抗生剤を処方されたときにこれだけは知っておきたいこと

“とりあえず○○(他のお薬)と抗生剤出しておきますね”

こんな事を獣医さんに言われたときに飼い主様が知っておくことでワンちゃんネコちゃんのためになる事をここでは書いていきますね!

、、、本当にこの子のこの病気に抗生剤って必要?その疑問が今回知っておいていただきたい事です。

まず我々人間で考えてみましょう。
風邪を引いて病院に行ったときに初めから抗生剤を処方されることなんてありませんし、お腹を壊して抗生剤で治すなんてこともほとんどの場合ありませんよね。
それは何故か、、、簡単です。多くの場合抗生剤なんて使わなくても治るからです。
そもそも抗生剤は細菌による感染症を治す薬です。そして我々が持つイメージよりも実際に細菌感染を起こしていることってそこまで多くないんです。
“癌かわからないけどとりあえず抗がん剤使ってみましょうか”って医者に言われたら、この医者頭大丈夫か?って思いますよね。
“細菌感染症かわからないけどとりあえず抗生剤使ってみましょうか”も副作用の強さの違いはあれどやっていることは同じです。

実際に1番多い動物の例で考えてみましょう。
“昨日から下痢をしています”というワンちゃんが来院されたとします。
その場合本当にざっくりにはなりますが、我々が可能性のある原因として考えなければならないのは以下のような疾患になります。

☆感染症(細菌、ウイルス、寄生虫)
☆食事
☆異物•薬物
☆ストレス
☆膵炎
☆腫瘍性疾患
☆ホルモン疾患

全てではありませんがまずはこんなところです。
この中で実際に抗生剤が必要になるのは感染症で、なおかつ細菌感染であった場合のみです。
つまり細菌感染症による下痢以外の場合は基本的に不必要な抗生剤を与えていると言うことになります。
これっておかしいですよね?

では何故動物病院ではすぐに抗生剤が処方される事が多いのでしょうか。
これには僕個人の考えも含みますが、我々獣医師は一度の処方でワンちゃんネコちゃんの症状が良くならなかった場合にすぐに他の病院さんに転院されてしまうことも珍しくありません。そもそも自分達人間で考えると、例えば下痢なんて数日以内に治るものなのに薬飲んですぐに良くならないなんてあの獣医は間違った薬を処方しているんじゃないか?と思われてしまいます。

獣医師自身も本来であれば○○(他の薬)のみの処方を行い、良くならなければ次の検査を行なってから必要とわかった場合に抗生剤を処方すべきなのは理解していても、もし細菌感染症だった場合もカバーできるようにとりあえず処方してしまう事もあるのではないでしょうか。違っても命に関わる様な副作用が出ることなんて滅多にないし、、、と軽い気持ちで処方してしまっているかもしれません。

確かに飼い主様にとっても、もし細菌感染症だった場合に治療が長引いてしまうのであれば初めから抗生剤を使ってしまいたいという気持ちもわかります。
ですが、不必要な抗生剤の投与は下記のようにワンちゃんネコちゃんへのデメリットもあるのです。

①正常な腸内細菌も殺してしまう
②一部の抗生剤では腎臓への毒性など、確実に副作用も存在する。
③薬剤耐性菌の出現

①ではこれにより下痢や嘔吐などを併発してしまうかもしれませんし、②ではもっと重篤な副作用が出現してしまうかもしれません。
そして③では今後本当に細菌感染症になってしまった時に抗生剤が効かなくなってしまうかもしれません。

僕個人としては少なくとも①〜③のような可能性があるなら”とりあえず”で抗生剤を処方されたくないなって思ってしまいますがどうでしょうか?

もしこの記事を読んで抗生剤が必要な病気はそんなに多くないこと、そして抗生剤にもデメリットもあるんだと思われた方がいらっしゃれば、”とりあえず抗生剤出しておきます”と言われたら、、、、

現時点で感染の根拠がなく、もし感染症であった場合にすぐに命に関わるような状況でなければ、できれば初めから抗生剤は使わずに治療したい!と伝えてみましょう!

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