましたが、私はこういうお店は嫌いではありません。
むしろ母の生まれ育った町の駄菓子屋にも似た雰囲気を持っていたので何か落ち着いたものを感じながら商品を眺めていました。
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すると、ものの10分もかからないうちに新しい合鍵が出来たらしく、店主はレジの前に立って私が店奥からもどってくるのを待っていました。
私が店奥から戻ってくると先ほど渡した合鍵の元である鍵と新しい合鍵を私にみせながら「ここ誰か削ったような跡があるから、もし開かなければすぐに教えて」と言われました。
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私は短く「はい」と答え料金を払うまでの間、私はついこのまえ茨城の潮来という町から引越してきたこと、このあたりの人は買い物はどこにいかれるのか、真冬の雪の状態などを矢継ぎ早に質問していました。
今思い返せば、おそらく長く人と話していなかったので、人恋しくなっていたせいもあるのかも知れません。
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でも私が1番に思ったことは、この町に早く溶け込みたいと言うことでした。再びゼロから自分の居場所を作るために、相手から疎まれようが、多少自分に無理をしてでも冗舌になっていたのだと思います。
私自身この行動には驚きました。
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やはりあの場所は私にとってはどんなに心が弱っていても心の拠り所の大切なサンクチュアリだったのだと気づかされたのです。
だからこそ私はこの町に早く溶け込むように、自分をさらけ出し生活をしていこうと心に思ったのです。
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この先、私はこの町で死ぬまで生活していくのか、それとも再び別の場所でゼロから居場所を作るのか、私自身はまだわかりません。
ただ、いつだって自分の居場所はこうやって作ってきました。私にはこの方法しか思いつかないのです。
...っていうお話。
撮影場所:小樽市手宮
Photo by かしるい
20230605
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